研究論文
水素治療で放射線誘発性酸化ストレスのリスク低減

水素治療で放射線誘発性酸化ストレスのリスク低減

一言まとめ

宇宙飛行士の宇宙放射線被ばくによる酸化ストレス障害に対し、水素分子の吸入や水素水の飲用が予防・治療法として有望である可能性を示唆した総説論文。

3分で読める詳細解説

結論

水素分子は強力な抗酸化・抗炎症作用を有するため、宇宙放射線による酸化ストレス障害を予防・治療できる可能性がある。

研究の背景と目的

宇宙飛行士は宇宙放射線被ばくにより酸化ストレスが増大し、がんや白内障、中枢神経障害などのリスクが高まる。一方、水素分子は選択的に強力な酸化物質を除去する抗酸化作用を持つことが近年明らかになってきた。そこで本総説では、宇宙放射線障害に対する水素分子の予防・治療応用の可能性について考察した。

研究方法

宇宙放射線の健康リスクと酸化ストレスの関連、水素分子の生物学的作用、水素分子の医学応用に関する文献レビューを行い、仮説を提示した。

研究結果

  • 宇宙放射線被ばくは活性酸素種の産生を介して酸化ストレスを増大させ、DNA損傷や脂質過酸化を引き起こす。
  • 水素分子はヒドロキシルラジカル・ペルオキシ亜硝酸を選択的に除去する抗酸化作用を持つ。
  • 水素分子は抗酸化酵素の活性を高める可能性もある。
  • 水素ガス吸入(49%水素ガス)の安全性は、深海ダイビングの研究で示されている。
  • 水素水の飲用は健常人でも副作用は見られていない。
  • 放射線照射前の培養細胞・マウスへの水素投与により、放射線障害が軽減された。
  • 以上より、宇宙飛行士が水素ガスを吸入したり水素水を飲用することで、宇宙放射線による酸化ストレス障害を予防・治療できる可能性がある。ただし実際の有効性と安全性の検証にはさらなる研究が必要である。

Appendix(用語解説)

  • 活性酸素種: 酸素に由来する反応性の高い分子。ヒドロキシルラジカル、ペルオキシ亜硝酸など。
  • 脂質過酸化: 活性酸素種により脂質が酸化されること。細胞膜の損傷などを引き起こす。
  • ヒドロキシルラジカル: 最も反応性の高い活性酸素種の一つ。
  • ペルオキシ亜硝酸: 活性酸素種の一つ。タンパク質の損傷を引き起こす。

論文情報

タイトル

Hydrogen therapy may reduce the risks related to radiation-induced oxidative stress in space flight(水素治療は宇宙飛行における放射線誘発性酸化ストレスのリスクを減らす可能性がある)

引用元

Schoenfeld, M. P., Ansari, R. R., Zakrajsek, J. F., Billiar, T. R., Toyoda, Y., Wink, D. A., & Nakao, A. (2011). Hydrogen therapy may reduce the risks related to radiation-induced oxidative stress in space flight. Medical hypotheses76(1), 117–118. https://doi.org/10.1016/j.mehy.2010.08.046

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