一言まとめ
アルツハイマー病患者8名に3%の水素吸入を1日2回、6か月間実施し、その後1年間の追跡を行ったところ、ADAS-cogスコアが有意に改善し、6か月後もその効果が持続した。
3分で読める詳細解説
結論
6か月間の水素吸入によって一時的な症状緩和にとどまらず、疾患修飾的な改善効果が得られる可能性が示唆された。
研究の背景と目的
アルツハイマー病は神経変性による記憶障害や認知機能の低下を特徴とする進行性疾患であり、既存の薬剤では進行抑制効果が限定的である。複合的要因が関与するアルツハイマー病に対して、多機能性をもつ水素吸入の治療可能性に着目し、認知機能の臨床評価(ADAS-cog)だけでなく、脳神経束の状態を評価する拡散テンソル画像(DTI)を用いて水素吸入の効果を検討することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- アルツハイマー病:記憶障害や認知機能の低下を主症状とする神経変性疾患。脳内におけるアミロイドβの蓄積やタウタンパク質異常など、複合的要因で進行すると考えられている。
- ADAS-cog(Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale):アルツハイマー病の臨床評価に広く使われる認知機能テスト。得点が低いほど症状が軽度とみなされる。
- DTI(拡散テンソル画像):磁気共鳴画像法(MRI)の一種で、組織内の水分子拡散の方向性を計測し、神経線維の状態や密度を可視化する手法。
- FA(fractional anisotropy)値:拡散テンソル画像で示される値。0に近いほど拡散の向きが等方的、1に近いほど強く方向性をもつことを意味する。一般的に神経線維が良好に維持されているほどFA値が高くなる。
論文情報
タイトル
Therapeutic Inhalation of Hydrogen Gas for Alzheimer’s Disease Patients and Subsequent Long-Term Follow-Up as a Disease-Modifying Treatment: An Open Label Pilot Study(アルツハイマー病患者に対する水素吸入療法とその後の長期追跡:疾患修飾効果を検討したオープンラベル・パイロット研究)
引用元
Ono, H., Nishijima, Y., & Ohta, S. (2023). Therapeutic Inhalation of Hydrogen Gas for Alzheimer’s Disease Patients and Subsequent Long-Term Follow-Up as a Disease-Modifying Treatment: An Open Label Pilot Study. Pharmaceuticals, 16(3), 434. https://doi.org/10.3390/ph16030434