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【医師監修】水素吸入療法は膀胱がんの予防や改善に効果がある?

【医師監修】水素吸入療法は膀胱がんの予防や改善に効果がある?

《この記事の執筆者》

膀胱がんは女性よりも男性の方が発症しやすいとされ、男性が罹患するがんの約3%を占めています1)

進行すると膀胱の摘出が必要になる場合もあり、そうなると日常生活にもかなりの支障をきたすようになってしまいます。

そんな膀胱がんに対して、近年予防や進行抑制の面で期待を集めているのが水素ガスを吸引する水素吸入療法です。

本記事では、水素吸入療法が膀胱がんの予防や改善に対して効果があるのかについて、現在報告されている研究データをもとに解説していきます。

膀胱がんとはどんな病気?

膀胱がんは膀胱に発生するがんのことです。

日本では1年間で20,000人以上の方が膀胱がんと診断され、10,000人弱の方が膀胱がんで命を落としています1)。女性より男性の方が膀胱がんを発症しやすく、男性のがんの3.1%を占めているのが現状です2)

膀胱がんは早期段階で発見できても5年生存率は90%を下回っています1)。また、進行すると膀胱の摘出が必要になるため、手術後の排尿トレーニングなどが必要となり日常生活にも支障を来すようになります。

そのため、現在も膀胱がんの予防や治療方法の研究が進められているのです。

まずは、膀胱がんの特徴について見てみましょう。

膀胱がんの原因

膀胱がんは男性に発症しやすく、年齢を重ねるごとに発症率は高くなります。

明確なメカニズムは解明されていない部分もありますが、現在のところ膀胱がんの原因として挙げられているのは喫煙習慣です。喫煙者は非喫煙者に比べて約4倍も膀胱がんになりやすいとのデータがあります3)

また、特殊な化学薬品や塗料を扱う職業の方も膀胱がんの発症率が高いことが知られており、これらの物質が膀胱がんの発症に関わっていると考えられています。

膀胱がんの症状

膀胱がんを発症すると、血尿、頻尿、排尿時の痛み、残尿感といった症状が現れるようになります。

膀胱がんの多くは膀胱の内側にできるため、進行すると尿の出が悪くなり、お腹や背中の痛みを引き起こすケースも少なくありません。

さらに進行すると周囲のリンパ節、肺、肝臓、骨などに転移を引き起こします4)

膀胱がんの標準的な治療

膀胱がんの治療方法はがんの進行度や全身のコンディションによって大きく異なります。

早期発見できた場合

早期段階で発見できた場合は、尿道から膀胱に内視鏡を挿入してがんを切除する「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」という手術を行います。

一般的に手術後はがんの再発を予防するために膀胱内に抗がん剤やBCGなどを注入する「膀胱内注入療法」が必要です。

進行や転移がある場合

また、がんが膀胱の粘膜を越えて筋肉の層にまで達している場合、基本的には膀胱を摘出する手術を行います。膀胱摘出後は新しく尿を排泄するための経路を作る手術も必要です。

一方、転移がある場合や手術ができるコンディションでない場合は、抗がん剤などを用いた薬物療法を行います5)

膀胱がんは早期段階で発見できれば5年生存率は87.3%ですが、転移を起こしている場合には9.5%に留まっているのが現状です1)

水素吸入は膀胱がんの予防・改善に効果はある?

現在、多くのがんは早期段階で発見できれば5年生存率は90%を越えます。一方、膀胱がんの5年生存率は90%を下回っており、決して予後がよいがんとは言えません。さらに転移がある進行がんの場合では5年生存率は10%未満であり、早期発見と治療、そして予防方法の研究が進められています1)

近年、体内に蓄積した活性酸素を除去できる水素吸入ががんの治療にも応用できるのではないかと考えられています。膀胱がんに対しても水素吸入が予防や治療に役立つ可能性を示唆する研究結果が報告されました。

膀胱がんと水素吸入の関係を示唆する研究結果の内容を詳しく見てみましょう。

膀胱がんの予防の可能性

膀胱がんは活性酸素との深い関わりが報告されており、その活性酸素を除去できる水素吸入が予防に貢献するかもしれない可能性があります。

喫煙による活性酸素増加とがん発生

上述したように膀胱がんの最も大きなリスク要因は喫煙習慣であることが分かっています。タバコには多くの発がん物質が含まれていますが、活性酸素を発生される原因の一つでもあります。

喫煙によって発生した活性酸素が膀胱の粘膜に慢性的なダメージを与えたり、DNAの損傷を招いたりすることでがんの発生を促すと考えられているのです6)

