現在がん治療に取り組まれている方や、そのご家族が「水素吸入」という選択肢に関心を持たれるケースが増えています。
「標準治療の副作用を少しでも和らげたい」
「生活の質(QOL)を高く保ちたい」
こうした切実な思いがあるからこそ、その効果や安全性については、正確な情報を知りたいとお考えでしょう。
この記事では、最新の研究論文(エビデンス)に基づき、「がん治療における水素吸入」に期待される役割と、導入前に必ず知っておくべき重要な注意点を解説します。水素吸入の導入を検討される際に必要な情報をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
水素吸入はがんを「治す」ものではなく、標準治療を補助する療法として注目される。抗がん剤や放射線治療の副作用軽減や免疫力維持の効果が報告され、安全性も高い。導入時は必ず主治医に相談し、信頼できる機器や施設を選ぶことが重要となる。
《この記事の監修者》

江戸川病院特任副院長 兼 腫瘍血液内科部長/東京がん免疫治療センター
長。2001年熊本大学医学部卒。日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会の血液専門医・指導医、日本がん治療認定医機構のがん治療認定医など、がん治療のスペシャリストとして資格を多数保有。
水素吸入とは?注目される理由

水素吸入とは、水素ガスを鼻や口から直接吸い込むことで、体内に水素を取り入れる方法です。
水素は、宇宙で最も小さな分子であり、体の隅々まで届きやすいという特徴があります。また、体内で過剰に発生し、細胞を傷つける「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」を選択的に中和する働き(抗酸化作用)が注目されています。
「水素水」との最も大きな違いは、体内に取り込める水素の「量」です。水素吸入は、高濃度の水素ガスを継続的に吸入するため、水素水を飲むよりも遥かに多くの水素を短時間で摂取できるとされています。現在、がん治療に関連する臨床研究の多くは、この「水素吸入」を用いて行われています。
がん治療における水素吸入の「4つの役割」

現段階の研究において、水素吸入が「がんを直接治す」と証明されたわけではありません。
しかし、がん治療の過程で患者さんをサポートする「補完的な役割」として、主に以下の4つの点が期待を集め、研究が進められています。
- 抗がん剤の副作用を軽減する
- 放射線治療の副作用を軽減する
- がんの発生・進行を抑制する
- 免疫細胞(T細胞)を活性化させる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
役割①:抗がん剤の副作用を軽減する
抗がん剤はがん細胞を攻撃する強力な薬ですが、同時に正常な細胞も傷つけてしまうため、吐き気、倦怠感、腎機能障害といった辛い副作用が出ることがあります。
水素吸入は、これらの副作用を和らげる可能性が人を対象とした臨床研究でも示されています。
例えば、抗がん剤治療中の82名の進行がん患者(ステージ3〜4)を対象にした研究では、水素吸入を始めて2週間後から疲労や不眠、食欲不振などが改善。4週間後には、痛みや身体機能、便秘・下痢など多くの副作用で改善が見られたことが明らかになっています。1)
また、別の肺がん患者58名を対象とした研究においても、水素吸入を抗がん剤治療と併用することで、貧血・血小板減少症や食欲不振などの副作用の発生率が低下したと報告されています。2)
水素吸入と抗がん剤の副作用(倦怠感・食欲不振など)の関係や、他の補助療法との違いなどについては、「水素吸入が抗がん剤の副作用を軽減?補助療法として期待される理由とは」の記事で解説しています。
役割②:放射線治療の副作用を軽減する
放射線治療も、がん細胞を死滅させる一方で、周囲の正常な組織に炎症(皮膚炎、粘膜炎、肺炎など)を引き起こすことがあります。
水素吸入は、放射線によって発生する「悪玉活性酸素」を選択的に除去することで、正常な細胞へのダメージを減らすのではないかと期待されています。
2025年に発表された研究では、子宮頸がんの放射線化学療法(CCRT)を受ける患者58名を対象とした試験が行われました。その結果、「水素吸入を併用したグループ」は「併用しなかったグループ」と比べて、腸炎などの副作用が明らかに低減。特に「症状が軽度(グレード0〜1)」だった患者の割合は、水素吸入ありで75%、一方水素吸入なしでは30%と大きな差が見られました(P=0.023)。3)同研究では、参加者が少ない、「生存期間」などでの違いは見られなかったなどの課題はあるものの、水素吸入によって副作用が軽減される可能性が示唆されたと言えるでしょう。
