一言まとめ
高血圧自然発症ラットの心停止モデルにおいて、心肺蘇生後の水素吸入療法は、軽度低体温療法よりも神経学的予後と生存率を改善した。
3分で読める詳細解説
結論
高血圧ラットの心停止蘇生モデルにおいて、水素吸入は軽度低体温よりも神経学的予後と生存率を改善する。
研究の背景と目的
心停止後症候群は全身の虚血再灌流障害による多臓器不全を引き起こし、死亡率が高い。最近の動物実験では、水素吸入が心停止後の心機能障害と脳障害を大幅に軽減することが示されている。しかし、基礎疾患としての心疾患が水素の効果に与える影響はまだ不明である。本研究では、高血圧自然発症ラット(SHR)の心停止モデルにおける水素吸入の神経学的予後と生存率への効果を調査した。
研究方法
40匹のSHRを用いて、4分間の心室細動後に心肺蘇生を開始。自己心拍再開直後にランダムに4群(各n=10)に割り付け、以下の混合ガスを2時間吸入させた。
- コントロール群:98%酸素+2%窒素、常温
- TH群:98%酸素+2%窒素、低体温(33℃)
- H2群:98%酸素+2%水素、常温
- H2+TH群:98%酸素+2%水素、低体温(33℃)
低体温群では2時間の低体温維持後、2時間かけて復温。96時間まで生存と神経学的回復を観察した。
研究結果
Appendix(用語解説)
- 心停止後症候群(PCAS):心停止からの蘇生後に起こる病態。全身の虚血再灌流障害により多臓器不全を来たし、死亡率が高い。
- 高血圧自然発症ラット(SHR):遺伝的に高血圧を発症するラット。ヒトの高血圧のモデル動物。
- 心筋トロポニンT:心筋障害の血液マーカー。
- S100βタンパク質:脳障害の血液マーカー。アストロサイト(グリア細胞の一種)から放出される。
- 神経障害スコア:神経学的な後遺障害の程度を数値化したもの。
論文情報
タイトル
Hydrogen Inhalation is Superior to Mild Hypothermia for Improving Neurological Outcome and Survival in a Cardiac Arrest Model of Spontaneously Hypertensive Rat(高血圧自然発症ラットの心停止モデルにおいて、水素吸入は軽度低体温よりも神経学的予後と生存率を改善)
引用元
Chen, G., Chen, B., Dai, C., Wang, J., Wang, J., Huang, Y., & Li, Y. (2018). Hydrogen Inhalation is Superior to Mild Hypothermia for Improving Neurological Outcome and Survival in a Cardiac Arrest Model of Spontaneously Hypertensive Rat. Shock (Augusta, Ga.), 50(6), 689–695. https://doi.org/10.1097/SHK.0000000000001092
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