循環器系
【医師監修】水素吸入で心筋症を予防・改善?最新研究結果から見るその可能性とは

【医師監修】水素吸入で心筋症を予防・改善?最新研究結果から見るその可能性とは

《この記事の執筆者》

心筋症は、心臓のポンプ機能が低下する疾患で、息切れや疲労感、胸痛などを引き起こします。

特に進行すると心不全や突然死のリスクが高まるため、早期の診断と治療が重要です。

現状、元の状態に戻す根本的な治療はなく、様々な研究が進められており、水素吸入もそのうちの1つの選択肢として注目を集めています。水素が持つ抗酸化作用が、心筋の損傷や炎症を抑える効果が期待されているためです。

本記事では、心筋症の基本的な知識から、水素吸入と心筋症の関係について報告されている研究をもとに、どのように寄与する可能性があるのかについて解説します。

心筋症とは

心筋症とは

心筋症は、心臓壁を構成する筋肉(心筋)が異常に肥厚または薄くなることで心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる疾患です。

主に拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症の3つのタイプに分類されます。

これらのタイプは、心筋の形態や機能により異なり、いずれも心不全や不整脈のリスクを高めるため、早期の診断と治療が重要です【1】【2】。

心筋症の主な原因

心筋症の主な原因は、多岐にわたりますが、遺伝的要因と生活習慣が重要な要素となります。

肥大型心筋症は、遺伝的な異常によって引き起こされることが多く、家族内で発症するケースも少なくありません。

一方、拡張型心筋症は、長期間の高血圧や糖尿病、肥満といった生活習慣病が原因となることが多いです。さらに、ウイルス感染によって心筋が炎症を起こすこともあり、感染が心筋症の発症リスクを高めることも確認されています【1】【2】。

心筋症の主な症状

心筋症の主な症状としては、息切れや胸痛、めまい、疲労感、浮腫などが挙げられます。

これらの症状は、心臓が血液を適切に送り出せなくなることで現れます。さらに、進行すると心不全の兆候が現れることもあり、重症化すると心臓移植が必要になるケースもあります。

不整脈が発生することも多く、これは突然死のリスクを高める要因となります【2】。

これらはどのタイプの心筋症でも共通する症状となります。

心筋症の標準的な治療

心筋症は、現状では根治的な治療法はありません。そこで、心筋症の治療は、主に症状の緩和と進行の抑制を目的としています。

薬物療法としては、血圧を下げるACE阻害薬やARB、利尿薬、β遮断薬が使用されます。これらの薬剤は、心臓の負担を軽減し、心不全の進行を遅らせる効果があります【1】【2】。

また、心不全が進行した場合には、植え込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)などのデバイス治療も行われます。最終的には、心臓移植が必要になる場合もあります。

水素吸入は心筋症の予防・改善に効果はある?

水素吸入は心筋症の予防・改善に効果はある?

水素吸入療法は、近年、抗酸化作用を持つことから心血管疾患の治療法として注目されています。

水素分子は、体内で酸化ストレスを軽減することで、心筋の損傷や炎症を抑制する可能性が示唆されています。心筋症においても、水素吸入が予防や症状の改善に寄与するかどうかについて、研究が進んでいます【3】【4】。

心筋症の予防の可能性

水素吸入が心筋症の予防に役立つ可能性は、酸化ストレスの低減効果に基づいています。酸化ストレスは、心筋の損傷や炎症の一因となるため、これを抑えることができれば、心筋症の進行を遅らせることが期待されます。

2023年のタイでの研究では、水素吸入が酸化ストレスを低減し、心臓細胞の機能を保護する効果が確認されています【3】。また、心筋細胞がストレスにさらされた際に起こる細胞死を抑制することで、心筋症の進行を予防できる可能性も示唆されています【3】。

これまでに行われた動物実験においては、水素吸入が心筋細胞の損傷を軽減し、心臓機能を維持する効果が確認されています【4】。これらの研究結果から、心筋症の予防において水素吸入が有望である可能性が示唆されています。

心筋症の症状改善の可能性

水素吸入が心筋症の症状を改善する可能性についても、いくつかの研究が報告されています。

酸化ストレスは心臓の炎症を引き起こし、心筋の機能低下を助長するため、水素吸入によって酸化ストレスを軽減することができれば、心筋症の症状を緩和することが期待されます。

Saengsinらの研究では、水素吸入が心不全モデルにおいて心筋のリモデリングを抑制し、心臓の収縮力を改善することが確認されました【3】。また、水素吸入が心臓内の炎症反応を抑制し、心筋細胞の生存率を向上させる効果があるとされています【3】。このような効果により、息切れや疲労感といった症状が改善される可能性があります。

なお、リモデリングとは、心臓が損傷やストレスにさらされたときに、形状や構造が変わってしまうことです。例えば、心臓の壁が厚くなったり、逆に薄くなったりすることで、心臓の働きが悪くなります。これが進行すると、心不全や不整脈を引き起こす可能性があります。水素吸入は、このリモデリングを抑えることで、心臓の機能を保護する効果が期待されています。

さらに、臨床試験では、水素吸入が心不全患者のQOL(生活の質)を向上させる結果が示されており、心筋症患者においても同様の効果が期待されています【4】。これらの結果は、酸化ストレスの軽減が心筋症の症状改善に寄与する可能性を示しており、今後のさらなる研究が期待されます。

【私はこう考える】水素吸入と心筋症

水素吸入療法は、心筋症の治療法の効果を高めるために非常に有望です。特に、酸化ストレスが心筋症の進行に与える影響を考慮すると、酸化ストレスを抑える水素の効果は大きな期待が持てます。

これまでの動物実験や臨床試験では、水素吸入が心筋の機能を改善し、症状を緩和する結果が得られています

しかし、まだ研究は初期の段階といえます。今後、水素吸入の心筋症に対しての有効性を確立するには、ヒトを対象とした大規模なランダム化比較試験が必要になります。【3】【4】。

それらの試験において水素吸入療法の効果が証明されれば、心筋症治療の併用療法として活用される日が来るかもしれません。今後のさらなる研究が待たれるところです。

参考文献
  1. 心筋症 | 疾患別解説 | 心臓病の知識
  2. Cardiomyopathy – Symptoms and causes – Mayo Clinic
  3. Saengsin K, Sittiwangkul R, Chattipakorn SC, Chattipakorn N. Hydrogen therapy as a potential therapeutic intervention in heart disease: from the past evidence to future application. Cell Mol Life Sci. 2023 Jun 3;80(6):174. doi: 10.1007/s00018-023-04818-4. PMID: 37269385; PMCID: PMC10239052. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10239052/
  4. Yaxing Zhang, Sihua Tan, Jingting Xu, Tinghuai Wang; Hydrogen Therapy in Cardiovascular and Metabolic Diseases: from Bench to Bedside. Cellular Physiology and Biochemistry 1 June 2018; 47 (1): 1–10. https://doi.org/10.1159/000489737

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