一言まとめ
健康な成人76名を対象とした6つの研究を分析した結果、水素分子の補給は運動後の酸化ストレスレベルを直接的には軽減しないが、抗酸化能力を有意に向上させ、特に間欠運動においてその効果が顕著であることが明らかになった。
3分で読める詳細解説
結論
水素分子の補給は、健康な成人の運動誘発性の酸化ストレスマーカー上昇を直接抑制しないが、抗酸化能力を高める可能性がある。
研究の背景と目的
運動は活性酸素種を生成し、過度な酸化ストレスは筋疲労や損傷、炎症を引き起こす可能性がある。従来の抗酸化サプリメント(ビタミンCやEなど)には筋力低下や運動適応の阻害といった副作用が報告されている。水素分子は選択的に有害な活性酸素のみを除去する新しい抗酸化物質として注目されているが、運動誘発性酸化ストレスに対する効果は研究によって相反する結果が報告されている。本研究は、健康な成人における水素分子補給の運動誘発性酸化ストレスへの影響を定量的に評価することを目的とした。
研究方法
5つのデータベース(PubMed、Web of Science、Medline、SportDiscus、PsycINFO)から2024年2月まで の文献を検索し、健康な成人を対象とした無作為化対照試験を選定した。最終的に6つの研究(7つの実験)、総計76名の参加者が分析に含まれた。
研究結果
Appendix(用語解説)
- 酸化ストレス:体内で活性酸素の生成と抗酸化防御のバランスが崩れ、活性酸素が過剰になった状態
- d-ROMs(ジアクロン反応性酸素代謝物):血液中の酸化ストレスレベルを測定する指標
- BAP(生物学的抗酸化能):血液中の抗酸化能力を測定する指標
- メタ分析:複数の研究結果を統計的に統合し、より信頼性の高い結論を導く分析手法
- 間欠運動:高強度の運動と休息を交互に繰り返す運動形態(HIITなど)
- 標準化平均差(SMD):異なる研究間で結果を比較するために用いられる統計的指標
論文情報
タイトル
Can molecular hydrogen supplementation reduce exercise-induced oxidative stress in healthy adults? A systematic review and meta-analysis(健康な成人における運動誘発性の酸化ストレスを水素分子の補給は軽減できるか?系統的レビューとメタ分析)
引用元
Li, Y., Bing, R., Liu, M., Shang, Z., Huang, Y., Zhou, K., Bao, D., & Zhou, J. (2024). Can molecular hydrogen supplementation reduce exercise-induced oxidative stress in healthy adults? A systematic review and meta-analysis. Frontiers in nutrition, 11, 1328705. https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1328705
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