一言まとめ
高脂肪食とストレプトゾトシン投与により2型糖尿病を誘発したラットに水素水を投与したところ、高血糖、インスリン抵抗性、脂質異常、酸化ストレスが改善し、膵島や腎臓の病理変化も軽減した。この効果は、水素によるTLR4/MyD88/NF-κBシグナル経路の抑制を介していることが示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
水素投与は、2型糖尿病ラットの高血糖を改善し、酸化ストレスを抑制することで、糖尿病の治療に有効である可能性がある。
研究の背景と目的
2型糖尿病は高血糖を特徴とする慢性の炎症性疾患である。過剰な活性酸素種(ROS)の産生は、高血糖によって引き起こされ、タンパク質、DNA、脂質の酸化的損傷を誘発する。近年、水素は様々な疾患モデルに対して治療効果を示すことが明らかになってきた。そこで本研究では、2型糖尿病ラットモデルを用いて、水素の治療効果とそのメカニズムを検討した。
研究方法
8週齢のSDラット50匹を、高脂肪食群(40匹)と通常食群(10匹)に分けた。4週間の高脂肪食負荷後、高脂肪食群にストレプトゾトシン(30 mg/kg)を尾静脈投与し、2型糖尿病を誘発した。2型糖尿病ラットを、水素水群、メトホルミン投与群、モデル群の3群(各群雌雄5匹ずつ)に分け、80日間連日経口投与を行った。投与開始0日目と80日目に採血と臓器サンプル採取を行い、生化学的指標や病理組織学的変化を評価した。
研究結果
Appendix(用語解説)
- ストレプトゾトシン:膵臓のβ細胞を選択的に破壊する薬剤。糖尿病モデル動物の作製に用いられる。
- SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):活性酸素を分解する抗酸化酵素。
- MDA(マロンジアルデヒド):脂質過酸化の最終産物。酸化ストレスマーカーとして用いられる。
- TLR4(Toll様受容体4):自然免疫に関与する受容体の一つ。NF-κBを介した炎症性サイトカインの産生を促進する。
- NF-κB:炎症や酸化ストレス応答に関わる転写因子。IκBと結合して不活性型として存在するが、刺激によりIκBがリン酸化・分解されると核内に移行し、標的遺伝子の発現を誘導する。
論文情報
タイトル
Molecular hydrogen improves type 2 diabetes through inhibiting oxidative stress(水素は酸化ストレスの抑制を介して2型糖尿病を改善する)
引用元
Ming, Y., Ma, Q. H., Han, X. L., & Li, H. Y. (2020). Molecular hydrogen improves type 2 diabetes through inhibiting oxidative stress. Experimental and therapeutic medicine, 20(1), 359–366. https://doi.org/10.3892/etm.2020.8708
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