放射線治療による様々な副作用(皮膚炎、口腔粘膜炎、倦怠感など)に対する水素吸入の可能性については、「水素吸入が放射線治療の副作用を軽減?その可能性と安全性を徹底解説」で詳しくまとめています。
役割③:がんの発生・進行を抑制する
水素の持つ「抗酸化作用」や「抗炎症作用」が、がん細胞の増殖や転移を抑える可能性にも期待が寄せられています。
これは、がんの発生や進行の背景に、悪玉活性酸素による細胞の「サビ(酸化ストレス)」や、慢性的な「炎症」が深く関わっていると考えられているためです。つまり水素がこれらを抑えることで、がんが育ちにくい体内環境をサポートするのではないか、というのです。
例えば、2019年の研究では、ステージ3〜4の進行がん患者82名に1日3時間の水素吸入を実施してもらったところ、21〜80日の範囲で完全奏効および部分奏効といった腫瘍の縮小反応が見られたと報告されています。特に、ステージ3の患者では、癌が進行しなかったまたは縮小した割合が84%と非常に良好な結果が出ています。1)
各がん種ごとに報告されている水素吸入の最新情報は、下記の表からご覧いただけます。気になるがん種をクリックすると、詳細な解説記事にアクセスできますので、ぜひご活用ください。
| 分類 | がん種 |
|---|---|
| 日本人の罹患数トップ5 | 1. 大腸がん、2. 肺がん、3. 胃がん、4. 乳がん、5. 前立腺がん |
| 消化器 | 食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、肝臓がん、胆のうがん、胆管がん、すい臓がん、唾液腺がん |
| 呼吸器 | 肺がん、咽頭がん、喉頭がん |
| 泌尿器 | 前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん |
| 婦人科 | 子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん |
| 神経系・脳 | 脳腫瘍 |
| 皮膚 | 皮膚がん |
| 内分泌 | 甲状腺がん |
| 血液・リンパ | 血液がん、悪性リンパ腫 |
| その他・全身 | 肉腫、舌がん |
役割④:免疫細胞(T細胞)を活性化させる
これは、近年非常に注目されている役割です。私たちの体内では「免疫細胞(T細胞など)」が、がん細胞を見つけて攻撃しています。しかし、がんはこの免疫細胞を「疲れさせ」、攻撃から逃れる仕組み(免疫チェックポイント機構)を持っています。
近年の研究で、水素ガスが、この「疲れ果てた」免疫細胞を再び活性化させ、「がんが悪化するまでの期間」や「生存期間」を伸ばす可能性が示唆されています。4)
さらに、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど、免疫のブレーキを外す薬)と水素吸入を併用した肺がん患者さんは、阻害薬単独の患者さんよりも生存期間が有意に長かったという臨床研究の報告もあり、5)標準治療の効果を高める「補助療法」としての可能性に大きな期待が寄せられています。

近年、新薬の開発が進み、多くの抗がん剤が使われるようになり、治療成績が向上しています。しかし、どの抗がん剤にも副作用はあります。
その副作用を軽減できる可能性のある水素吸入は、治療を支える有力な選択肢の一つだと考えています。エビデンスの蓄積や吸入デバイスの導入といった課題はありますが、標準治療と併用することで、生活の質(QOL)向上に大きく寄与する可能性を秘めていると思っています。
がん治療中の水素吸入の「副作用と安全性」

がん治療において様々な役割が期待される水素吸入ですが、安全性も気になるところではないでしょうか。
ここでは、水素吸入の副作用や安全性について解説します。
副作用のリスクについて
現時点の多くの研究において、水素吸入による重篤な副作用は報告されていません。水素は体内で過剰になっても蓄積せず、呼吸によって体外に排出されるため、安全性が高いと考えられています。
ただし、ごく稀に、吸入中に一時的な吐き気や気分不良、眠気を感じたり、頻尿になったりする方がいるという報告はあります。これらは軽微かつ一時的なもので、自然に改善しますが、不快感が続く場合は使用を中止し、医師へ相談するようにしましょう。
爆発リスクについて
「水素」と聞くと、爆発を心配される方もいらっしゃいますが、適切に管理された水素吸入器で吸入中に爆発が起こるリスクは低いとされます。ただし、使用方法・環境によって、水素濃度が高まり、爆発の危険性がある点は十分に理解しておきましょう。
安全に水素吸入を行うために、防爆機能(水素濃度による自動停止など)を搭載した機器を選び、使用中の換気の徹底、および静電気などの点火源を排除することが大切です。
水素爆発する条件や爆発させない具体的な対策については、以下の記事もご参考ください。
>> 水素吸入器で水素爆発する条件と対策のポイント4つ
標準治療の効果を妨げないか?
