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【医師監修】子宮体がんの予防と治療に水素吸入療法が役立つ?最新の研究結果を解説

【医師監修】水素吸入療法は子宮体がんの予防や改善に役立つ?

《この記事の執筆者》

子宮体がんは閉経後の女性に多いがんですが、早期発見と治療で治る可能性の高いがんでもあります。

最新の研究では、水素吸入療法ががん細胞を死滅させたり、がんを縮小させる可能性が示唆されています。

本記事では、子宮体がんの症状、原因、治療法とともに、予防と治療における水素吸入療法の可能性について解説します。

子宮体がんってどんな病気?

子宮体がんとは、子宮の体部に発生するがんのことです。

閉経を迎えた50代以降の女性に発症することが多く、若い世代で発症しやすい子宮頸がんと異なる性質を持ちます1)

日本では、毎年約18,000人の女性が新たに子宮体がんと診断され、約2,600人が命を落としています2)

まずは、子宮体がんの特徴を見てみましょう。

子宮体がんの原因

子宮体がんの約80%は女性ホルモン(エストロゲン)による長期的な刺激が原因で発症すると考えられています3)

エストロゲンは子宮の内側を覆う子宮内膜という組織の発育を促す働きがあります。

そのため、エストロゲンの分泌が多い女性は、子宮内膜の過度な増殖が生じて子宮体がんを発症するとされているのです。

エストロゲンと関連する子宮体がんは、以下の項目に当てはまる方の発症するリスクが高いことが分かっています。

子宮体がんの発症リスク要因
  • 出産経験がない
  • 肥満
  • 閉経が遅い
  • エストロゲン製剤のホルモン療法を受けている
  • 生理不順(無排卵性月経周期)

子宮体がんの残りの20%はエストロゲンの影響を受けずに発症します。

このタイプの子宮体がんは、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、乳がんや大腸がんの血縁者がいることなどがリスク要因として知られています。

子宮体がんの症状

子宮体がんの最も多い自覚症状は不正出血です。

不正出血とは生理中ではない時期や閉経後に生じる性器出血のことで、早期段階から自覚しやすい症状であるとされています。

進行すると以下のような症状が現れます。

子宮体がん進行時の症状
  • 下腹部の痛み
  • 腰痛
  • 性交時の痛み
  • 足のむくみ

進行するとがんが子宮頸部、腟、卵巣、卵管、膀胱、直腸、リンパ節など周囲の臓器に広がります。

肺や肝臓など子宮から離れた臓器に転移することもあり、この段階まで進行すると治療が非常に難しくなります。

子宮体がんの標準的な治療法

子宮体がんの治療方法は、がんの進行度や全身の状態によって異なります。

標準的には子宮だけではなく卵巣や卵管、リンパ節など周囲の臓器も含めて摘出する手術が必要です。

一方、がんが進行して手術が困難な場合や全身の状態が悪く手術ができない場合などは抗がん剤治療や放射線治療を行います。

また、若くして発症し、将来的に出産を希望する場合には早期段階であればホルモン療法を行って子宮を残す治療を目指すことがあります。

子宮体がんは早期発見、早期治療が大切

子宮体がんは早期段階から自覚症状が現れやすく、5年生存率は80%を超えています。

治りやすいがんの一つですが、進行した状態で発見された場合の5年生存率は20%程度2)

なので、早期発見、早期治療が非常に大切です。

初期症状の不正出血は閉経前後に生じやすい症状でもあるため、発見が遅れるケースもあります。

不正出血が続く場合は軽く考えず医療機関を受診しましょう。

水素吸入は子宮体がんの予防や治療に役立つ?

子宮体がんは比較的治りやすいがんですが、未だ多くの女性が命を落としています。

そのため、新たな予防や治療方法を見出すために多くの研究が続けられています。

水素吸入療法の子宮体がんへの効果を検証した研究は現在のところ行われていません。

しかし、水素が子宮体がんの予防や治療に役立つことを示唆する研究結果が報告されています。

子宮体がんと水素の関係を示す研究結果を詳しく見てみましょう。

水素ガスが子宮内膜のがん細胞を死滅させる?

