フォン・ヒッペル・リンドウ病

フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)は、常染色体優性遺伝性疾患であり、日本国内では約200家系の発症が推定されています。この病気は、体内の様々な臓器に腫瘍が発生することが特徴です。

主な腫瘍の発生部位は以下の通りです:

  • 脳や脊髄の血管腫(良性)
  • 網膜の血管腫(良性)
  • 腎細胞癌(悪性)
  • 副腎褐色細胞腫(良性)
  • 膵臓腫瘍(悪性)
  • 精巣上体腫瘍(良性)

これらの腫瘍は、多発性で再発を繰り返し、生涯にわたって発症します。良性腫瘍である脳脊髄の血管腫は、四肢の麻痺を引き起こし、生活の質(QOL)を低下させます。副腎褐色細胞腫は、高血圧発作などの症状を示します。

一方、悪性腫瘍である腎細胞癌と膵臓腫瘍は、他の臓器やリンパ節に転移し、死亡原因となることがあります。

VHL病の発症年齢は、3〜4歳から50代まで幅広く、国内の患者数は600〜1,000名程度と推定されています。
原因は、染色体3番短腕25-26領域にあるVHL病癌抑制遺伝子の異常によるものです。遺伝子異常には多様性があり、その異常と病態の関連性については十分に解明されていません。一部の発症メカニズムとして、遺伝子機能の欠失により、血管新生因子を誘導するタンパク質(HIF: Hypoxia Inducible Factor)が過剰に蓄積し、腫瘍形成に至ると考えられています。

しかし、その他の発症原因や過程については、まだ確定的な知見は得られていません。

VHL病患者の多くは、頻回の腫瘍摘出手術を受けており、その結果、様々な身体的障害を抱えています。例えば、網膜腫瘍手術による失明、脳脊髄手術による四肢麻痺や下肢麻痺、腎臓癌手術後の腎機能不全、精巣上体腫瘍摘出後の不妊症などが挙げられます。また、多数の手術(Polysurgery)を受けることによる精神的ストレスから、生活の質の低下も指摘されています。
治療法としては、全ての腫瘍に対して、腫瘍摘出術や臓器摘出術が行われます。網膜の血管腫に対しては、レーザー焼灼術が適用される場合もあります。脳腫瘍については、ガンマナイフを用いた治療も行われますが、その治療成績については明確なデータがありません。

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