「水素が活性酸素を除去するなら、がんを攻撃する活性酸素まで消してしまい、抗がん剤や放射線の効果を弱めてしまうのでは?」という懸念をお持ちかもしれません。
しかし、多くの研究が、水素吸入は標準治療の効果を妨げないことを示しています。2、3)水素は「悪玉」の活性酸素には反応しますが、「善玉」の活性酸素(免疫やシグナル伝達に必要なもの)にはあまり反応しない「選択性」が特徴であり、この点が治療の邪魔をしない理由だと考えられています。
がん治療に水素吸入を導入する際の注意点

もし水素吸入を「試してみたい」と思われた場合、必ず知っておいていただきたい重要な注意点が4つあります。
1. 標準治療の代わりにはならない
水素吸入は、現在行っている標準治療(手術、抗がん剤、放射線治療)の代わりになるものではありません。実際、主要学会(ASCO/ESMO など)のがん診療ガイドラインに水素吸入は標準治療としてまだ記載されていません。
一部で「水素でがんが治る」といった情報を目にすることがあるかもしれませんが、現時点の科学的根拠(エビデンス)において、水素吸入『だけ』でがんを根治させることを証明したデータはありません。
あくまで標準治療を「補完」し、副作用を軽減したり、治療効果を高めたりするための「補助的な選択肢」の一つとして捉えてください。標準治療を自己判断で中断・拒否することは、絶対にあってはなりません。
2. 効果が立証されている段階ではない
水素吸入はがん治療を助ける方法として期待されていますが、現時点で、「はっきりと効果が証明された」と言える段階ではありません。
記事内で紹介している論文の多くは、参加者が少ない、比較対象がいないといった研究が中心で、結果が確実とは言えません(このような研究は、誤差や偏りが入りやすいという特徴があります)。つまり「大人数を対象にした、信頼性の高い手法を用いた研究(質の高い研究)」はまだ少ないのです。
そのため、「がん治療を助ける効果があるかもしれない」と期待はされていますが、「効果がはっきり証明された」とまでは言えない段階という点は理解しておきましょう。
3. 必ず主治医に相談した上で判断する
ご自身の判断で水素吸入を開始しないでください。必ず、現在のがん治療を担当している主治医に「水素吸入を併用したい」と相談してください。
患者さんのがんの種類、進行度、現在の体調、使用している薬剤など、全ての情報を把握している主治医の許可と管理下で行うことが大前提です。
主治医が水素吸入に否定的な場合
主治医に相談した際、否定的な見解や懐疑的な反応が返ってくることも少なくありません。実際に、水素吸入はまだ十分なエビデンスが確立された「標準治療」ではないため、医師が慎重になるのは当然の反応とも言えます。
その場合は、まずは何を懸念しているか理由を尋ね、「標準治療の補助としてQOLを上げたい」という意思を伝えましょう。それでも強く反対される場合は無理強いせず、水素治療に詳しい医師へセカンドオピニオンを求めるのも一つの方法です。

「水素を吸ってがんを治そうと思っている。」と伝えると、多くの医師は否定的な反応を示すと思います。
そのため、コツとしては、「現在の治療を少しでも安全に快適に継続していきたいので、そのために水素吸入をしてもいいですか?」というニュアンスで伝えれば、ダメという医師は少なくなると思います。
4. 相応の費用がかかる
がん治療における水素吸入は、保険適用外の「自由診療」です。そのため、費用は全額自己負担となり、継続することで高額になる可能性があります。
クリニックで受ける場合、1回(60分程度)で3,000円~1万円程度が相場です。副作用軽減のためには頻回・継続的な吸入が望ましいとされるため、利用するにつれてトータル費用は膨れがちになります。月額プランなどの定額制が用意されていることもありますが、まだ導入しているクリニックは少ないです。
自宅に機器を導入する場合も、十分な性能・安全性のある機器は50万~100万円以上と非常に高価であり、導入コストのハードルがあります。
大きな期待が寄せられている水素吸入ですが、その分コストもかかる点は十分に理解しておきましょう。
5. 水素吸入を「やめておくべき」ケース
安全性が高いとされる水素吸入ですが、以下のような状態にある方は、導入を推奨されないか、極めて慎重な判断が必要です。必ず主治医にご相談ください。
