水素による涙液分泌促進と涙腺保護効果

3分で読める詳細解説

結論

水素サプリメントは安全かつ低コストで、涙液の安定性とドライアイ症状を大幅に改善し、涙腺の分泌機能も促進する可能性がある。

研究の背景と目的

ドライアイは世界中で有病率が上昇しており、高齢化や情報機器の使用増加などが原因と考えられている。ドライアイは涙液の不安定性や高浸透圧によって引き起こされるが、両方の病態に同時に作用する治療薬はまだない。そこで本研究は、様々な疾患に有効性が報告されている水素に着目し、涙液動態とドライアイ治療における水素の効果を明らかにすることを目的とした。

研究方法

• 健常人10名（男性6名、女性4名、平均35.3歳）を対象に、水素サプリメントと水（対照）をクロスオーバー法でランダムに単回投与し、投与前後の呼気中水素濃度、涙液の安定性（涙液層破壊時間と涙液メニスカス高）、自覚症状を評価した。
• 健常マウスに水素サプリメントを単回投与し、経時的に涙液分泌量を測定した。
• ストレス負荷によるドライアイモデルマウスを作製し、水素サプリメントを1日1回5日間経口投与。涙液分泌量と涙腺の活性酸素種（ROS）を測定した。

研究結果

• 水素サプリメント摂取30分後、呼気中水素濃度が有意に上昇した（p=0.006）。
• 涙液層破壊時間は、水素サプリメント摂取30分後に有意に延長した（p=0.00041）。涙液メニスカス高は、摂取30分後と60分後に有意に上昇した（p=0.042）。
• 自覚症状のうち、眼精疲労と乾燥感は水素サプリメント摂取30分後に有意に改善した（p=0.014, p=0.049）。
• 健常マウスでは、水素サプリメント投与10分後から涙液分泌量が有意に増加し、60分後まで持続した。
• ドライアイモデルマウスでは、水素サプリメント投与により涙液分泌量の減少が有意に抑制された（Day 2, Day 5: p=0.007）。また、涙腺のROS蛍光強度も有意に低下した（p=0.00016）。
• 本研究の限界として、サンプルサイズが小さいこと、ヒト試験で長期的な効果を検証できていないことが挙げられる。

Appendix（用語解説）

• ドライアイ：涙液の質や量が低下することで、眼表面の乾燥や炎症を引き起こす疾患。
• 涙液層破壊時間：涙液の安定性を評価する指標。涙液層が破壊されるまでの時間が長いほど涙液が安定していることを示す。
• 涙液メニスカス高：涙液の量を反映する指標。高さが高いほど涙液量が多いことを示す。
• 活性酸素種（ROS）：酸化ストレスの原因となる分子。過剰に産生されると細胞や組織にダメージを与える。

論文情報

タイトル

Randomized, crossover clinical efficacy trial in humans and mice on tear secretion promotion and lacrimal gland protection by molecular hydrogen（水素による涙液分泌促進と涙腺保護に関するヒトと動物での無作為化クロスオーバー臨床効果試験）

引用元

Kubota, M., Kawashima, M., Inoue, S., Imada, T., Nakamura, S., Kubota, S., Watanabe, M., Takemura, R., & Tsubota, K. (2021). Randomized, crossover clinical efficacy trial in humans and mice on tear secretion promotion and lacrimal gland protection by molecular hydrogen. Scientific reports, 11(1), 6434. https://doi.org/10.1038/s41598-021-85895-y

専門家のコメント

まだコメントはありません。