活性酸素が膀胱がんを誘発

また、2017年に報告された研究結果では、活性酸素は遺伝子レベルで膀胱がんの発生を促す可能性があると示唆されました7)

膀胱がんの発生にはいくつかの遺伝子変異が関わっていることが明らかになっています。膀胱がん患者の約30%はRas遺伝子変異、約50%はp53遺伝子変異があるとされています。

これらの遺伝子変異は活性酸素によるダメージによって引き起こされる可能性があることが示唆されており、結果として活性酸素が遺伝子レベルから膀胱がんを引き起こしているとの報告がなされたのです。

これら2つの報告から、活性酸素を除去できる水素吸入は膀胱がんの予防に役立つ可能性があると考えられます。まだ研究段階であり、確実な効果があると断言はできませんが、今後のさらなる探求が期待されます。

膀胱がんの症状改善の可能性

膀胱がんの症状改善の面では、活性酸素の抑制による膀胱がんの進行を抑える可能性が報告されており、水素吸入に対しても期待が寄せられています。

膀胱がんでミトコンドリアが活性酸素放出

2008年に報告された研究結果によれば、膀胱がんは細胞内小器官であるミトコンドリアの遺伝子に変異があることが同定されたとのことです8)

ミトコンドリアは私たちが生きてくために必要なエネルギーを作り出す働きがある小器官ですが、ミトコンドリアは独自の遺伝子を持つことが知られています。ミトコンドリアはダメージを受けやすく、ダメージを受けると活性酸素を放出する性質があります。

活性酸素を抑制することでがんの進行も抑制

ラットの膀胱がん細胞を使用した研究では、ミトコンドリア遺伝子の変異によって活性酸素は増加。そして、がんを大きくしながら進行を早める可能性があると示唆されました。一方で、活性酸素の働きを抑えるビタミンCを膀胱がん細胞に与えると活性酸素が減少し、がんの進行が抑制されたことも明らかになっています。

動物実験の段階であるため、まだ確実な効果があるとは言えませんが、活性酸素の抑制が膀胱がんの進行を食い止める可能性があると考えられる結果となりました。

このような結果から、活性酸素を抑える薬剤が膀胱がんの治療に適応できるか評価する研究が進められています。活性酸素を除去できる水素吸入も膀胱がんの治療に役立つ可能性があり、今後のさらなる解明に期待します。

【私はこう考える】水素吸入と膀胱がん

膀胱がんは早期段階で発見できた場合でも5年生存率は決して高くありません。また、手術によって膀胱を摘出するとその後のQOLにも大きな影響をもたらします。そのため、膀胱がんの予防や治療方法に関する研究は今もなお続けられているのです。

今回ご紹介した2つの研究結果からも分かるように、膀胱がんの発生や進行には活性酸素が関与している可能性が示唆されています。まだ明確なメカニズムは解明されておらず、研究段階ではありますが、活性酸素を除去する薬剤の開発などが進められています。

活性酸素を除去する作用がある水素吸入も膀胱がんの予防や治療に役立つかもしれません。水素吸入は体への負担なく、ご自宅でも気軽に行うことが可能です。生活習慣病や美容にも効果があるとされているため、予防や治療のために試してみるのもよいでしょう。

ただし、水素吸入はあくまで予防や治療に役立つ可能性があるという段階に留まっています。確実な効果は明らかになっていないため、定期的な健診や医師に指示された治療は必ず受けるようにしましょう。

参考文献
  1. がん情報センター『膀胱』
  2. 公益財団法人日本対がん協会『がんの部位別統計』
  3. 国立研究開発法人国立がん研究センター『喫煙、コーヒー、緑茶、カフェイン摂取と膀胱がん発生率との関係について』
  4. がん情報サービス『膀胱がんについて』
  5. がん情報センター『膀胱がん 治療』
  6. 第15回禁煙推進セミナー『喫煙と血管内皮機能』
  7. Ciccarese, C., Massari, F., Blanca, A., Tortora, G., Montironi, R., Cheng, L., Scarpelli, M., Raspollini, M. R., Vau, N., Fonseca, J., & Lopez-Beltran, A. (2017). Tp53 and its potential therapeutic role as a target in bladder cancer. Expert opinion on therapeutic targets21(4), 401–414. https://doi.org/10.1080/14728222.2017.1297798
  8. Dasgupta, S., Hoque, M. O., Upadhyay, S., & Sidransky, D. (2008). Mitochondrial cytochrome B gene mutation promotes tumor growth in bladder cancer. Cancer research68(3), 700–706. https://doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-07-5532

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