研究論文
水素吸入がアルツハイマー病の改善に寄与

水素吸入がアルツハイマー病の改善に寄与

一言まとめ

地域在住の成人51名に4週間毎日30分の水素吸入を行ったところ、酸化ストレスおよびアルツハイマー病関連の認知機能マーカーが有意に改善し、安全性も確認された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は認知機能改善に有効で安全性も高い

研究の背景と目的

アルツハイマー病(AD)は世界的に患者が増加しており、その初期症状の発見や進行予防が課題となっている。従来の診断や治療法は侵襲的であったり、副作用が大きかったりすることから、非侵襲的で安全な治療法として水素吸入が注目されている。本研究は、地域在住の成人を対象として、水素吸入が認知機能の改善や関連バイオマーカーの変化に及ぼす影響を調査することを目的として実施された。

研究方法

  • 対象者: 40〜70歳の51名の地域在住成人(平均年齢53.98±8.86歳)
  • 選定基準: 自発的に歩行できる者、医師の指示に従える者、同意のうえで臨床試験に参加できる者
  • 除外基準: ADの病歴がある者、過去6ヶ月以内に他の臨床試験に参加した者、自己免疫疾患や神経変性疾患以外の腫瘍がある者、妊婦・授乳中の女性
  • 介入方法: 98%フィルター空気と2%水素ガスの混合気体を鼻カニューレを通じて1日30分間、4週間にわたり吸入
  • 対照群の設定: 単群研究のため対照群なし
  • 評価方法:
    • 白血球数と分画白血球数
    • 活性酸素種(ROS)と一酸化窒素(NO)レベル
    • アルツハイマー病関連バイオマーカー: BACE-1、アミロイドβ(Aβ)、BDNF、VEGF-A、T-tau、p-tau、MCP-1、IL-6

研究結果

  • 白血球数・分画への影響:
    • 水素ガス吸入前後で白血球数と分画白血球数に有意な変化はなく、安全性と忍容性が示された
  • 酸化ストレス指標の改善:
    • ROS(活性酸素種)濃度が有意に低下(p<0.05)
    • NO濃度も有意に低下(p<0.01)
  • 認知機能関連マーカーの改善:
    • BACE-1濃度が有意に減少(p<0.01)
    • BDNF濃度が有意に増加(p<0.001)
    • アミロイドベータ(Aβ1-40, Aβ1-42)濃度が有意に減少(Aβ1-40:p<0.01、Aβ1-42:p<0.05)
    • Tau蛋白質(t-tau, p-tau)の濃度が有意に減少(t-tau: p<0.001, p-tau: p<0.05)
    • MCP-1、IL-6、VEGF-Aの炎症性サイトカイン濃度も有意に低下(MCP-1:p<0.001、IL-6:p<0.05、VEGF-A:p<0.05)
  • 考察と限界
    • 水素吸入が酸化ストレスを抑制し、認知機能の改善につながる可能性が示唆された。
    • 研究期間が4週間と短期間であり、プラセボ対照群が存在しないため、長期的な効果やプラセボ効果との区別については、さらなる研究が必要であることが指摘された。

Appendix(用語解説)

  • ROS(活性酸素種):細胞を傷つけ老化や病気を引き起こす可能性がある酸素の反応性が高い形態。
  • BDNF(脳由来神経栄養因子):脳神経細胞の成長や生存を促進し、記憶や学習機能に関与するタンパク質。
  • アミロイドベータ(Aβ):脳内に蓄積し、アルツハイマー病の発症と関連すると考えられるタンパク質。
  • タウ蛋白質(Tau):神経細胞の構造維持に重要なタンパク質だが、異常にリン酸化(p-tau)されると脳に蓄積し、神経細胞死を引き起こす。
  • BDNF(脳由来神経栄養因子):神経細胞の成長や回復を促進する物質で、認知機能や記憶の維持に重要な役割を持つ。
  • VEGF-A(血管内皮増殖因子A):血管の成長を促進するタンパク質で、脳や神経系の維持にも重要とされる。
  • IL-6(インターロイキン-6):炎症や免疫反応を調整するタンパク質。
  • MCP-1(単球走化性タンパク質-1):炎症部位に免疫細胞を呼び寄せるタンパク質。

論文情報

タイトル

Effects of Hydrogen Gas Inhalation on Community-Dwelling Adults of Various Ages: A Single-Arm, Open-Label, Prospective Clinical Trial(地域在住の成人に対する水素吸入の影響:単一群、非盲検前向き臨床試験)

引用元

Rahman, M. H., Bajgai, J., Sharma, S., Jeong, E. S., Goh, S. H., Jang, Y. G., Kim, C. S., & Lee, K. J. (2023). Effects of Hydrogen Gas Inhalation on Community-Dwelling Adults of Various Ages: A Single-Arm, Open-Label, Prospective Clinical Trial. Antioxidants (Basel, Switzerland)12(6), 1241. https://doi.org/10.3390/antiox12061241

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

本研究では水素吸入が、安全にアルツハイマー病の改善に寄与する可能性が示されています。各種のマーカーについて54人と決して少なくない人数での有意な研究結果がまとめられたことは注目に値します。基本的には、多くの研究がそう示すように副作用はないか軽微と考えられますが、中長期的なフォローアップによる副作用を評価する必要がある他、同じく中長期的な効果の評価と最適な水素の投与量の検討などが待たれます。

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