研究論文
肝毒性に対する水素分子の防御効果

肝毒性に対する水素分子の防御効果

一言まとめ

ラットにクロルピリホスを8週間投与し、水素水の同時摂取により、肝機能障害や酸化ストレスが軽減されるかを調べた結果、水素水の摂取により、肝機能マーカーの改善、酸化ストレス指標の正常化、酸化ストレス関連遺伝子発現の変化が見られ、水素の肝保護効果が示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素水の摂取により、クロルピリホス(CPF)によって引き起こされるラットの肝障害や酸化ストレスが軽減され、水素の抗酸化作用と、ミトコンドリアを介した保護メカニズムの関与が示唆された。

研究の背景と目的

有機リン系殺虫剤の一種であるクロルピリホス(CPF)は、酸化ストレスを介して肝臓などの臓器に毒性を引き起こすことが知られている。一方、水素分子は選択的に細胞毒性の高いヒドロキシルラジカルを除去する新しい抗酸化物質として注目されている。本研究では、CPFによる肝毒性に対する水素水摂取の保護効果とそのメカニズムを調べることを目的とした。

研究方法

ラットを3群に分け、8週間にわたり、(1)コントロール群:コーン油のみ投与、(2)CPF群:CPFを6.75mg/kg/dayで経口投与、(3)水素水群:CPF投与ラットに水素水を1日2回経口摂取させた。肝機能の生化学的指標、酸化ストレス指標(SOD、CAT活性、GSH、MDA濃度)、肝組織の病理学的・超微細構造的変化を分析した。また、酸化ストレス関連遺伝子の発現変動をPCRアレイで網羅的に解析した。

研究結果

  • CPF曝露により、肝機能の指標であるALT、AST、ALP活性が有意に上昇したが、水素水摂取によりALPとASTの上昇が抑制された。
  • 病理組織学的にも、CPFによる肝細胞の変性・壊死が水素水摂取で軽減された。
  • CPFはSOD活性の低下とMDA濃度の上昇を引き起こしたが、水素水摂取によりこれらの酸化ストレス指標が改善された。
  • PCRアレイの結果、CPFにより12の酸化ストレス関連遺伝子発現が変動したが、そのうち8つがミトコンドリアのSod2遺伝子を含め水素水摂取で有意に改善された。
  • 電子顕微鏡観察から、CPFによるミトコンドリア障害が水素水摂取で軽減されることが示された。

Appendix(用語解説)

  • 酸化ストレス:活性酸素種の過剰産生と抗酸化システムの不均衡により引き起こされる状態。細胞や組織の損傷を引き起こす。
  • SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):活性酸素種の一つであるスーパーオキシドラジカルを分解する抗酸化酵素。
  • MDA(マロンジアルデヒド):細胞膜の脂質過酸化により生成される物質。酸化ストレスの指標の一つ。
  • ミトコンドリア:細胞内小器官の一つ。ATP合成など重要な機能を担う一方、酸化ストレスによる障害を受けやすい。

論文情報

タイトル

Protective effects of molecular hydrogen on hepatotoxicity induced by sub-chronic exposure to chlorpyrifos in rats(ラットにおけるクロルピリホスの亜慢性曝露により誘発される肝毒性に対する水素分子の防御効果)

引用元

Xun, Z. M., Xie, F., Zhao, P. X., Liu, M. Y., Li, Z. Y., Song, J. M., Kong, X. M., Ma, X. M., & Li, X. Y. (2020). Protective effects of molecular hydrogen on hepatotoxicity induced by sub-chronic exposure to chlorpyrifos in rats. Annals of agricultural and environmental medicine : AAEM, 27(3), 368–373. https://doi.org/10.26444/aaem/125504

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