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【医師監修】水素吸入療法は食道がんの予防や改善に役立つ?

【医師監修】水素吸入療法は食道がんの予防や改善に役立つ?

《この記事の執筆者》

食道がんは、早期発見が難しく治療が難しいがんの一つです。日本では年間約26,000人が新たに診断され、約11,000人もの方が命を落としています。

喫煙や過度な飲酒などが発症リスクを高めることが分かっていますが、明確な発症メカニズムは未だ解明されていない部分も多いのが現状です。

そんな中、水素吸入療法が食道がんの予防や治療に役立つ可能性を示唆する研究結果が報告されています。

本記事では、食道がんの基礎知識から水素吸入療法の予防、改善効果について最新研究をもとに解説していきます。

食道がんはどんな病気?

食道がんができる位置

食道がんとは、食道に発生するがんのことです。

60~70代で発症することが多く、男性の方が女性よりも発症しやすいとされています。日本では、一年間で約26,000人が新たに食道がんと診断され、約11,000人が命を落としています1)

まずは食道がんの特徴について見てみましょう。

食道がんの原因

食道がんの明確な発症メカニズムは解明されていない部分もあります。

しかし、以下のような要因があると発症しやすいとされているため注意が必要です。

食道がんのリスク要因
  • 喫煙習慣
  • 過度な飲酒
  • 野菜や果物の摂取不足

特に、喫煙と飲酒習慣が両方ある方は食道がんの発症リスクが高いことが分かっています。

また、アルコールを分解する能力が生まれつき弱い体質の人も食道がんになりやすいことが報告されています2)

食道がんの症状

食道がんは初期段階では目立った自覚症状は現れません。

しかし、進行したがんが大きくなると以下のような症状が現れるようになります。

食道癌が進行した時の症状
  • 飲食時の胸のチクチクした痛み
  • 食べ物が胸につかえる感じ
  • 胸や背中の痛み
  • 体重減少
  • 声のかすれ

また、食道の周囲には気管、肺、心臓、大動脈などの臓器が隣接しています。がんが進行して周囲の臓器に広がると肺や心臓などにダメージを引き起こすことも少なくありません。さらに、肝臓や骨などの離れた臓器に転移することがあります。

食道がんの標準的な治療方法

食道がんの治療方法は、がんの進行度や全身の状態によって大きく異なります。

ごく早期で発見できた場合は内視鏡でがんを切除する治療ができます。しかし、内視鏡で切除できない場合には手術が必要です。

進行して周囲の臓器に広がっている場合や全身の状態が悪く手術ができない場合には、放射線治療や抗がん剤治療が行われます。

食道がんは治りにくいがん

食道がんは、早期段階では自覚症状が現れにくく、進行した状態で発見されるケースも少なくありません。また、周囲の重要な臓器にがんが広がりやすく、5年生存率は40%程度です。

早期段階で発見できた場合でも5年生存率は80%で、転移があるような場合にはわずか10%です1)

水素吸入療法は食道がんの予防と治療に役立つ?

食道がんは治りにくいがんの一つであり、今もなお新たな予防や治療方法を見出すための研究が続けられています。水素吸入療法が食道がんの予防や治療に応用できるか検討した研究結果は現在のところ報告されていません。

しかし、水素分子が食道がんの予防や治療に役立つ可能性を示唆する研究結果が報告されています。

水素と食道がんの関係について詳しく見てみましょう。

水素分子は食道がんのがん細胞を死滅させる働きがある?

2017年に、水素分子が食道がんの細胞を死滅させる可能性を示唆する研究結果が報告されています3)

この研究では、人の食道がんの細胞とがんではない食道の細胞を培養しました。

培養液に水素分子を放出できる装置を入れた群と入れていない群に分けて比較したところ、水素分子が入った培養液のがん細胞は細胞の死滅を促す「アポトーシス」という現象が促されたことが明らかになっています。

水素吸入療法が食道がんの予防効果を持つ可能性

上記の研究によって、水素分子は食道がんの細胞を死滅に追いやる働きを持つ可能性が示唆されました。

がん細胞は健常な人にも発生しており、アポトーシスによって死滅することでがんの発症が抑えてています。そのため、今回の結果から、水素分子は食道がんの予防につながる可能性があると考えられます。

水素吸入療法は水素分子を効率よく体内に取り込むことができるため、食道がんの予防効果を持つ可能性があるでしょう。

まだ確実に効果があると断言できる段階ではありませんが、今後さらに研究が進んで予防に応用できるようになる日を期待しましょう。

水素ガスが食道がんの進行を抑える?

2020年に、水素ガスが食道がんの進行を抑える働きがあることを示唆する研究結果が報告されています4)

この研究では、白金の微粒子を含んだ培地に水素ガスを加えて人の食道がん細胞を培養しました。結果として、有意にがん細胞の増殖を抑制できたことが明らかにされています。

一方、水素分子を含んだ培地では、白金の微粒子を加えた培地よりもがん細胞の増殖が有意に抑えられたとのことです。白金の微粒子には水素分子を吸着する働きがあるため、より多くの水素分子が取り込まれたことによる結果と考えられました。

水素吸入療法は食道がんの進行を抑える可能性

今回の研究結果から、水素ガスは食道がんの進行を抑える働きを持つことが示唆されました。もちろん、がん細胞の培養液中に水素ガスを加えた方法での検討であるため、実際に食道がん患者に水素ガスを吸入させると同様の効果が得られるか断言はできません。

しかし、水素吸入療法が食道がんの治療に役立つ可能性は否定できないでしょう。今後、さらなる解明が進み、治療に応用できる日を期待します。

【私はこう考える】水素吸入と食道がん

食道がんは早期の段階での発見が難しく、さらに周辺には多くの臓器があるため進行すると治りにくいがんの一つです。

早期段階で発見できた場合でも5年生存率は80%程度であり、新たな予防や治療法の発見を目指して多くの研究が重ねられています。

今回ご紹介した2つの研究結果から、水素吸入療法にも食道がんの予防や治療に役立つパワーを持つ可能性が示唆されました。まだ研究段階ではありますが、今後に期待できると言えるでしょう。

また、水素吸入療法は自宅でも簡単に行うことができます。健康や美容によい効果がたくさんあることも分かっており、食道がんの予防や治療の補助的な手段として取り入れるのもよいでしょう。

特に喫煙や飲酒、食生活の乱れなどがある方にはおすすめです。

参考文献
  1. 食道:[国立がん研究センター がん統計]
  2. 食道がんの疫学・現状・危険因子 | 食道がん一般の方用サイト
  3. Li, Q., Tanaka, Y., & Miwa, N. (2017). Influence of hydrogen-occluding-silica on migration and apoptosis in human esophageal cells in vitroMedical gas research7(2), 76–85. https://doi.org/10.4103/2045-9912.208510
  4. Kato, S., Saitoh, Y., & Miwa, N. (2020). Hydrogen-bubbled platinum-colloid suppresses human esophagus- or tongue-carcinoma cells with intracellular platinum-uptake and the diminished normal-cell mortality. Human cell33(4), 1294–1301. https://doi.org/10.1007/s13577-020-00402-1

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