研究論文
Pilot study: Effects of drinking hydrogen-rich water on muscle fatigue caused by acute exercise in elite athletes(パイロット研究:エリートアスリートにおける急性運動による筋疲労に対する水素水飲用の効果)

アスリートにおける筋疲労に対する水素水の効果

一言まとめ

エリートサッカー選手10名を対象に運動前に水素水を摂取させたところ、プラセボ水を摂取した場合と比較して、運動後の血中乳酸値の上昇が抑制され、筋疲労による筋機能の低下が改善されることが示された 。

3分で読める詳細解説

結論

運動前の水素水摂取は、血中乳酸値の上昇を抑え、運動による筋機能の低下を改善する可能性がある。

研究の背景と目的

激しい運動を行うと、体内でエネルギー需要と酸素消費量が急増し、それに伴い「活性酸素」と呼ばれる物質が大量に発生する。この活性酸素が過剰になると酸化ストレスという状態を引き起こし、筋肉の微細な損傷や炎症、疲労の原因となることがある。これまで、酸化ストレスを軽減するために抗酸化物質のサプリメント摂取がアスリートの間で試みられてきたが、その効果は必ずしも一貫していなかった。近年、水素分子が有害な活性酸素を選択的に除去する抗酸化作用を持つことが報告されており 、様々な疾患への効果が期待されている。
そこで本研究は、アスリートが運動前に水素水を飲むことで、運動によって引き起こされる酸化ストレスや筋疲労にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • この研究は、科学的信頼性の高いクロスオーバー二重盲検試験という手法で実施された。
  • 対象者:
    • 日常的にトレーニングを行っている20.9歳(±1.3歳)の健康な男性サッカー選手10名。
    • 喫煙者や、サプリメント・医薬品を日常的に摂取している者は対象から除外された。
  • 介入方法:
  • 研究チームは、マグネシウムスティックを用いて水素を発生させる方法で水素水を生成した。この方法は以下の化学反応に基づいている。
    Mg + 2H₂O ⟶ Mg(OH)₂ + H₂
    • 水素濃度: 0.92~1.02 mM。
    • 摂取量・頻度: 運動前日と当日の朝にかけて、合計1,500mlの水素水(またはプラセボ水)を摂取した。
    • 対照群: 水素を含まないプラセボ水(PW)を摂取する期間を設け、水素水(HW)を摂取した場合の結果と比較した。
  • 評価方法:
    • 被験者は、自転車エルゴメーターを30分間漕ぐ運動と、その直後に最大筋力で膝の曲げ伸ばしを100回繰り返す運動を行った。運動の前後で複数回採血を行い、血中乳酸値、酸化ストレスの指標、クレアチンキナーゼ(CK)の値を測定した。
    • また、膝伸ばし運動中の最大トルク(筋力の指標)の変化を記録し、筋疲労の度合いを評価した。

研究結果

  • 血中乳酸値: 水素水を摂取した群では、プラセボ水を摂取した群に比べて、運動後の血中乳酸値の上昇が有意に抑制された(p<0.05)。
  • 筋機能: プラセボ水群では、膝伸ばし運動の初期段階(最初の40回)で最大トルクが有意に低下し、筋疲労が見られた。一方、水素水群ではこの初期段階での有意なトルク低下は見られず、筋機能の低下が抑制された。
  • 酸化ストレス・筋損傷マーカー: d-ROMsやBAPといった血中の酸化ストレスマーカーや、筋損傷の指標であるクレアチンキナーゼについては、両群間で統計的に意味のある差は認められなかった。
  • 考察:研究チームは、酸化ストレスマーカーに変化がなかった理由について、対象者が日頃から厳しいトレーニングを積んだエリートアスリートであり、体内の抗酸化システムが元々発達していたためではないかと考察している。
  • 限界:また、この研究は少人数を対象としたパイロット研究であるため、結果を一般化するには、より多くの被験者を対象とした大規模な研究で効果を再検証する必要があると述べている。

Appendix(用語解説)

  • 酸化ストレス:体内で過剰に発生した活性酸素によって、細胞が傷つけられる状態のこと。老化や生活習慣病、炎症など、様々な身体の不調に関与すると考えられている。
  • クロスオーバー二重盲検試験:信頼性の高い臨床試験手法の一つ。同じ参加者が、時期をずらして「水素水」と「プラセボ水」の両方を体験する 。誰がどちらを摂取しているか、参加者も研究者も知らない状態(二重盲検)で試験を進めることで、思い込みなどの心理的影響を排除し、純粋な効果を評価できる。
  • 血中乳酸値:筋肉でエネルギーが作られる際に生じる「乳酸」の血液中の濃度。強度の高い運動をすると急激に上昇し、従来は疲労の原因物質と考えられてきた。
  • 最大トルク:筋肉が発揮できる最大の回転力のこと。筋力の指標として用いられ、この数値が運動中に低下することは、筋疲労が起きていることを意味する。
  • クレアチンキナーゼ(CK):主に筋肉の細胞に含まれる酵素。激しい運動などによって筋肉が損傷すると血液中に漏れ出すため、筋損傷の度合いを示す指標として用いられる。
  • パイロット研究:本格的な研究を行う前に、その計画の実現可能性や問題点を探るために行われる小規模な予備研究のこと。

論文情報

タイトル

Pilot study: Effects of drinking hydrogen-rich water on muscle fatigue caused by acute exercise in elite athletes(パイロット研究:エリートアスリートにおける急性運動による筋疲労に対する水素水飲用の効果)

引用元

Aoki, K., Nakao, A., Adachi, T., Matsui, Y., & Miyakawa, S. (2012). Pilot study: Effects of drinking hydrogen-rich water on muscle fatigue caused by acute exercise in elite athletes. Medical gas research2, 12. https://doi.org/10.1186/2045-9912-2-12

専門家のコメント

まだコメントはありません。

この記事は役に立ちましたか?

役に立ったら、下のボタンで教えてください。

関連記事

新着記事
おすすめ
PAGE TOP
ログイン

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

お友だち追加

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

LINEお友だち追加

この記事の目次