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研究報告

水素吸入後の臓器への水素分布

更新日:2026/02/11
Hydrogen gas distribution in organs after inhalation: Real-time monitoring of tissue hydrogen concentration in rat(吸入後の臓器への水素分布:ラット組織内水素濃度のリアルタイムモニタリング)
ラットに3%の水素吸入を継続的に行い、各臓器における水素の濃度変化をリアルタイムで測定した結果、水素濃度の上昇速度や最大濃度は臓器ごとに異なり、肝臓で最も高く、筋肉では飽和に最も時間がかかった。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素の臓器内濃度は臓器ごとに大きく異なり、肝臓で最も高くなる。

研究の背景と目的

水素分子は医療用途での治療効果が注目されており、特に抗酸化作用や抗炎症作用によって心筋梗塞や腎障害などへの治療効果が期待されている。しかし、水素が実際に体内でどのように分布し、臓器ごとにどの程度蓄積するのかについては詳しく知られていなかった。そこで本研究では、ラットの体内での水素濃度の経時的変化を各臓器で測定し、その分布の特徴を明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • 対象:8週齢のSprague-Dawleyラット(250-270g)
  • 介入方法:
    • 3%水素ガスを0.2L/分の流量で継続吸入
    • 高感度水素マイクロセンサーを用いて、対象臓器における水素濃度をリアルタイムで測定
    • 測定は0.5秒間隔で記録
  • 評価方法:
    • 脳、肝臓、腎臓、腸間膜脂肪組織、大腿筋の5つの臓器における水素濃度曲線を測定
    • 各臓器(n = 4-8)について、最大濃度(Cmax)、飽和するまでの時間(Tsat)、濃度が最大値の10%(T10)、63%(T63)、90%(T90)に達するまでの時間を算出

研究結果

  • 主要な結果:
    • 最高濃度 (Cmax):
      • 肝臓で最も高く(平均 29.0 ± 2.6 µmol/L)、腎臓で最も低かった(平均 18.0 ± 2.2 µmol/L)。
      • 肝臓と腎臓の間 (P=0.03)、および肝臓と筋肉の間 (筋肉の平均 18.4 ± 1.7 µmol/L, P=0.04) で、統計的に有意な差が見られた。
      • 全体として、水素の最高濃度は臓器によって有意に異なった (P=0.02またはP=0.03)。
    • 飽和到達時間 (Tsat):
      • 大腿筋(平均約20.1分)は、他の臓器(脳6.3分、肝臓7.8分、腎臓8.2分、腸間膜脂肪9.4分)と比較して、飽和に達するまでの時間が有意に長かった(全ての比較で P=0.004)。
    • 濃度上昇の速さ (T10, T63, T90):
      • 最高濃度の10%, 63%, 90%に到達する時間も、筋肉で他の臓器より有意に時間がかかっていた(例: T90は筋肉14.4分に対し、他臓器は3.6~5.7分、P=0.01)。
      • 脳、肝臓、腎臓、腸間膜脂肪の間では、飽和に至るまでの水素濃度の上昇パターンに大きな違いは見られなかった。
    • 初期の濃度上昇 (Tzero):
    • 吸入開始後、最初に濃度が検出され始めるまでの時間(最高濃度の3%に達する時間)は、全ての臓器間で同程度だった(筋肉1.0分 vs 他臓器0.4-0.6分、P=0.06)。
    • 各臓器において、水素濃度は吸入を停止するとすぐにベースラインへ戻った。(10分前後)
  • 考察:
    • 筋肉で水素濃度が飽和するまでに時間がかかるのは、筋肉への血流量が他の臓器(特に脳、肝臓、腎臓)に比べて少ないためと考えられる。これは、吸入された水素が肺で血液に溶け込み、単純なガスの拡散だけでなく、血流に乗って全身に運ばれることを強く示唆する。
    • 一方で、吸入開始からごく初期の濃度上昇が見られるまでの時間(Tzero)が全臓器でほぼ同じだったことは、血流による輸送モデルを支持する。動脈血はほぼ同時に各臓器へ到達するため、拡散距離に依存するモデルとは異なる結果となった。
    • 肝臓で観察された最高濃度(約29 µmol/L)が、吸入した3%水素ガスの水中での飽和濃度(約22.1 µmol/L)よりも高かった点は興味深い。これは、肝臓にグリコーゲンなどの形で水素が一時的に蓄積された可能性を示唆している。
    • 過去の研究との結果の違いは、測定方法(本研究では生体内でのリアルタイム連続測定)に起因する可能性がある。水素は拡散しやすいため、正確な動態を知るには生体内での連続測定が重要である。
  • 研究の限界:
    • 本研究は3%水素ガスの吸入のみを対象としており、他の濃度や投与方法(水素水飲用など)では体内動態が異なる可能性がある。
    • 動脈血中の水素濃度が測定されておらず、血流を介した分布に関する仮説は直接的な証明はされていないこと。
    • 水素濃度が負の値を示す誤差が一部で生じた(脳など)。これはセンサーの電気信号が温度や組織の揺れなどに影響されたためと推測される。

Appendix(用語解説)

  • 飽和:一定の条件下で最大の濃度に達し、それ以上は増加しなくなる状態。
  • 抗酸化作用:活性酸素などの酸化物質を中和または除去する作用。細胞のダメージを抑える効果がある。
  • グリコーゲン:主に肝臓や筋肉でエネルギー源として貯蔵される糖質(多糖類)の一種。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas distribution in organs after inhalation: Real-time monitoring of tissue hydrogen concentration in rat(吸入後の臓器への水素分布:ラット組織内水素濃度のリアルタイムモニタリング)

引用元

Yamamoto, R., Homma, K., Suzuki, S., Sano, M., & Sasaki, J. (2019). Hydrogen gas distribution in organs after inhalation: Real-time monitoring of tissue hydrogen concentration in rat. Scientific reports, 9(1), 1255. https://doi.org/10.1038/s41598-018-38180-4

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公開日:2025/04/06
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/04/06
最終更新日:2026/02/11
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