研究論文
A Gallbladder Carcinoma Patient With Pseudo-Progressive Remission After Hydrogen Inhalation(水素吸入による偽進行性寛解を示した胆嚢癌患者の症例報告)

水素吸入による偽進行性寛解を示した胆のう癌患者の症例報告

一言まとめ

72歳女性の胆のう癌患者に対し、1日最大6時間の水素吸入療法を行ったところ、治療開始後に一時的な腫瘍増大とマーカー上昇が見られたが、その後の継続により腫瘍縮小と臨床状態の改善が確認された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入により胆のう癌患者の免疫機能が改善され、腫瘍の寛解と症状の緩和がされる可能性がある。

研究の背景と目的

胆嚢癌は早期に転移が進行しやすく、治療が難しいとされている。従来の化学療法や外科的アブレーション療法では、患者のQOLや生存率の向上に限界があった。本研究では、非侵襲的で抗酸化作用を持つとされる水素吸入が胆嚢癌患者に与える影響を調査することを目的とした。特に、免疫細胞のPD-1陽性CD8+ T細胞への影響とその治療効果について検証を行った。

研究方法

  • 対象:72歳女性、ステージIV胆嚢癌患者
    治療内容:1日2時間から最大6時間の水素ガス吸入(3L/分)
    治療期間:最大10ヶ月間
    治療前および治療中の指標:血液検査(ALT、AST、総ビリルビン、GGT)、腫瘍マーカー(CA19-9、AFP、CEA)値、CT画像診断、免疫機能テスト(PD-1陽性CD8+ T細胞の割合)

研究結果

  • 症状の改善:
    • 水素吸入2週間後には、患者の不安感が軽減し、睡眠時間が4-5時間/日から8-10時間/日に延長。
    • 腹痛が減少し、鎮痛薬の使用が不要に。
    • Performance Status (PS)スコアは、治療前の4点から、2.5ヶ月後には1点に改善。10ヶ月後には0点となり、通常の生活に復帰。
  • 血液および腫瘍マーカー:
    • 赤血球数とヘモグロビンレベルは、1ヶ月後に上昇を開始し、2.5ヶ月後には輸血が不要に。
    • アルブミンと総タンパク質のレベルも正常範囲に回復。
    • 白血球数とリンパ球数も1.5ヶ月後に正常範囲に回復。
    • 腫瘍マーカー(CA19-9、AFP、CEA)は治療開始時に上昇、その後低下し、2.5ヶ月後には正常値範囲内に回復
  • 免疫機能:PD-1陽性CD8+ T細胞の割合が、治療前の46.8%から治療後6ヶ月で31.3%、9ヶ月で27.6%に減少(図4参照)
  • CT画像診断:
    • 水素吸入1ヶ月後、腫瘍サイズは12.2cmから16.7cmに拡大(37%増加、Progressive Disease: PD)。
    • 2.5ヶ月後には12.9cmに減少(6%増加、Stable Disease: SD)。
    • 6ヶ月後には8.1cmに縮小(33%減少、Partial Remission: PR)。

Appendix(用語解説)

  • 偽増悪: 治療初期に腫瘍が一時的に増大するが、その後縮小する現象。主にPD-1/PD-L1阻害療法で見られる。
  • PD-1: プログラム細胞死受容体1。T細胞の機能低下や免疫抑制に関与する分子。
  • PD-1陽性CD8+ T細胞:PD-1は免疫細胞の老化マーカーとされ、PD-1陽性のT細胞は抗腫瘍機能が低下していることを示す。

論文情報

タイトル

A Gallbladder Carcinoma Patient With Pseudo-Progressive Remission After Hydrogen Inhalation(水素吸入による偽進行性寛解を示した胆嚢癌患者の症例報告)

引用元

Chen, J., Mu, F., Lu, T., Ma, Y., Du, D., & Xu, K. (2019). A Gallbladder Carcinoma Patient With Pseudo-Progressive Remission After Hydrogen Inhalation. OncoTargets and therapy12, 8645–8651. https://doi.org/10.2147/OTT.S227217

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