研究論文
水素は子宮内膜癌の増殖を抑制する

水素は子宮内膜癌の増殖を抑制する

一言まとめ

子宮内膜癌細胞において、水素分子が活性酸素種(ROS)とNLRP3インフラマソームを介してGSDMD経路によるピロトーシス(炎症性細胞死)を誘導することを明らかにした。また、マウス移植モデルにおいて、水素水の投与が腫瘍の増殖を抑制することを示した。

3分で読める詳細解説

結論

水素分子は子宮内膜癌細胞においてROS-NLRP3-caspase-1経路を活性化し、GSDMDを介したピロトーシスを誘導する。水素水の摂取は子宮内膜癌の増殖を抑制する可能性がある。

研究の背景と目的

ピロトーシスは炎症性プログラム細胞死の一種で、子宮内膜癌の予後とGSDMDタンパク質との関連が示唆されている。水素分子は腫瘍細胞死を促進し正常細胞を保護する二相性の効果を持つ。本研究では、水素分子がGSDMD経路を介したピロトーシスを誘導するかを検証し、子宮内膜癌における抗腫瘍効果とその機序を探ることを目的とした。

研究方法

ヒト子宮内膜癌組織およびマウス移植腫瘍における、NLRP3、caspase-1、GSDMDの発現を免疫組織化学染色とウェスタンブロット法で分析した。 子宮内膜癌細胞に水素分子を作用させ、活性酸素種(ROS)産生をDCFH-DA法とMitoSOX Red法で検出。GSDMD shRNAレンチウイルスを用いてGSDMDをノックダウンし、ピロトーシスにおけるGSDMDの役割を検証した。 ヨウ化プロピジウム(PI)染色、TUNEL法、乳酸脱水素酵素(LDH)放出量測定、IL-1β ELISAにより、水素によるピロトーシス誘導を評価した。 ヒト子宮内膜癌細胞を移植したマウスに水素水を投与し、抗腫瘍効果を検討した。

研究結果

  • ヒト子宮内膜癌組織およびマウス移植腫瘍において、NLRP3、caspase-1、GSDMDの高発現を認めた。
  • 水素分子は子宮内膜癌細胞のROSを増加させ、NLRP3インフラマソームとGSDMDの発現を上昇させた。水素投与によりPI陽性細胞とTUNEL陽性細胞の割合が増加し、LDHとIL-1βの放出量が増加したが、GSDMDをノックダウンするとこれらの放出量は減少した。
  • 水素水投与マウスにおいて、移植腫瘍の体積と重量の減少、発光強度の低下を認めた。腫瘍組織でNLRP3、caspase-1、GSDMDの発現が亢進していた。
  • GSDMDはピロトーシスの最終段階に関与するタンパク質であり、水素はROS-NLRP3-caspase-1シグナル伝達を介してGSDMDを活性化することが示唆された。

Appendix(用語解説)

  • NLRP3: 炎症反応を引き起こすタンパク質複合体の一部。ピロトーシスを誘導する。
  • caspase-1: 炎症性サイトカインの産生やピロトーシス実行に関わるタンパク質分解酵素。
  • GSDMD: 細胞膜に穴を形成し、炎症性細胞死(ピロトーシス)を引き起こすタンパク質。
  • 活性酸素種(ROS): 酸素を含む反応性の高い分子。細胞にダメージを与える。
  • ピロトーシス: 炎症反応を伴うプログラム細胞死の一種。

論文情報

タイトル

Hydrogen inhibits endometrial cancer growth via a ROS/NLRP3/caspase-1/GSDMD-mediated pyroptotic pathway(水素は、ROS/NLRP3/カスパーゼ-1/GSDMD介在性ピロトーシス経路を介して子宮内膜癌の増殖を抑制する)

引用元

Yang, Y., Liu, P. Y., Bao, W., Chen, S. J., Wu, F. S., & Zhu, P. Y. (2020). Hydrogen inhibits endometrial cancer growth via a ROS/NLRP3/caspase-1/GSDMD-mediated pyroptotic pathway. BMC cancer20(1), 28. https://doi.org/10.1186/s12885-019-6491-6

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