一言まとめ
水素吸入とビタミンC摂取は、ラットの運動後に生じる酸化ストレスを減少させるが、ビタミンCはミトコンドリアの新生を阻害する一方、水素吸入はそれを阻害しない。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、ビタミンC摂取と異なり、ミトコンドリア新生を妨げず、運動による酸化ストレスを効果的に軽減する可能性がある。
研究の背景と目的
激しい運動は筋肉において酸化ストレスを引き起こし、細胞にダメージを与える可能性がある。この酸化ストレスは、活性酸素種(ROS)によって引き起こされ、ROSは細胞内のシグナル伝達にも関与しているため、過剰に抑えると健康への有益な影響が失われる可能性がある。ビタミンCのような抗酸化剤は、これらのROSを抑制するが、その結果、ミトコンドリアの新生を妨げる可能性が指摘されている。一方で、水素吸入は選択的に特定の酸化物質を除去し、他の重要なシグナル伝達に影響を与えないとされる。本研究は、水素吸入とビタミンC摂取がラットの運動後に与える影響を比較することを目的とした。
研究方法
81匹の8週齢の雄のSprague-Dawleyラットを3つのグループに分け、それぞれ運動のみ(CE群)、運動+ビタミンC(VCE群)、運動+水素吸入(HE群)の処置を行った。各群は、運動前、運動直後、運動4時間後の3つのタイムポイントでサンプリングを行い、筋肉のミトコンドリア新生マーカーや酸化ストレスマーカーの測定を行った。水素吸入は、運動30分前に1時間、4%濃度の水素ガスを吸入させる方法で行われた。
研究結果
Appendix(用語解説)
- ROS: 活性酸素種。細胞内で生成される反応性の高い酸素を含む分子。
- PGC-1α: ミトコンドリア新生の主要な調節因子。
- NRF-1, NRF-2: 核呼吸因子1、2。ミトコンドリア遺伝子の転写を制御。
- TFAM: ミトコンドリア転写因子A。ミトコンドリアDNAの複製と転写を制御。
- MDA: マロンジアルデヒド。脂質過酸化の指標。
- AGEs: 糖化最終産物。タンパク質の酸化損傷の指標。
論文情報
タイトル
A Comparison of the Antioxidant Effects Between Hydrogen Gas Inhalation and Vitamin C Supplementation in Response to a 60-Min Treadmill Exercise in Rat Gastrocnemius Muscle(ラット腓腹筋における60分間のトレッドミル運動に対する水素ガス吸入とビタミンC補給の抗酸化効果の比較)
引用元
Chaoqun, L., Yuqi, Z., Shi, Z., Zhenghui, Y., & Li, W. (2021). A Comparison of the Antioxidant Effects Between Hydrogen Gas Inhalation and Vitamin C Supplementation in Response to a 60-Min Treadmill Exercise in Rat Gastrocnemius Muscle. Frontiers in physiology, 12, 745194. https://doi.org/10.3389/fphys.2021.745194
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