- 重度のアレルギーを有する、または既往歴のある方
- 重篤な活動性感染症(結核など)にかかっている方
- 酸素吸入をしていない状態で、動脈血酸素飽和度(SpO2)が94%未満の方(重度の呼吸不全がある方)
- 体力が極度に低下している、または意思の疎通が難しい方(重度の認知症や意識障害を含む)
- 透析が必要な重度の腎機能障害のある方
- 治療が必要な重症の精神疾患をお持ちの方
- 妊娠中・授乳中の方(安全性が確立されていないため)
水素吸入をがん治療中に取り入れる方法は2つ

がん治療に水素吸入を取り入れる際、主な選択肢は「クリニックに通う」か「自宅で行う」の2つです。
①クリニックで行う
自由診療として水素吸入を提供しているクリニック(がん治療専門や統合医療を行うクリニックなど)で受けられます。
費用の目安は、1回30分で2,000~3,000円、60分で3,000~6,000円程度です。
まずは、一度試してみたい方や医療スタッフの管理下で安心して利用したい方に向いています。
一部サロンでも水素吸入を提供している場合がありますが、医療的な管理や安全面・機器性能の観点からも、初めての方はまずはクリニックで行うことをお勧めします。
②自宅で行う
水素吸入器を購入、またはレンタルして自宅で吸入することもできます。
機器を購入する場合は50万~100万円以上、レンタルの場合は月額5〜7万円程度です。(がん治療の補助として研究で使われるレベルの機器の場合)
また、使用していく上で電気代や水代などのランニングコストがかかる点には注意しておきましょう。ただし、長期的に見ると、クリニックに通う場合よりも安くなる場合も多いです。
通院の負担(体力、時間)を減らしたい方や毎日長時間(2~3時間以上)吸入したい方にオススメです。
がん治療に水素吸入を「賢く」活用する方法

では、いざガン治療の補助として水素吸入を取り入れる際に、うまく活用するためのヒントをお伝えします。
主に、以下の2点が重要になります。
- 使用する水素吸入器を厳選する
- 水素吸入の推奨頻度と時間
それぞれ解説します。
使用する水素吸入器を厳選する
水素吸入器は、発生する水素の「量」や「濃度」は様々です。特にがん治療の補助を目的とする場合、十分な水素発生量がある、安全性の高い機器を選ぶ必要があります。
これまでの臨床研究では、比較的高流量(毎分1,000ml以上の水素を発生)の機器が用いられる傾向にあります。どれくらいあれば良いかという結論は出ていませんが、これらの研究条件を参考にするのも1つでしょう。
クリニックで受ける場合は高性能な業務用機器が使用されていることが多いですが、念のためどの機器を使っているか事前に確認しておくと安心です。
がん患者を対象にした研究論文まとめ
がん患者さんを対象に水素吸入の効果を検証した研究論文の代表例をいくつかまとめておきます。
必要な性能基準の参考にご活用ください。
| 論文タイトル | 研究概要 | 実施した水素吸入 |
|---|---|---|
| 水素ガス吸入を用いた非小細胞肺癌における脳転移の完全消失:症例報告(2019) | 標準治療が奏功しなかった44歳女性の非小細胞肺癌の多発転移(脳、小脳、肺、肝臓、骨、副腎)に対し、水素ガス単独療法を実施した。4ヶ月後、多発性脳腫瘍のサイズが著しく縮小し、1年後には目視可能な脳腫瘍がすべて消失。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日 3〜6時間吸入 |
| 進行性大腸癌患者における疲弊したCD8+ T細胞を水素ガスが回復させ、予後を改善する(2019) | ステージIV大腸癌患者55名を対象とした研究。水素ガス吸入により、疲弊した末端PD-1+ CD8+ T細胞の減少と、活性な末端PD-1− CD8+ T細胞の増加が観察され、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が改善した | 流量1,800ml/分(水素濃度67%)を毎日3時間吸入 |
