研究論文
再灌流療法の補助療法としての水素吸入

再灌流療法の補助療法としての水素吸入

一言まとめ

20名のSTEMI患者に対して水素吸入(1.3%水素+26%酸素)を行ったところ、対照群と比較して、急性心筋梗塞患者の虚血再灌流療法において、心筋救助指数は改善しなかったが、LVSVI, LVEFは有意に改善した。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、急性心筋梗塞の虚血再灌流療法において、心筋救助指数を改善しなかったがLVSVIとLVEFを有意に改善した。

研究の背景と目的

急性心筋梗塞後の再灌流療法は最終的な梗塞巣のサイズを小さくする上で有益と考えられている。一方で、再灌流傷害として心筋に与えるダメージも指摘されており、日々これを軽減する方法が模索されている。

水素吸入は、抗酸化ストレス、抗炎症作用、抗アポトーシス作用、代謝への作用によって有益な治療効果を発揮するとされ、心筋の再灌流傷害にも有用な可能性がある。具体的には、ラットの心臓虚血再灌流損傷モデルにおいて梗塞巣のサイズを減少させたとの報告がある。本研究は、AMI 患者における水素吸入の効果をヒトを対象として検討することを目的に行うものである。

研究方法

本研究は、単施設、前向き、オープンラベル、単盲検研究である。
20名の初発STEMI患者を水素吸入群(水素1.3%+酸素26%)と対照群(酸素26%)とに割り付けて比較検討した。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時に治療ガスを吸入し、主要評価項目は、心筋救助指数とした。副次評価項目は、PCI から7日後と6ヶ月後の左室収縮末期容量指数(LVESVI)、左室拡張末期容量指数(LVEDVI)、左室一回拍出係数(LVSVI)及び左室駆出率(LVEF)の変化、myocardial brush grade (MBG)、12誘導心電図のSTセグメント上昇の解消、クレアチニンキナーゼの最高値が設定された。

研究結果

  • 水素吸入に関連した重篤な有害事象はなく、安全性が確認された。
  • 心臓MRI検査によって測定された心筋救助指数に両群間で有意差はなかった。
  • 副次的な結果のうち、血管造影心筋ブラッシュアップスコア、12誘導心電図のSTセグメントの上昇の解消、クレアチニンキナーゼの最高値においては有意差がなかった一方で、副次的な評価項目のうち、左室収縮末期容量指数と左室駆出率が水素吸入群で有意に増加したが、対照群では変化がなかった。
  • 本研究は症例数が少なく、統計学的検出力が不足していた点が限界として挙げられた。

Appendix(用語解説)

  • STEMI:ST上昇型心筋梗塞。心電図でST部分の上昇が特徴的に見られる急性心筋梗塞の一種。冠動脈の完全閉塞により心筋への血流が途絶え、心筋壊死が生じる。
  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI):カテーテルを用いて冠動脈の狭窄や閉塞部位を拡張し、血流を回復させる治療法。急性心筋梗塞の再灌流療法として広く用いられている。
  • 左室収縮末期容量指数(LVESVI):左心室の収縮末期(心臓が最も収縮した時点)の容量を体表面積で補正した指標。左心室の収縮機能を反映する。
  • 左室拡張末期容量指数(LVEDVI):左心室の拡張末期(心臓が最も拡張した時点)の容量を体表面積で補正した指標。左心室の拡張機能を反映する。
  • 左室一回拍出係数(LVSVI):左心室が1回の収縮で拍出する血液量を体表面積で補正した指標。左心室の収縮機能を反映する。
  • 左室駆出率(LVEF):左心室の拡張末期容量に対する一回拍出量の割合。左心室の収縮機能を反映し、心機能の重要な指標の一つ。
  • クレアチニンキナーゼ:心筋や骨格筋に多く含まれる酵素。心筋梗塞などで心筋が傷害されると血中に逸脱するため、心筋傷害の指標として用いられる。

論文情報

タイトル

Translational Study of Hydrogen Gas Inhalation as Adjuncts to Reperfusion Therapy for Acute Myocardial Infarction(急性心筋梗塞に対する再灌流療法の補助療法としての水素ガス吸入の研究)

引用元

Asanuma, H., & Kitakaze, M. (2017). Translational Study of Hydrogen Gas Inhalation as Adjuncts to Reperfusion Therapy for Acute Myocardial Infarction. Circulation journal : official journal of the Japanese Circulation Society81(7), 936–937. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-17-0520

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

本研究では、20名のSTEMI患者を対象とした実験結果を報告しています。ヒトを対象とした本研究モデルでは、残念ながら心筋救助指数に有意差はありませんでしたが、心機能を反映した値であるLVSVIとLVEFの改善を認めました。心筋救助指数に有意差が出なかった理由については、そもそものラットとヒトの生物間での水素に対する反応の違いの他、水素吸入の投与量や投与時間等の設定が適切でなかった可能性もあります。水素吸入が虚血再灌流療法の際の心機能改善に一定の効果を示したことは評価でき、今後のさらなる研究に期待が高まります。

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