研究論文
Hydrogen Gas Treatment Improves Postoperative Delirium and Cognitive Dysfunction in Elderly Noncardiac Patients(水素ガス治療は高齢者の非心臓手術後のせん妄と認知機能障害を改善する)

水素ガス治療で高齢者の術後せん妄を改善

一言まとめ

高齢の非心臓手術患者において、水素吸入は術後せん妄の発生率を減少させ、炎症反応を抑制することが示された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は高齢者の非心臓手術後のせん妄を予防する効果がある。

研究の背景と目的

せん妄は、手術後の高齢者によく見られる急性の脳機能障害であり、術後の転帰に深刻な影響を与える。本研究では、選択手術を受ける高齢者における水素吸入の予防的効果を調査し、術後せん妄の発生率を比較することを目的とした。

研究方法

  • 対象者: 65歳以上の非心臓、非脳神経外科手術を受ける患者184名
  • ランダム化と盲検化: 患者を無作為に水素吸入群(83名)と対照群(酸素吸入、70名)に割り当て
  • 介入: 水素吸入群には66.7%水素と33.3%酸素の混合ガス(流量3L/分)を1時間吸入させ、対照群には33.3%酸素を鼻カニューレを通じて吸入させた
  • 評価方法: 術後1日から7日間、1日2回のせん妄評価(Confusion Assessment Method, CAM)を実施。また、CRPレベル、痛みの評価(NRSスコア)、睡眠の質も測定

研究結果

  • せん妄発生率:
    • 水素吸入群: 12%(10/83名)
    • 対照群: 24%(17/70名)
    • p値=0.048
  • 炎症反応: 水素吸入群のCRPレベルは対照群に比べて有意に低かった
  • 痛みの評価: 術後1日目のNRSスコアは水素吸入群の方が高かったが、差は小さかった(4.08 vs. 3.54, p<0.05)
  • 副作用: 水素吸入群で低酸素血症の発生率が高かったが(7% vs. 3%)、管理可能な範囲内であった

Appendix(用語解説)

  • せん妄: 急性の脳機能障害であり、注意力の欠如、意識レベルの変動、思考の混乱を特徴とする
  • CRP(C-反応性タンパク): 炎症や組織損傷のマーカー
  • NRSスコア: 痛みの評価スケールで、0から10までの数値で評価

論文情報

タイトル

Hydrogen Gas Treatment Improves Postoperative Delirium and Cognitive Dysfunction in Elderly Noncardiac Patients(水素ガス治療は高齢者の非心臓手術後のせん妄と認知機能障害を改善する)

引用元

Lin, H., Du, J., Tian, Z., Yu, Y., Cui, Y., & Xie, K. (2022). Hydrogen Gas Treatment Improves Postoperative Delirium and Cognitive Dysfunction in Elderly Noncardiac Patients. Journal of personalized medicine13(1), 67. https://doi.org/10.3390/jpm13010067

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