| 水素ガス療法が誘発した転移性胆嚢癌の縮小:症例報告(2019) | 標準治療不応で重度の貧血を伴う転移性胆嚢癌患者(72歳女性)に対し、水素ガス単独療法を実施。治療開始1ヶ月後に腫瘍進行と腸閉塞が見られたが、水素吸入を継続した結果、3ヶ月後に腹腔内転移巣が縮小し、貧血および腫瘍マーカーレベルが正常に戻った。患者は4ヶ月以上安定を維持。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日3〜6時間吸入 |
| 水素酸素療法は鼻咽頭癌患者の放射線治療誘発性難聴を軽減し得る(2019) | 放射線治療後に重度の難聴に至った鼻咽頭癌患者3名の症例報告。連続的な水素酸素療法(0.5ヶ月、1ヶ月、2ヶ月)後、両耳の聴力が改善。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日4時間吸入 |
| 水素が癌を制御した「リアルワールド調査」:進行癌患者82名のフォローアップ報告(2019) | ステージIIIおよびIVの進行癌患者82名に対する追跡調査。4週間の水素吸入後、QOLの指標(疲労、不眠、食欲不振、疼痛など)が有意に改善した。3ヶ月後、41.5%で身体状況が改善し、57.5%で疾患制御率(DCR)が達成された(DCRはステージIII患者で83.0%と高かった)。腫瘍マーカーは36.2%の患者で減少した。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日3時間以上吸入 |
| 水素吸入後に偽進行性の寛解を呈した胆嚢癌患者(2019) | 転移性胆嚢癌の72歳女性患者(症例報告)において、水素吸入療法と対症療法を併用。水素吸入開始後1か月で全身状態と血液パラメータが改善し、2か月半後には腫瘍マーカー(CA19-9、AFP、CEA)が正常範囲に戻った。6か月後には腫瘍サイズが33%縮小し、部分奏効(PR)を示した。疲弊したCD8+ T細胞(PD-1+CD8+ T細胞)の割合は、治療前46.8%から9か月後には27.6%に減少。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日2時間吸入からはじめ、徐々に1日6時間まで増やした |
| 水素ガスはコエンザイムQ10を活性化し、疲弊したCD8+ T細胞、特にPD-1+Tim3+末端CD8+ T細胞を回復させ、肺癌患者におけるニボルマブ治療成績の向上に寄与する(2020) | ニボルマブ治療を受けているステージIV肺癌患者42名に対し、水素ガス吸入を併用したところ、ニボルマブ単独群と比較して全生存期間(OS)が有意に延長した(併用群 28ヶ月 vs 非併用群 9ヶ月)。 | 流量1,800ml/分(水素濃度67%)を毎日3時間吸入 |
| 進行非小細胞肺癌患者において水素療法は腫瘍進行を抑制し、薬剤の有害事象を軽減するために使用できる(2020) | 進行NSCLC患者58名を対象とした臨床試験。水素単独群の無増悪生存期間(PFS)は対照群(4.4±1.2か月)より長く(7.9±2.2か月)、腫瘍進行の抑制効果が示された。水素併用群(化学療法、分子標的薬、免疫療法)では、ほとんどの薬剤関連有害事象が徐々に軽減または消失し、PFSも有意に延長した。水素単独療法は、腫瘍関連症状(咳、呼吸困難、胸痛など)の有病率を有意に低下させた。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日4〜6時間吸入 |
| 進行性非小細胞肺癌患者における適応免疫系および自然免疫系の老化を水素吸入が2週間で有意に回復させる可能性:自己対照研究(2020) | 進行性NSCLC患者20名を対象とした自己対照研究。2週間の水素吸入後、疲弊した/老化細胞傷害性T細胞の数が減少し、機能的なT細胞、NKT細胞、NK細胞、Vδ2細胞など、異常に低かった免疫細胞群が正常範囲内に増加した。KPSスコアと肺機能(FEV1, FVC)も有意に改善。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日4時間吸入 |
