研究論文
水素ガス吸入は急性衝撃騒音外傷を軽減する

水素吸入が急性音響外傷を軽減

一言まとめ

衝撃騒音曝露後に水素吸入を行うことで、有毛細胞を保護し、急性音響外傷を軽減することが動物実験で示された。

3分で読める詳細解説

結論

衝撃騒音曝露後に水素吸入を行うことで、急性音響外傷を軽減することができる。

研究の背景と目的

騒音性難聴は今なお重大な職業性健康被害の一つである。過度の音響曝露は内耳の有毛細胞などに酸化ストレスや炎症を引き起こし、難聴の原因となる。水素は抗酸化・抗炎症作用を持つガス状物質で、様々な酸化ストレス関連疾患に効果が報告されている。本研究は、衝撃音曝露直後の水素ガス吸入が急性音響外傷を軽減できるかを動物実験で検証した。

研究方法

26匹のモルモットを無作為に3群に分けた。

  • Noise群(11匹):衝撃音のみ曝露
  • Noise+H2群(10匹):衝撃音曝露直後に水素吸入
  • H2群(5匹):水素のみ吸入

衝撃音はモルモットの片耳に400回、156dBSPLで曝露した。水素吸入は2%、500ml/分で1時間行った。各群で衝撃音・水素曝露前後の聴性脳幹反応(ABR)閾値と曝露4日後の有毛細胞数を比較した。

研究結果

  • Noise群とNoise+H2群ではすべての周波数でABR閾値が上昇(聴力低下)したが、Noise+H2群の閾値上昇はNoise群より有意に小さかった。
  • 外有毛細胞損失率は、Noise群で基底部53%・中央部8.8%・頂部14%、Noise+H2群で基底部22%・中央部3.5%・頂部1.2%だった。
  • 内有毛細胞損失率は、Noise群で基底部14%・中央部0.1%・頂部3.5%、Noise+H2群で基底部2.8%・中央部0%・頂部0%だった。
  • 外有毛・内有毛細胞とも、頂部と基底部でNoise+H2群の方が損失率が有意に低かった。
  • 以上から、衝撃音曝露直後の水素吸入は内耳有毛細胞の損失を抑制し、急性音響外傷の程度を軽減することが示唆された。
  • 水素の効果は抗酸化・抗炎症作用によるものと推察される。

Appendix(用語解説)

  • 聴性脳幹反応(ABR):音刺激に対する脳幹の電気的反応。聴力の他覚的評価に用いられる。
  • 有毛細胞:内耳蝸牛管にある音を電気信号に変換する細胞。内有毛細胞と外有毛細胞に分けられる。
  • 酸化ストレス:活性酸素種の過剰によって引き起こされる細胞障害のこと。
  • 基底部・中央部・頂部:蝸牛管の部位による区分。基底部は高音、頂部は低音に対応する。

論文情報

タイトル

Hydrogen Gas Inhalation Attenuates Acute Impulse Noise Trauma: A Preclinical In Vivo Study(水素ガス吸入は急性衝撃騒音外傷を軽減する:前臨床in vivo研究)

引用元

Videhult Pierre, P., Fransson, A., Kisiel, M. A., & Laurell, G. (2023). Hydrogen Gas Inhalation Attenuates Acute Impulse Noise Trauma: A Preclinical In Vivo Study. The Annals of otology, rhinology, and laryngology132(8), 865–872. https://doi.org/10.1177/00034894221118764

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

水素分子の耳機能への保護的作用に関する報告はいくつかあり、放射線療法後の伝音難聴、感音難聴の軽減、in vitroでの有毛細胞の保護作用などが報告されていました。本研究は、in vivoの研究で、水素吸入によって騒音による急性音響外傷が軽減したと報告されています。有毛細胞は基本的に再生しないため、騒音曝露に際しては、ダメージを受けた有毛細胞を完全に損傷させないことが重要です。今回の研究結果からは効果的に騒音による難聴が軽減されていることが示唆されたといえます。今後ヒトでのさらなる研究が待たれます。

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