研究論文
代謝性疾患における水素の治療効果

代謝性疾患における水素分子の治療効果

一言まとめ

水素は、抗酸化作用や抗炎症作用などの多面的な作用により、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝、動脈硬化、肥満などの代謝性疾患の予防や治療に有効である可能性が示されている。

3分で読める詳細解説

結論

水素は抗酸化作用をはじめとした種々の作用を通じて、代謝性疾患を治療できる可能性がある。

研究の背景と目的

糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、肥満といった代謝性疾患の病態形成には酸化ストレスや慢性炎症が深く関与している。近年、分子状水素(H2)の様々な疾患に対する治療効果が注目されており、本総説では代謝性疾患に対するH2の効果とその作用機序について最新の知見を概説することを目的とした。

研究方法

代謝性疾患に対するH2の効果を検討した前臨床試験および臨床試験の論文を幅広く収集し、H2の投与方法、濃度、期間などの因子と治療効果の関連を精査した。またH2の作用メカニズムに関する研究成果も網羅的にレビューした。

研究結果

  • 糖尿病モデル動物を用いた研究から、H2は高血糖、インスリン抵抗性、膵β細胞障害を改善し、合併症の進展も抑制することが示された。臨床試験でも、H2水の飲用により2型糖尿病患者の血糖コントロールが改善した。
  • 動脈硬化モデルマウスへのH2投与は、酸化ストレスや炎症を軽減し、プラーク安定化をもたらした。
  • H2は脂肪肝モデル動物の肝脂肪蓄積、炎症、線維化を抑制し、肥満マウスの体重増加や脂質代謝異常も改善した。
  • H2の主な作用機序として、ヒドロキシルラジカル消去などの抗酸化作用、Nrf2/HO-1経路の活性化、NF-κBシグナル抑制を介した抗炎症作用、アポトーシス関連分子の制御、小胞体ストレス緩和、オートファジー誘導、ミトコンドリア機能向上、腸内細菌叢の調節などが示された。
  • H2の治療効果は、投与濃度が高いほど、治療期間が長いほど顕著であった。一方、対象疾患の重症度によっても効果に差がみられた。
  • 水素濃度や治療期間、治療の介入時期、代謝性疾患の重症度などの因子が治療効果に影響を与えるため、今後詳細な検討が必要である。
  • 水素を利用した治療法の臨床試験を積み重ねていき、将来的に診療に応用されることが期待される。

Appendix(用語解説)

  • 前臨床試験:ヒトでの臨床応用に先立ち、実験動物やヒトの組織・細胞を用いて医薬品の有効性と安全性を確認する試験。
  • Nrf2/HO-1経路:酸化ストレス応答の中心的役割を果たす転写因子Nrf2とその下流で発現誘導されるHO-1の経路。抗酸化酵素の発現を亢進し細胞保護作用を示す。
  • NF-κB:炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を制御する転写因子。過剰な活性化は慢性炎症を引き起こす。
  • 小胞体ストレス:小胞体の機能異常に伴うタンパク質の凝集・蓄積などのストレスのこと。慢性炎症や細胞死の原因となる。
  • オートファジー:細胞内の不要物を分解・除去する機構。細胞内の恒常性維持に重要。

論文情報

タイトル

Therapeutic Potential of Molecular Hydrogen in Metabolic Diseases from Bench to Bedside(代謝性疾患における分子状水素の治療効果:基礎研究から臨床応用へ)

引用元

Xie, F., Song, Y., Yi, Y., Jiang, X., Ma, S., Ma, C., Li, J., Zhanghuang, Z., Liu, M., Zhao, P., & Ma, X. (2023). Therapeutic Potential of Molecular Hydrogen in Metabolic Diseases from Bench to Bedside. Pharmaceuticals (Basel, Switzerland), 16(4), 541. https://doi.org/10.3390/ph16040541

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