研究論文
腫瘍学における酸素水素混合ガスの治療可能性

腫瘍学における酸素水素混合ガスの治療可能性

一言まとめ

EBウイルス感染B細胞株(TK6細胞)を用いて、酸素水素混合ガス(水素66%、酸素33%)を培養液に溶解させた際の抗腫瘍効果を検証した結果、酸素水素混合ガス処理により、TK6細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導が確認された。

3分で読める詳細解説

結論

酸素水素混合ガスは悪性B細胞のアポトーシスを促進することで細胞数を減少させ、がん治療に有望である可能性が示唆された。

研究の背景と目的

リンパ球がEBウイルスに感染することに関連するがんは、世界のがん症例の1.5%程度にあたる。具体的には、EBウイルス感染によって、乳がん、胃がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫などのがんに進展することがある。酸素水素ガスは水の電気分解によって生成される混合物であり、水素の抗炎症、抗酸化作用から腫瘍に効果的との報告がある。そのため、本研究では、EBウイルスによって不死化したBリンパ芽球の複製能力に、酸素水素混合ガスがどのような影響を与えるかを評価することを目的とした。

研究方法

EBウイルスによって不死化させたBリンパ芽球(TK6細胞)を含む細胞培養液に、酸素水素ガスを、1〜複数回直接注入し、細胞係数を調べた。また、増殖を刺激する物質を添加し、初回の反応が反復されるか傾向を比較分析で調査した。さらに、細胞周期に関する影響をフローサイトメトリーで分析した。

研究結果

  • TK6細胞の複製抑制の初期傾向が、24時間及び48時間時点でみられた。
  • 酸素水素混合ガス(H2:66%, O2:33%)が単回注入された培養液では、対照群に比べて24時間、48時間、及び72時間で低下傾向を示したが有意差はなかった。
  • 酸素水素混合ガス(H2:66%, O2:33%)が毎日注入された培養液では、対照群に比べて24時間及び48時間で有意に抑制されたが、72時間では有意差はなかった。
  • 増殖刺激物質を添加した細胞では、酸素水素混合ガス投与群において対照群と比較して24時間時点で有意に増殖が減少された。
  • 増殖刺激物質を添加された物質では、48時間、及び72時間でも抑制の傾向が観察されたものの、これは統計的には有意ではなかった。
  • 分析では、酸素水素混合ガス投与群において24時間及び48時間時点でのSub G1期の細胞の割合の有意な増加と、増殖の顕著な減少が示された。(Sub G1期の細胞は、G1期, G2期, 合成期よりDNA含有量が低くアポトーシスに関連していると考えられる)

Appendix(用語解説)

  • EBウイルス:ヘルペスウイルスの一種。様々ながんの発症に関与。
  • TK6細胞:EBウイルス感染により不死化したヒトBリンパ球細胞株。がん抑制遺伝子p53を発現。
  • アポトーシス:プログラムされた細胞死。がん細胞の排除に重要。
  • マイトジェン:免疫細胞を活性化する物質。ConA(コンカナバリンA)は代表的なマイトジェン。
  • 細胞周期:細胞分裂の周期。G1期(分裂準備期)→S期(DNA合成期)→G2期(分裂準備期)→M期(分裂期)の順に進行。

論文情報

タイトル

The Therapeutic Potential of Oxyhydrogen Gas in Oncology: A Study on Epstein–Barr Virus-Immortalised B-Lymphoblastoid (TK6) Cells(腫瘍学における酸素水素混合ガスの治療可能性ーEBウイルス感染によって不死化したB細胞に関する研究)

引用元

Russell, G., Thomas, A. D., Nenov, A., Mannings, G., & Hancock, J. T. (2023). The Therapeutic Potential of Oxyhydrogen Gas in Oncology: A Study on Epstein–Barr Virus-Immortalised B-Lymphoblastoid (TK6) Cells. Hydrogen, 4(4), 746-759. https://doi.org/10.3390/hydrogen4040047

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

本研究は、酸素水素混合ガス吸入が抗腫瘍効果を発揮することを示唆するものです。サブG1期の細胞の大幅な増加は、アポトーシス細胞の残骸を反映した断片化DNAを反映していると考えられます。つまり、酸素水素混合ガスの投与によって、不死化したB細胞の細胞増殖が抑制され、アポトーシスが誘導されていることが示されています。類似の研究で、様々な水素ガス濃度で細胞生存率を比較した実験結果があり、水素濃度60 – 80%で細胞生存率が大幅に低下することが報告されています。これらの結果から、動物実験を含む in vivo な研究でも水素の有効性を支持する報告が期待されます。

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