研究論文
COPDに対する補助療法としての水素吸入の効果

COPDに対する補助療法としての水素吸入の効果

一言まとめ

COPD患者6人を対象として30日間にわたり、毎日3回(朝、午後、夕方)それぞれ30分間(計90分間)水素酸素混合ガス(水素73%, 酸素27%)吸入を実施したところ、CATスコア、MRCスケールが有意に改善し、血小板数も優位に増加した。一方で、肺機能、DLCO、睡眠の質、及び6分間の歩行テストに変化はなかった。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は一部のCOPD患者の症状を改善する可能性があるが、効果のメカニズムは不明。

研究の背景と目的

COPDの病因には、酸化ストレスと炎症が関与しており、近年の研究で水素ガスの潜在的利点が明らかになってきた。COPD治療は、主に症状の軽減と、肺機能の改善、増悪予防が中心となっていたが、最近は、さらなる症状軽減、進行抑制、QOLの改善が注目されている。本研究では、COPDに対する水素吸入療法の治療可能性、安全性、忍容性を評価することを目的とした。

研究方法

GOLDガイドライン(COPDの世界的ガイドライン)に従って標準治療を受けており、病態が安定しているCOPD患者6人(男性5人, 女性1人、平均年齢68歳)を対象とした。30日間にわたり、毎日3回(朝、午後、夕方)それぞれ30分間(計90分間)水素濃度73%の水素吸入を実施した。主要評価項目は、CATスコア、mMRCスケール、肺機能、睡眠の質、炎症マーカー、酸化ストレスマーカー、Borgスケールの水素吸入前後の変化とした。

研究結果

  • 水素吸入後、5人がCATスコアの改善を示し、これは統計的に有意であった(15.5 vs 8.5, p=0.043)。
  • また、4人でmMRCスコアの改善を示し、これも統計的に有意であった(2.5 vs 2.0, p=0.046)。
  • 肺機能、DLCO、睡眠の質、6分間歩行テストにおいては、有意差はなかった。
  • 血液検査では、血小板数が有意に増加した(247 vs 260, p=0.043)が、他の血液検査、炎症マーカーや酸化ストレスマーカーでは有意差はなかった。
  • 水素療法の副作用として、2人がめまいを訴えたが、自然軽快した。重篤な副作用はみられなかった。

Appendix(用語解説)

  • COPD: 慢性閉塞性肺疾患。喫煙などが原因で気道の炎症が起こり、呼吸機能が低下する病気。
  • CAT: COPDの症状や生活への影響を患者が評価する質問票。
  • mMRC: 息切れの程度を5段階で評価するスケール。
  • 肺機能検査: 肺活量や1秒量などを測定し、呼吸機能を評価する検査。
  • DLCO: 肺から血液中への酸素の取り込み能力を反映する指標。
  • 6分間歩行試験: 6分間でどれだけ歩けるかを測定し、運動耐容能を評価する検査。

論文情報

タイトル

The Benefit of Hydrogen Gas as an Adjunctive Therapy for Chronic Obstructive Pulmonary Disease(COPDに対する補助療法としての水素吸入の効果)

引用元

Liu, S. F., Li, C. L., Lee, H. C., Chang, H. C., Liu, J. F., & Kuo, H. C. (2024). The Benefit of Hydrogen Gas as an Adjunctive Therapy for Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Medicina (Kaunas, Lithuania)60(2), 245. https://doi.org/10.3390/medicina60020245

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

COPD患者に対して水素療法を行うことで、COPDを評価するCATスコア、mMRCスケールがともに改善したことは評価できます。水素療法がCOPD治療の補助療法たりうる可能性を示唆しているといえます。一方で、肺機能や血小板数以外の血液検査データ、炎症マーカーや、酸化ストレスマーカーなどにも有意差がなかったことからは、サンプルサイズが小さいことに加えて、水素の投与方法にも検討の余地があることを示唆しているかもしれません。COPDの病期のより早期でのアプローチ、治療期間を長くとることも有用な可能性があります。いずれにしても本研究を元にしたさらなる研究が待たれます。

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