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なぜすごい?水素吸入療法のメカニズム解説

【専門家監修】なぜすごい?水素の健康メカニズムを徹底解説

《この記事の執筆者》

近年、医療の現場で水素吸入療法が注目を集めています。

水素は、体内で様々な健康効果をもたらすことが研究で明らかになっており、多くの病気の予防や治療に役立つ可能性が示唆されているのです。

本記事では、水素とは何かの基礎から、水素が健康に寄与するメカニズム6つについて詳しく解説していきます。

また、ビタミンCなどの他の抗酸化物質との違いも解説し、水素吸入療法の可能性と将来性を探ります。

高濃度の水素を体内に取り込む新たな方法として期待される水素吸入療法。その仕組みと効果を知り、健康づくりに役立てていきましょう。

そもそも水素とは?

水素とは

水素は宇宙で最も豊富に存在する元素であり、原子番号1番の最もシンプルな構造を持ちます。

文字通り「水の素(もと)」であり、酸素と結びつくことで水になります。

反対に水から酸素を分解して、水素を取り出すこともできます。

水素の特性

水素は、常温常圧下では無色無臭の気体として存在し、可燃性を有します。

燃えても二酸化炭素を出さず、水を生成するのみなので水素ガスはクリーンエネルギーとして注目されています。1)

水素の健康効果への期待

水素は、近年様々な研究において私たちの健康に寄与する可能性が示唆されており、注目を集めています。

具体的にどういった作用や効果があるのかについては、後述する「水素の健康効果のメカニズム」で詳しく解説します。

水素を体内に取り込む方法

水素を体内に取り込む方法

期待される健康効果は水素を体内に取り込むことで享受できます。

水素を体内に取り込む主な方法には以下のようなものがあります。

水素を取り込む方法
  • 水素吸入療法:水素ガスを直接吸入する方法。最も速やかに高濃度の水素を体内に取り込むことができます。
  • 水素水の飲用:水素を溶解させた水を飲む方法。手軽に継続的に水素を摂取できますが、吸入と比べると体内の水素濃度は低くなります。
  • 水素水の入浴:水素を溶解させた水(お湯)を使って入浴する方法。全身の肌から水素を取り込め、特に皮膚疾患への効果が期待されています。
  • その他の方法:水素入りの点滴や入浴剤、サプリメントなども存在します。

最も効果的に取り込める方法

このように水素を体内に取り込む方法はいくつかありますが、最も効率よく大量の水素を取り込めるのは水素吸入です。

ある研究では、水素吸入による血中水素ガス最高濃度は生理食塩水に水素を溶かして投与した場合の約10倍も高かったと報告されています。2)

では、水素の健康効果のメカニズムについて詳しく見ていきましょう。

水素の健康効果のメカニズム6つ

水素の健康効果のメカニズム6つ

水素は、私たちの健康に多面的な影響を与える可能性がこれまでの様々な研究で報告されています。

その主要なメカニズムには以下の6つがあります。

水素の健康効果のメカニズム
  1. 抗酸化作用
  2. 抗炎症作用
  3. ミトコンドリア保護作用
  4. 細胞死の制御
  5. 小胞体のストレス軽減
  6. 免疫系の調整

以下でそれぞれ詳しく解説していきます。

メカニズム①:
抗酸化作用

水素のメカニズム①:抗酸化作用

水素は、私たちの健康に多大な影響を与える活性酸素に対して、選択的にそれらを取り除く抗酸化作用を示します。

活性酸素とは

活性酸素とは、体内にある酸素が通常よりも活性化した状態のことです。

呼吸から体内に取り込まれた酸素の数%が活性酸素になると言われています。3)

活性酸素の種類と役割

活性酸素には、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルなど様々な種類があります。

これら活性酸素は、免疫系では細菌や異物を攻撃する武器として機能し、細胞内ではシグナル伝達や遺伝子発現の調節に関与するなど、生体内で重要な役割を担っています。

過剰な活性酸素には問題が

しかし、活性酸素が過剰になると、いわゆる体がサビた状態となり、体内の脂質、タンパク質、DNAを傷つけ、細胞の機能低下や死を引き起こします。

これは酸化ストレスと呼ばれる状態で、慢性炎症、動脈硬化、糖尿病、神経変性疾患など、多くの病気の原因となります。3)

水素は選択的に活性酸素を除去

水素は、特に有害なヒドロキシラジカルやペルオキシナイトライトを選択的に除去(無害な水に変換)します。

一方で、生命活動に必要な過酸化水素や一酸化窒素は除去しません。

この選択的な作用により、水素は体内の酸化ストレスを効果的に減らし、細胞や臓器の損傷を防ぎ、多くの病気の予防や症状改善につながると期待されています。

さらに、水素は体内の抗酸化力を高める働きもあります。

水素分子は小さいため、細胞膜を容易に通過して細胞内の隅々まで到達し、活性酸素を効果的に除去できます。

メカニズム②:
抗炎症作用

水素のメカニズム②:抗炎症作用

炎症は、ウイルス感染や組織の損傷に対する体の防御反応ですが、慢性的な炎症は多くの病気の原因となります。

水素は、炎症反応を抑制する複数の仕組みを持っています。

炎症性物質の産生抑制

水素は、炎症反応の中心的な役割を果たすNF-κBという物質の活性化を抑制します。

これにより、IL-1β、IL-6、TNF-α などの炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)の産生が減ります。

