研究論文
水素吸入はオミクロン型SARS-CoV-2 変異株感染の回復を促進する

水素吸入が新型コロナオミクロン株からの回復を促進

一言まとめ

多施設無作為化比較試験で64人のSARS-CoV-2オミクロン株感染者を対象に、水素/酸素混合ガス吸入が回復を促進するかを検討した結果、ウイルス排出期間の短縮、炎症性サイトカインの低下、リンパ球数の増加、肺病変の改善傾向が見られ、水素吸入の有益性が示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入によってSARS-CoV-2オミクロン株の回復が促進された。

研究の背景と目的

COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は変異を繰り返しており、2021年12月以降はオミクロン株が主流となっている。水素ガスは強力な抗酸化作用を持ち、COVID-19患者の呼吸器症状改善に有益である可能性が示唆されているが、オミクロン株感染に対する効果は不明である。そこで本研究では、オミクロン株感染者の回復促進における水素/酸素混合ガス吸入の有効性と安全性を検討した。

研究方法

  • 7施設に入院中のCOVID-19患者64名(18-80歳、男女)を対象とした多施設無作為化比較試験。
  • 水素/酸素吸入群(32名)と酸素吸入群(32名)に無作為に割り付け。
  • 水素/酸素吸入群:標準治療に加え、3L/分の水素/酸素混合ガスを1日7時間以上、鼻カニューレで吸入。
  • 酸素吸入群:標準治療と酸素吸入のみ。
  • 主要評価項目:SARS-CoV-2の排出期間
  • 副次評価項目:SARS-CoV-2陰性化率、炎症マーカー(CRP、IL-6、リンパ球数など)、CT画像所見
  • 1日目、3日目、5日目に臨床症状、検査所見、CT画像を評価。

研究結果

  • 水素/酸素吸入群のウイルス排出期間は酸素群より短い傾向(3.3日 vs 4.1日)。
  • 5日目までのオミクロン株陰性化率は水素/酸素群87.5%、酸素群75%。10日目には水素/酸素群100%、酸素群93.8%が陰性化。
  • 水素/酸素吸入により、IL-6は22.8%減少(酸素群はわずかに増加)。
  • リンパ球数は3日目に61.1%増加し5日目も増加持続(酸素群より顕著)。
  • 肺病変の改善度は水素/酸素群でより高い傾向だが有意差なし。
  • 有害事象は1例の発熱のみで、水素/酸素吸入との因果関係は否定的。

Appendix(用語解説)

  • SARS-CoV-2:重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2。COVID-19の原因ウイルス。
  • オミクロン株:2021年11月に南アフリカで初めて検出されたSARS-CoV-2の変異株。感染力が非常に強い。
  • 鼻カニューレ:鼻腔内に挿入して使用する医療用の酸素吸入器具。
  • IL-6:インターロイキン6。炎症性サイトカインの一種。
  • 抗酸化作用:活性酸素を除去し、細胞や組織の酸化ストレス障害を軽減する作用。

論文情報

タイトル

The efficacy of hydrogen/oxygen therapy favored the recovery of omicron SARS-CoV-2 variant infection: results of a multicenter, randomized, controlled trial(水素/酸素療法はオミクロン型SARS-CoV-2変異株感染の回復を促進する:多施設無作為化比較試験の結果)

引用元

Shi, M. M., Chen, Y. T., Wang, X. D., Zhang, Y. F., Cheng, T., Chen, H., Sun, F., Bao, H., Chen, R., Xiong, W. N., Song, Y. L., Li, Q. Y., & Qu, J. M. (2023). The efficacy of hydrogen/oxygen therapy favored the recovery of omicron SARS-CoV-2 variant infection: results of a multicenter, randomized, controlled trial. Journal of clinical biochemistry and nutrition73(3), 228–233. https://doi.org/10.3164/jcbn.23-32

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

本研究では水素吸入が、COVID-19の改善に寄与する可能性が示されています。結果として副作用なく炎症マーカーの改善を認めた他、パンデミックを防ぐ観点からウイルス排出期間を有意に減少させたことは注目すべきことです。画像所見については、組織の変化が反映されるため、採血結果よりも改善に時間がかかることが多く、観察期間を延長すると差が出るかもしれません。サンプル数を増やしたり、重症例での研究等が待たれますが、さらなる研究に期待が高まります。

この記事は役に立ちましたか?

役に立ったら、下のボタンで教えてください。

関連記事

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

お友だち追加

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

LINEお友だち追加

この記事の目次