研究論文
水素吸入はくも膜下出血後の遅発性脳損傷を改善する

水素吸入はくも膜下出血後の遅発性脳損傷を改善する

一言まとめ

ラットのくも膜下出血モデルに対し、水素ガス吸入を行ったところ、脳血管攣縮は改善しなかったものの、早期脳損傷や遅発性脳損傷が軽減された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、くも膜下出血後の早期脳損傷を軽減することで遅発性脳損傷を改善する。

研究の背景と目的

くも膜下出血後の遅発性脳損傷は、くも膜下出血患者の予後を悪化させる主要因である。水素分子は活性酸素を除去する作用があり、くも膜下出血後の早期脳損傷を改善することが知られている。本研究は、ラットのくも膜下出血モデルを用いて、水素吸入が遅発性脳損傷に与える影響を調べることを目的とした。

研究方法

ラットを3群(偽手術群、コントロール群、水素吸入群)に分け、コントロール群と水素吸入群ではくも膜下出血を誘発。水素吸入群には、くも膜下出血誘発直後と24時間後に水素ガス(1.3%水素、30%酸素、残り窒素)を吸入させた。各群で以下の評価を行った。

  • 早期脳損傷の評価:脳浮腫、S100Bタンパク質発現、JNKリン酸化(2日目)、神経学的欠損(3日目)
  • 遅発性脳損傷の評価:反応性アストログリオーシス(3日目、7日目)、脳血管攣縮(3日目、7日目)、神経学的欠損と神経細胞死(7日目)

研究結果

水素吸入群では、コントロール群と比較して以下の結果が得られた。

  • 早期脳損傷が軽減:脳浮腫、S100B発現、JNKリン酸化が抑制され、神経学的欠損が改善
  • 遅発性脳損傷が軽減:反応性アストログリオーシスが抑制され、神経学的欠損と神経細胞死が改善
  • 脳血管攣縮は改善せず

Appendix(用語解説)

  • くも膜下出血:脳動脈瘤の破裂などが原因で、脳を覆う膜(くも膜)の下に出血が起こること。
  • 早期脳損傷:くも膜下出血発症後72時間以内に生じる脳損傷。
  • 遅発性脳損傷:くも膜下出血発症後数日から2週間程度経過して生じる脳損傷。
  • 脳血管攣縮:くも膜下出血後に脳血管が異常に収縮すること。遅発性脳損傷の一因と考えられている。
  • S100Bタンパク質:脳損傷のマーカーの一つ。アストロサイトから分泌される。
  • JNK:ストレス応答に関与するタンパク質。リン酸化されると活性化する。
  • 反応性アストログリオーシス:脳損傷後にアストロサイト(グリア細胞の一種)が活性化されること。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas inhalation improves delayed brain injury by alleviating early brain injury after experimental subarachnoid hemorrhage(水素ガス吸入は、実験的くも膜下出血後の早期脳損傷を軽減することで遅発性脳損傷を改善する)

引用元

Kumagai, K., Toyooka, T., Takeuchi, S., Otani, N., Wada, K., Tomiyama, A., & Mori, K. (2020). Hydrogen gas inhalation improves delayed brain injury by alleviating early brain injury after experimental subarachnoid hemorrhage. Scientific reports10(1), 12319. https://doi.org/10.1038/s41598-020-69028-5

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