これらのサイトカインは、過剰な炎症反応を引き起こし、組織の損傷につながります。

NLRP3インフラマソームの活性化抑制

NLRP3インフラマソームは、炎症反応を触媒する体内の複合体です。

水素はこの活性化を抑制することで、炎症性物質(IL-1β)の産生を抑えます。

この作用は、炎症性疾患の進行を抑える上で重要です。

マクロファージの働きの調整

マクロファージは免疫細胞の一種で、炎症を促進するタイプ(M1)と抗炎症作用を持つタイプ(M2)があります

水素は、M1からM2へのシフトを促進し、炎症を鎮める物質の産生を増やします。

これらの抗炎症作用により、水素は急性・慢性の炎症を抑制し、関節リウマチ、炎症性腸疾患、動脈硬化など、炎症が関与する多くの病気の予防や治療に役立つと考えられています。

メカニズム③:
ミトコンドリア保護作用

水素のメカニズム③:ミトコンドリア保護作用

ミトコンドリアは、細胞のエネルギー産生に不可欠な小器官で、言うなれば細胞のエネルギー工場です。

しかし、活性酸素によるダメージを受けやすいという弱点があります。

水素は、このミトコンドリアを保護する働きがあります。

エネルギー生産の効率化と活性酸素の抑制

水素は、ミトコンドリアのエネルギー生産効率を高め、活性酸素の発生を抑えます。

ミトコンドリアの機能低下は、エネルギー不足や酸化ストレスを引き起こし、細胞の健康を損ないます。

ミトコンドリアの安定性の向上

水素は、ミトコンドリアの膜の安定性を高め、ストレス下でも機能を維持しやすくします。

これは、アポトーシスと呼ばれる細胞死のトリガーを抑制することにつながります。

損傷したミトコンドリアの除去

水素は、損傷したミトコンドリアを選択的に分解・除去するプロセス(マイトファジー)を促進します。

これにより、ミトコンドリアの質を高く保ちます。

ミトコンドリアは、心臓、脳、筋肉などのエネルギー要求の高い臓器の機能に特に重要です。

水素によるミトコンドリア保護は、これらの臓器の健康維持に役立つ考えられています。

また、ミトコンドリアの機能不全は、老化や神経変性疾患とも関連するため、水素はこれらの予防にも貢献すると期待されています。

メカニズム④:
細胞死の調整作用

水素のメカニズム④:細胞死の調整作用

細胞死は、古くなったり損傷を受けたりした細胞を除去する重要なプロセスですが、過剰な細胞死は病気の原因となります。

細胞死は別名アポトーシスとも呼ばれます。

水素は、細胞死のプロセスを調整する作用があります。

ストレス下での細胞保護

虚血再灌流障害(血流が途絶えた後に再開することで起こる組織障害)や放射線障害などのストレス条件下では、アポトーシスと呼ばれる細胞死が増加します。

水素はこのアポトーシスを抑制し、細胞を保護します。

損傷した細胞成分の適切な除去

オートファジーは、損傷を受けたタンパク質や小器官を分解・除去するプロセスです。

水素はオートファジーを適度に促進し、細胞内の浄化を助けます。

過剰なオートファジーは細胞死につながるため、水素は適切なバランスを保つように働きます。

炎症性細胞死の抑制

パイロトーシスは、感染や組織損傷に応答して起こる炎症性の細胞死です。

水素はパイロトーシスを抑制することで、炎症性疾患の進行を抑えます。

これらの水素の細胞死調整作用は、細胞や組織の健康な入れ替わりを促し、ストレスによる損傷から体を守ります。

これは、炎症性疾患、虚血性疾患、神経変性疾患など、多くの病気の予防や治療に役立つと考えられます。

メカニズム⑤:
小胞体ストレスの軽減

水素のメカニズム⑤:小胞体ストレスの軽減

小胞体は、タンパク質の合成や折りたたみを行う細胞内の器官です。

様々なストレス条件下では、小胞体の機能が損なわれ、異常タンパク質が蓄積します。

これは小胞体ストレスと呼ばれ、細胞死や炎症を引き起こします。

水素は、以下のような仕組みで小胞体ストレスを軽減すると考えられています。

抗酸化作用による小胞体機能の保護

酸化ストレスは小胞体ストレスの主要な原因の一つです。

水素の抗酸化作用は、小胞体の機能維持に役立ちます。

誤ったタンパク質の蓄積の抑制

水素は、異常タンパク質の蓄積を抑制する働きがあります。

これは、小胞体ストレスの軽減につながります。

小胞体ストレスは、糖尿病、肥満、神経変性疾患など、多くの病気との関連が指摘されています。

水素による小胞体ストレスの軽減は、これらの病気の予防や治療に役立つ可能性があります。

メカニズム⑥:
免疫系の調整作用

水素のメカニズム⑥:免疫系の調整作用

免疫系は、感染症から体を守る重要な役割を果たしますが、過剰な免疫反応は自己免疫疾患や慢性炎症の原因となります。

水素は、そういった過剰な免疫反応が起きないように免疫系の調整を行います。

T細胞のバランス調整

水素は免疫反応を促進するT細胞の一種である、Th1とTh2のバランスを適切に保ち、過剰な免疫反応(炎症やアレルギー)を防ぎます。

