培養した虫歯菌を電解水素水に1分間さらしたものと、水道水に1分間さらしたものとで比較した結果、電解水素水によって虫歯菌の成長が著しく阻害され、バイオフィルムの形成も抑制されることが確認された。
1分で読めるまとめ
結論
水素は、虫歯菌の成長とバイオフィルム*1の形成をいずれも抑制する。
*1 バイオフィルムは歯垢がさらに放置されて膜状になったもの
研究ハイライト
- 研究は実験研究で実施。
- 三大虫歯菌のうちの二つの口腔連鎖球菌を対象に、電解水素水曝露群(電解水素水 1分間曝露)と対照群(水道水 1分間曝露)の二群に分け、細菌の増殖曲線、コロニー形成単位数、バイオフィルムの結晶バイオレット染色の項目で比較検討した。
- 電解水素水群では、細菌増殖、バイオフィルム、コロニー形成単位数が有意に低下した。さらに、バイオフィルム形成に関わる原因遺伝子の発現が抑制された(グルコシルトランスフェラーゼとグルカン結合タンパク質をコードする遺伝子発現が抑えられた)。
- 洗口液は、虫歯を予防する上で有効な手段のひとつだが、現在有効とされるものは、副作用の観点から長期間の使用が推奨されない。
- 抗菌作用はもちろん、バイオフィルムの形成を抑制することは虫歯を予防する上で効果的な方法である。
- 副作用がなく長期的に継続使用可能な電解水素水は、理想的な洗口液かもしれない。
論文情報
タイトル
Effects of Hydrogen-rich Water on Cariogenic Bacteria(水素水が齲蝕原性細菌に及ぼす影響)
引用元
Liu, Z., Kim, E., Hong, S. H., Kim, K., Kim, E. K., & Kim, M. O. (2023). Effects of Hydrogen-rich Water on Cariogenic Bacteria. Indian journal of dental research : official publication of Indian Society for Dental Research, 34(3), 289–293. https://doi.org/10.4103/ijdr.ijdr_948_22
専門家のコメント
本研究は in vitro での研究ですが、実験で明らかにされた作用が虫歯の形成過程からみて非常に効果的な予防的アプローチであることは評価に値します。in vivo での類似した研究報告に、ラットに水素水を摂取させて歯周病の発生が抑制されたとの報告があります。今後のさらなる研究による、水素水の正確な作用機序の解明と、ヒトでの効果の検証が待たれます。
ヒトでの有効性が確認されれば、洗口液としての効果、安全性の高さ、簡便性、ランニングコストの低さなどからまさに理想的な洗口液となるかもしれません。