| 癌患者の放射線誘発性骨髄損傷に対する水素ガス吸入の防御効果:後向き観察研究(2021) | IMRT治療を受ける末期癌患者(H2群16名、対照群7名)に対する後向き観察研究。水素ガス吸入治療は、IMRTによって誘発される白血球(WBC)と血小板(PLT)の減少(骨髄損傷の指標)を、対照群と比較して有意に軽減した。 | 流量4,000ml/分(水素濃度5%)を毎日30分吸入 |
| 放射線治療後の鼻咽頭癌患者における聴力損失に対する水素吸入療法の効果(2022) | 鼻咽頭癌の放射線治療後に難聴を患う17名の患者に対する前向き研究。4週間の水素吸入後、耳管機能不全スコア、気導聴力閾値、骨導聴力閾値が有意に改善。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日3〜6時間吸入 |
| 放射線治療後の難治性創傷に対する水素介入の効果:症例報告(2022) | ケロイド手術と放射線治療後に難治性の慢性創傷を負った42歳女性の症例報告。高圧酸素療法や成長因子療法で治癒しなかった創傷に対し、水素吸入(HI)療法を実施。治療開始から6ヶ月以内に創傷は完全に治癒。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日2時間吸入 |
| インドシアニングリーンリポソームを用いた難治性癌に対する光線力学療法の経験(2022) | 中縦隔食道癌と下咽頭癌の2症例に対し、光線力学療法(PDT)にLEMと水素ガス吸入療法を組み合わせた多角的治療を実施。食道癌の症例では1年後に、下咽頭癌の症例では6ヶ月後に腫瘍消失が確認。 | 流量1,300ml/分(水素濃度67%)を毎日1〜3時間吸入 |
| 高悪性度グリオーマに対する統合腫瘍学:オンコサーミアと補完療法の複合効果に関する症例報告(2024) | 68歳男性の高悪性度グリオーマ患者に対し、オンコサーミアや高用量ビタミンCなどと並行して水素吸入を含む統合医療プロトコルを実施。治療後、MRIで腫瘍サイズが約12%減少した。患者のQOLおよび血液学的パラメーター(例:CRP)の有意な改善が見られた。 | 流量600ml/分(水素濃度67%)を毎日30分吸入 |
| 局所進行頭頸部癌患者における水素ガス吸入のパイロット実現可能性および安全性研究(2024) | 局所進行頭頸部癌患者10名に対し、同時化学放射線療法(CCRT)中に水素ガス吸入を併用した予備的な前向き研究。水素ガス吸入による急性毒性(グレード3白血球減少症など)の発生率が、過去の他の研究と比較して低い傾向を示した。 | 流量1,800ml/分(水素濃度67%)を毎日1時間吸入 |
| 子宮頸癌患者における同時化学放射線療法中の急性放射線腸炎および炎症反応に対する水素療法の臨床的有効性(2025) | 子宮頸癌患者を対象とした前向き無作為化試験(実験群 n=28、対照群 n=30)。水素吸入は、対照群と比較して、C反応性タンパク質、NLR、IL-6などの炎症性バイオマーカーのレベルを有意に低下させた。臨床評価(LENT-SOMAおよびPG-SGAスコア、RTOG腸炎グレード)も水素群で軽度であった。 | 流量3,000ml/分(水素濃度67%)を毎日2時間吸入 |
水素吸入器の選び方については、「【プロが教える】水素吸入器の選び方9つのポイント」でも詳しく解説しています。
水素吸入の推奨頻度と時間
がん治療の補助としてどの程度の吸入が最適か、統一された見解はまだありません。
しかし、多くの先行研究では「1日1〜3時間程度」での実施で行われる傾向が見られます(上述の「がん患者を対象にした研究論文まとめ」を参照)。また、水素は体内に留まらず排出されてしまうため、毎日継続することが重要です。
一つの目安として、「毎日1時間」を最低ラインとし、可能であれば1日2~3時間の吸入を継続できると理想的です。ただし、これも体調や生活リズムに合わせて、無理のない範囲で主治医と相談しながら決めていくのが良いでしょう。
日中に多くの時間を取れない方は、寝ながらの吸入を検討してみるのも1つです。
水素吸入の適切な頻度や時間については、「水素吸入の最適な頻度と時間とは?効果を高めるコツを解説」もご参照ください。
水素吸入とがん治療に関するよくある質問
最後に、水素吸入とがん治療についてよくいただくご質問についての回答をまとめました。ぜひご参考ください。
Q1. 水素吸入でがんは「治り」ますか?