具体的には、以下のように分けられます。

Th1とTh2と水素の関係

自己免疫疾患の予防: 水素はTh1優位の反応を抑え、炎症や組織損傷を軽減します。
アレルギー疾患の予防: 水素はTh2優位の反応を抑え、アレルギー症状を緩和します。

制御性T細胞の活性化

制御性T細胞は、過剰な免疫反応を抑える働きを持ちます。

水素は、制御性T細胞の活性化を促進し、自己免疫反応を抑制します。

これらの作用により、水素は自己免疫疾患やアレルギー疾患の予防・治療に役立つ可能性があります。

また、過剰な炎症の抑制を通じて、様々な慢性疾患の管理にも貢献すると期待されています。

水素と他の抗酸化物質はどちらが良い?

水素と他の抗酸化物質はどちらが良い?

上述したように、水素の主な作用の1つに抗酸化作用があります。

しかし抗酸化作用があるのは水素に限らず、ビタミンCやビタミンEといった栄養素など様々な抗酸化物質が存在しています。

それらと水素の違いについて見ていきましょう。

体内の抗酸化物質とその限界

体内には、活性酸素から体を守るための抗酸化物質が元々備わっています。

例えば、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンといった酵素型の抗酸化物質や、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの非酵素型の抗酸化物質があります。

しかし、これらの抗酸化物質にはいくつかの限界があります。

酵素型抗酸化物質の限界

分子量が大きいため、細胞膜を通過しにくく、細胞内の活性酸素を除去しにくい。

非酵素型抗酸化物質の限界

サプリメントとして摂取しても、心疾患や癌、白内障などの予防効果は限定的。

水素の特徴とメリット

一方、水素には、これらの抗酸化物質とは異なる特徴があります。

1. 優れた細胞内到達性

水素は分子量が非常に小さいため、細胞膜を容易に通過して細胞内に到達できます。

そのため、細胞内で発生した活性酸素を直接除去することができます。

2. 選択的な活性酸素除去能力

水素は選択的に有害な活性酸素種、特にヒドロキシラジカルとペルオキシナイトライトのみを除去し、生体内で重要な役割を果たす活性酸素種(スーパーオキシド、過酸化水素、一酸化窒素など)は除去しません。

この選択性により、水素は体内の酸化還元バランスを乱すことなく、有害な活性酸素のみを効果的に除去できます。

3. 抗酸化酵素の発現促進

水素は抗酸化酵素の発現を促進することで、体内の抗酸化能力を向上させる可能性も示唆されています。

つまり水素によって、体に本来備わる抗酸化力のアップが期待されているのです。

水素の可能性と今後の展望

このように、水素は他の抗酸化物質とは異なる特徴を持ち、より効果的かつ安全に活性酸素を除去できる可能性があります。

この特性は、水素が様々な疾患の予防や治療に役立つ可能性を示唆しています。

ただし、水素の健康効果については、まだ研究の蓄積が必要な段階であり、今後のさらなる研究が期待されます。

水素の医療応用が進めば、多くの人々の健康維持・増進に貢献できるかもしれません。

水素は様々なメカニズムで健康に寄与:まとめ

水素は、活性酸素の除去、炎症の抑制、ミトコンドリアの保護、細胞死の調整など、多面的なメカニズムを通じて健康に寄与すると考えられます。

特に水素吸入療法は、高濃度の水素を速やかに体内に取り込める方法として注目されています。

今後、水素の医療応用に関する研究がさらに進展し、様々な疾患の予防や治療に貢献することが期待されます。

研究は日夜進んでいます。その有用性が広く認識され、人々の健康増進に寄与する日が待ち遠しいですね。

参考文献
  1. 文部科学省科学技術週間『一家に一枚水素』
  2. Ono H, Nishijima Y, Adachi N, Sakamoto M, Kudo Y, Nakazawa J, Kaneko K, Nakao A. Hydrogen(H2) treatment for acute erythymatous skin diseases. A report of 4 patients with safety data and a non-controlled feasibility study with H2 concentration measurement on two volunteers. Med Gas Res. 2012 May 20;2(1):14. doi: 10.1186/2045-9912-2-14. PMID: 22607973; PMCID: PMC3407032.
  3. 厚生労働省e-ヘルスネット『活性酸素と酸化ストレス』

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