研究論文
水素分子は大腸がんの増殖を抑制する

水素分子は大腸がんの増殖を抑制する

一言まとめ

ヒトの大腸がん細胞を様々な水素濃度の環境下で育てたところ、低い濃度(30%)の水素でもがんの成長が抑えられた。さらに、水素濃度を高くする(50%以上)と、抑制効果が見られるがん細胞の種類が増え、大腸がん細胞を移植したマウスに水素を吸入させたところ、腫瘍の成長が大幅に抑えられた。

3分で読める詳細解説

結論

水素は大腸がんに対して、pAKT/SCD1経路を抑制することで強力な腫瘍抑制効果を発揮する。

研究の背景と目的

大腸がんは世界的に罹患率・死亡率の高いがん種の一つである。近年の治療法の進歩により予後は改善しつつあるが、手術や化学療法による副作用に悩まされる患者も多い。そこで、新たな治療戦略として、抗酸化・抗炎症・抗アポトーシス作用をもつ水素に着目し、大腸がんに対する水素の腫瘍抑制効果とそのメカニズムを探ることを目的とした。

研究方法

  • 大腸がん細胞株(RKO、SW480、HCT116)を異なる濃度の水素(30%、50%、70%)で処理し、細胞増殖抑制効果をCCK-8アッセイとコロニー形成アッセイで評価。アポトーシスへの影響もフローサイトメトリーで解析。
  • RKO細胞を移植したマウスに67%水素を1日2時間吸入させ、腫瘍増殖抑制効果を調べた。
  • ウェスタンブロットとIHC染色で、水素処理した大腸がん細胞と移植腫瘍モデルにおけるpAKT/SCD1経路の変化を解析。
  • 大腸がん患者491例のがん組織・正常組織でのSCD1発現をIHC染色で調べ、臨床病理学的特徴や予後との関連を解析。

研究結果

  • 水素は濃度依存的に大腸がん細胞の増殖を抑制したが、アポトーシスは誘導しなかった。
  • SW480は低濃度(30%)でも増殖抑制効果を示したのに対し、RKOとHCT116は高濃度(50%以上)でのみ増殖が抑制された。
  • 水素吸入は移植腫瘍モデルでも腫瘍体積と重量を有意に減少させた。
  • 水素はpAKTとSCD1の発現を低下させることで大腸がん細胞の増殖を抑制していた。この増殖抑制効果は、AKT活性化剤SC79の添加により打ち消された。
  • SCD1は大腸がん組織で正常組織よりも有意に高発現しており、進行度やリンパ節転移、家族歴の無さと相関していた。

Appendix(用語解説)

  • pAKT:リン酸化(活性化)されたAKTタンパク質。細胞の生存やアポトーシス抑制に関わる。
  • SCD1:ステアロイルCoAデサチュラーゼ1。飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に変換する律速酵素。がんの進展や予後不良に関与。
  • CCK-8アッセイ:細胞数に比例して発色する試薬を用いて細胞増殖を測定する方法。
  • コロニー形成アッセイ:細胞をプレートに播種後、一定期間培養し形成されたコロニー数を計測することで増殖能を評価する方法。
  • IHC染色:組織切片に抗体を反応させ、特定のタンパク質の発現を可視化する手法。

論文情報

タイトル

Zhang, X., Tao, G., Zhao, Y., Xing, S., Jiang, J., Liu, B., & Qin, S. (2022). Molecular Hydrogen Inhibits Colorectal Cancer Growth via the AKT/SCD1 Signaling Pathway(水素分子はAKT/SCD1シグナル経路を介して大腸がんの増殖を抑制する)

引用元

Zhang, X., Tao, G., Zhao, Y., Xing, S., Jiang, J., Liu, B., & Qin, S. (2022). Molecular Hydrogen Inhibits Colorectal Cancer Growth via the AKT/SCD1 Signaling Pathway. BioMed research international2022, 8024452. https://doi.org/10.1155/2022/8024452

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