いいえ。現在の医学的研究において、水素吸入ががんの発生や進行を抑制する可能性を示す研究はあるものの、水素吸入『だけ』でがんを根治する(治す)ことを証明したデータはありません。
水素吸入に期待されている役割は、あくまで抗がん剤や放射線治療といった『標準治療』の副作用を軽減し、患者さんのQOL(生活の質)を維持・向上させる『補完的な役割』です。標準治療の代わりになるものではないことをご理解ください。
Q2. 水素吸入の副作用や安全性は?
重篤な副作用は報告されておらず、安全性の高い方法だと考えられています。ごく稀に一時的な吐き気や眠気を感じる場合がありますが、軽微なものです。また、適切に管理された機器であれば、吸入中に爆発する危険性もまずありません。
Q3. 家庭用水素吸入器とクリニックの吸入器に違いはありますか?
主な違いは「水素(ガス)発生量」と「価格」です。
クリニックで使われる業務用機器は、非常に多くの水素を安定して発生させることができますが、数百万円と高価です。家庭用は、価格が抑えられている分、発生量が少ないものから、業務用に近いものまで様々です。がん治療の補助として家庭用を選ぶ場合は、十分な発生量がある高性能なモデル(50万円~)が推奨されます。
Q4. 水素吸入は、どのくらいの期間や頻度で続けるのが良いですか?
明確な基準はありませんが、「毎日」「継続的」に行うことが重要とされています。水素は体内に蓄積できないため、一度にまとめて行うより、毎日コンスタントに体内に取り入れることが望ましいです。目安として「毎日1時間以上」で取り入れると良いでしょう。
Q5. がん治療での水素吸入は「保険適用」になりますか?
いいえ。現時点(2025年11月)で、がん治療に対する水素吸入は保険適用外の「自由診療」です。
そのため、費用は全額自己負担となります。(※過去に「心停止後症候群」という別の疾患で先進医療として認められた時期がありますが、がん治療は対象外であり、また現在はその先進医療自体も取り下げられています。)
ただし、治療費の総額によっては「医療費控除」の対象となる可能性はあります。詳しくは管轄の税務署や税理士にご相談ください。
Q6. 水素吸入はどこのクリニックで受けられますか?
近年、水素吸入を導入するクリニックは増えていますが、特にがん治療に積極的に活用しているのは、自由診療のクリニックや統合医療を掲げるクリニックが多い傾向にあります。
当サイト「すいかつねっと」でも、水素吸入が受けられる施設の一部を紹介していますので、ご参考にしてください。
>> 水素吸入ができるクリニック・サロンを探す
Q7. 「水素水」を飲むのではダメですか?
水素水にも水素は含まれますが、体内に取り込める水素の『量』が、水素吸入とは圧倒的に異なります。
コップ1杯の水素水に含まれる水素の量はごくわずかです。一方、水素吸入は高濃度のガスを数十分~数時間吸い続けるため、摂取できる総量が桁違いに多くなります。
現在、がん治療に関連して臨床研究が進められているのは、この高濃度の水素ガスを直接吸入する『水素吸入』が主流のため、水素水よりも水素吸入をおすすめします。
まとめ:水素吸入は「がん治療を補う」療法として期待される
この記事では、「水素吸入とがん」に関する最新の研究(エビデンス)と、治療に取り入れる際の注意点について解説しました。
水素吸入は、がんの標準治療(手術・抗がん剤・放射線)の副作用を軽減し、患者さんのQOL(生活の質)を向上させる「補完的な選択肢」として、多くの期待が寄せられています。特に、抗がん剤・放射線治療の副作用軽減や、免疫細胞の活性化については、質の高い研究報告も出始めています。
しかし、決して「がんが治る」と保証されたものではなく、標準治療に取って代わるものではありません。
もし導入を検討される場合は、本記事を参考に、必ず主治医に相談し、ご自身の体調や経済状況、治療方針に合っているかを総合的に判断してください。
水素吸入に関するお悩みは、当サイト公式LINEより無料でご相談いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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無料で相談する参考文献
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