2020年に、水素ガスが子宮内膜に発生したがんを死滅させる可能性を示唆する研究結果が報告されました4)

この研究は、人の子宮内膜に発生したがん細胞を水素水(水素ガスが溶けた水)の中で培養し、がん細胞の変化を観察しました。

その結果、がん細胞を自然な死に追いやる「アポトーシス」という現象が有意に活性化されたことが明らかになっています。

水素吸入が子宮体がんの予防に役立つ可能性

今回の結果から、水素は発生したがん細胞を死滅させる働きを持つ可能性が示唆されました。

がん細胞は健常な人にも作られ、アポトーシスの働きによって死滅することでがんの発症が抑えられています。

そのため、水素は子宮体がんの予防につながる可能性があると言えるでしょう。

この研究はがん細胞に直接水素を与えた結果であるため、確実に水素吸入療法が子宮体がん予防効果を持つと断言することはできません。

しかし、水素吸入療法は水素水よりも効率よく水素を体内に取り込むことができます。

水素吸入療法に子宮体がんの予防効果があることも期待できるでしょう。

水素が子宮内膜に発生したがんを小さくする?

同じく2020年に、水素が子宮内膜のがんを縮小したとする研究結果が報告されています5)

この研究では人の子宮内膜に発生したがん細胞を移植したマウスに水素水を投与した群と投与していない群に分けてがんの大きさなどを比較検討しました。

その結果、水素水を投与したマウスはがんが有意に縮小したことが明らかになっています。

水素吸入が子宮体がんの治療に役立つ可能性

子宮体がんのリスク要因の一つには肥満があり、これまで酸化ストレスの増加ががんの発生を促している可能性が指摘されてきました。

今回の研究では、水素水を投与したマウスは酸化ストレスが減少していることも明らかになっています。

水素吸入療法は上述したように水素水よりも多くの水素を取り入れることができるため、子宮体がんの治療に役立つ可能性が期待できるでしょう。

まだ動物実験の段階ですが、今後の治療への応用に期待しましょう。

【私はこう考える】水素吸入と子宮体がん

子宮体がんは早期段階から症状が現れやすいため、5年生存率は比較的高いがんの一つです。

しかし、今でも多くの女性が子宮体がんで命を落としているのも事実であり、決して軽く考えることはできない病気と言えます。

今回ご紹介した2つの研究結果から、水素吸入療法も子宮体がんの予防や治療効果を持つ可能性が考えられるでしょう。

まだ確実に効果があると言える段階ではありませんが、水素吸入療法はその他にも健康や美容に良い効果がたくさんあります。

水素吸入療法は自宅でも気軽にできるため、子宮体がんの予防や補助的な治療手段として取り入れてみるのもよいでしょう。

参考文献
  1. 子宮体癌|一般のみなさまへ|日本女性心身医学会
  2. 子宮体部:[国立がん研究センター がん統計]
  3. コロナ禍と肥満と子宮体がん|病気の解説|病気について知る|一般社団法人 松山市医師会
  4. Yang, Y., Liu, Y. P., Bao, W., Chen, J. S., & Xi, X. W. (2020). RNA sequencing analysis reveals apoptosis induction by hydrogen treatment in endometrial cancer via TNF and NF-κB pathways. Translational cancer research9(5), 3468–3482. https://doi.org/10.21037/tcr.2020.03.71
  5. Yang, Y., Liu, P. Y., Bao, W., Chen, S. J., Wu, F. S., & Zhu, P. Y. (2020). Hydrogen inhibits endometrial cancer growth via a ROS/NLRP3/caspase-1/GSDMD-mediated pyroptotic pathway. BMC cancer20(1), 28. https://doi.org/10.1186/s12885-019-6491-6
  6. https://link.springer.com/article/10.1186/s12885-019-6491-6

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