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【医師監修】治療後10年で30%が発症?放射線心疾患に対する水素吸入の可能性

【医師監修】治療後10年で30%が発症?放射線心疾患に対する水素吸入の可能性

《この記事の執筆者》

がん治療の進展により、放射線治療を受ける患者が増える一方で、その副作用として「放射線関連心疾患(RIHD)」のリスクが懸念されています。

一度発症すると治療が難しいとされるこの疾患に対し、最近では水素吸入の持つ抗酸化・抗炎症作用が新たな希望として浮上しています。

本記事では、放射線関連心疾患の予防や改善に水素吸入がどのような効果を発揮する可能性があるのか、最新の研究結果をもとに詳しく解説します。

放射線関連心疾患について

放射線関連心疾患について

放射線関連心疾患(RIHD:Radiation-Induced Heart Disease)は、がんなどの放射線治療で心臓に放射線が照射されて発症する疾患です。

昔は放射線治療による心臓への影響は少ないといわれていました。

しかしがん治療の発展により長期生存が可能になると、晩発性合併症として心疾患の発症が報告されるようになり、注目を集めています1)

放射線関連心疾患の原因

放射線関連心疾患の原因は、主に悪性リンパ腫や乳がん、肺がん、食道がんなど胸部への放射線治療です1)

放射線により生じる活性酸素が心臓に炎症や線維化を起こします。

発症の危険因子として、次のものが報告されています。

放射線関連心疾患発症の危険因子
  • 前面または左胸への放射線照射
  • 高い累積放射線線量(30Gy以上)
  • 50歳以下の若年者
  • 1回あたりの高い放射線線量(2Gy/日以上)
  • 心臓内または心臓に進展した腫瘍の存在
  • 放射線プロテクターがない
  • 一部薬物療法の併用
  • 心臓病のリスク因子(糖尿病、喫煙、肥満、高血圧、脂質異常症)
  • 心臓病の病歴

放射線関連心疾患の症状

放射線関連心疾患は放射線治療後5〜10年で10〜30%の方が発症するといわれています1)

心疾患の種類によっては、数十年後に発症して予後不良となる可能性があり、長期的な経過観察が必要です。

症状としては息切れや呼吸困難など、心不全症状が一般的に現れると考えられます。

出現する心疾患の種類は心膜疾患、心筋障害、弁膜症、冠動脈疾患など多岐にわたります2)

放射線関連心疾患の予防・治療

放射線関連心疾患の予防としては次の2つが挙げられますが、他の放射線副作用の予防でもごく一般的な方法です2)

放射線関連心疾患の予防
  • できるだけ心臓を避けて照射し、心臓被曝を避ける
  • 危険因子がある方を適切に把握する

治療については現在特定の薬剤は承認されておらず、多くの研究が行われています。

水素吸入は放射線関連心疾患の予防・改善に効果はある?

水素吸入は放射線関連心疾患の予防・改善に効果はある?

放射線関連心疾患は、一度発症すると改善を見込むのは難しいと考えられています。

そのようななか、水素吸入の抗酸化・抗炎症作用が放射線関連心疾患に効果を示す可能性が示唆されてきました。

水素吸入は多くの疾患で予防・改善に有効な可能性が報告されており、大変注目を集めています。

ここでは2つの研究報告を見ていきましょう。

水素が放射線関連心疾患の線維化や心肥大を予防する

2020年に報告された研究では、ラットを用いて放射線関連心疾患におけるマイクロRNA(miRNA)と呼ばれる分子が水素水の投与でどう影響するかを調べています3)

マイクロRNAは多くの種類があり、ここでは次の3種類を研究対象としました。

対象となったマイクロRNAとその作用
  • miRNA-1:抗心肥大作用
  • miRNA-15b:抗心肥大・抗線維化・抗酸化作用
  • miRNA-21:線維化を促す作用

水素水の投与群(水素群)と通常水の投与群(通常群)で比較した結果は次のとおりです。

通常群に比べて水素群で…
  • miRNA-1の低下が有意に改善した。(抗心肥大作用が改善)
  • miRNA-15bの低下が有意に改善した。(抗心肥大・抗線維化・抗酸化作用が改善)
  • miRNA-21の上昇が有意に抑制された。(線維化が抑制)

したがって、水素が放射線関連心疾患の線維化や心肥大を予防する可能性が示唆されたといえます。

水素吸入は水素水よりも吸収効率が良いため、同研究を水素吸入で行った場合でも有効な可能性が期待できるでしょう。

水素が放射線関連心疾患の生存率を改善する

この研究ではマウスを用いて、放射線関連心疾患が水素による保護効果を認めるかを調べています4)

マウスを水素水投与群(水素群)と通常水投与群(対照群)に分けて照射前24時間で飲用させ、7Gyの放射線を照射して観察しました。

結果は次のとおりです。

研究の主な結果
  • 照射後30日目の生存率:水素群80%、対照群10%であり、有意に生存率が改善した。
  • 100日後の組織評価:水素群で心筋組織は変化なし。対照群の40%で心筋細胞の変性が有意に見られた。
  • 100日後の組織評価:水素群が対照群に比べて有意に線維化が抑制された。

これらの結果から水素が放射線関連心疾患の生存率を改善し、放射線からの保護作用を示す可能性が示唆されたといえます。

水素水での研究ですが、吸収率の高い水素吸入ではより生存率の改善が図れるかもしれません。

【私はこう考える】水素吸入と放射線関連疾患

放射線関連心疾患への水素吸入の有効性を見てきました。

水素が放射線関連心疾患の生存率を改善し、実際に線維化や心肥大を抑制する可能性が示されたのは大きな成果だといえます。

ただし放射線関連心疾患と水素水の関係性については研究が見られましたが、水素吸入での研究は今のところ実施されていません。また、ヒトでの臨床試験も存在せず、動物実験の研究のみであることからヒトで有効性があるとは断定できません。

しかしながら水素の投与経路でも吸収率がはるかに高い水素吸入では、放射線関連心疾患でも有効である可能性は低くはないでしょう。

今後、水素吸入がヒトでの放射線関連心疾患を予防や改善する可能性が報告されるのを期待しています。

参考文献
  1. 抗がん剤治療関連心筋障害の診療における 心エコー図検査の手引|一般社団法人 日本心エコー図学会
  2. Sárközy, M., Varga, Z., Gáspár, R., Szűcs, G., Kovács, M. G., Kovács, Z. Z. A., Dux, L., Kahán, Z., & Csont, T. (2021). Pathomechanisms and therapeutic opportunities in radiation-induced heart disease: from bench to bedside. Clinical research in cardiology : official journal of the German Cardiac Society110(4), 507–531. https://doi.org/10.1007/s00392-021-01809-y
  3. Kura, B., Kalocayova, B., LeBaron, T. W., Frimmel, K., Buday, J., Surovy, J., & Slezak, J. (2019). Regulation of microRNAs by molecular hydrogen contributes to the prevention of radiation-induced damage in the rat myocardium. Molecular and cellular biochemistry457(1-2), 61–72. https://doi.org/10.1007/s11010-019-03512-z
  4. Qian, L., Cao, F., Cui, J., Wang, Y., Huang, Y., Chuai, Y., Zaho, L., Jiang, H., & Cai, J. (2010). The potential cardioprotective effects of hydrogen in irradiated mice. Journal of radiation research51(6), 741–747. https://doi.org/10.1269/jrr.10093

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