研究論文
Impact of hydrogen-rich gas mixture inhalation through nasal cannula during post-exercise recovery period on subsequent oxidative stress, muscle damage, and exercise performances in men(男性における運動後回復期の経鼻カニューレによる水素ガス混合物吸入が、その後の酸化ストレス、筋損傷、運動パフォーマンスに及ぼす影響)

水素吸入が筋損傷・運動パフォーマンスに及ぼす影響

一言まとめ

健常男性8名を対象に、激しい運動後の回復期に水素ガス吸入を行ったところ、通常の空気吸入と比べて酸化ストレスマーカーの上昇が抑えられ、垂直跳びのパフォーマンス低下も軽減された。

3分で読める詳細解説

結論

運動後の回復期における水素ガス吸入は、酸化ストレスによる身体へのダメージを軽減し、その後の運動パフォーマンスの低下を抑える可能性がある。

研究の背景と目的

激しい運動は活性酸素の過剰産生を引き起こし、身体の酸化ストレスを高める。これにより疲労や組織損傷、パフォーマンス低下などが生じる。一方、水素分子には選択的に活性酸素を除去する抗酸化作用があることが知られている。そこで本研究は、運動後の回復期に水素ガス吸入を行うことで、運動誘発性の酸化ストレスとその悪影響を軽減できるかを検証した。

研究方法

  • 対象者: 健康な男性8名(平均年齢20.9±0.3歳、最大酸素摂取量53.7±2.9 mL/kg/分)
  • 介入方法:
    • 水素ガス組成:68.0%水素、32.0%酸素、流量30.0 mL/s
    • 推定吸気中濃度:水素最大4.08%、酸素最大21.57%
    • 吸入時間:運動後回復期60分間
    • 吸入方法:鼻カニューレを使用
  • 対照群の設定: プラセボ(通常空気、400m上空相当)との二重盲検クロスオーバー試験
  • 運動プロトコル: 75%最大酸素摂取量強度での30分間トレッドミル走行+スクワットジャンプ(5セット×10回)
  • 評価方法: 運動前後での血液・尿サンプル採取、カウンタームーブメントジャンプ、膝伸筋最大随意等尺性収縮力、10秒・30秒スプリントサイクリングテストを実施

研究結果

  • 酸化ストレス指標: 尿中8-OHdG排泄率の増加が水素吸入により有意に抑制された(プラセボ群では約5倍増加、水素群では約3倍増加、P < 0.05)
  • 運動パフォーマンス: カウンタームーブメントジャンプ高の低下が水素吸入により有意に抑制された(プラセボ群では有意に低下、水素群では低下せず、P < 0.05)
  • 相関関係: 尿中8-OHdG排泄率の変化とカウンタームーブメントジャンプパフォーマンスの低下に強い負の相関が認められた(r = -0.78, P < 0.01)
  • その他の指標: 血清中の酸化ストレスマーカー(d-ROMs、BAP)、筋損傷マーカー(クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素)、膝伸筋力、サイクリングパフォーマンスには有意差なし
  • 研究の限界として、水素ガス発生器が酸素も同時に産生するため水素単独の効果を完全に分離できない点、評価時点が1回のみである点、サンプルサイズが小さい点が挙げられている。

Appendix(用語解説)

  • VO2max: 最大酸素摂取量。全身持久力の指標。
  • 8-OHdG(8-ヒドロキシデオキシグアノシン): DNAが酸化的損傷を受けた際に生成される物質で、尿中に排泄される。酸化ストレスの信頼性の高いバイオマーカー
  • カウンタームーブメントジャンプ: 一度しゃがんでから跳び上がる動作で、下肢の爆発的パワーを評価する運動テスト
  • d-ROMs: 血清中の活性酸素代謝物を測定する酸化ストレスの指標
  • BAP: 生体の抗酸化能力を示す指標
  • クレアチンキナーゼ: 筋肉が損傷した際に血液中に放出される酵素で、筋損傷のマーカー
  • 活性酸素種(ROS): 体内で産生される反応性の高い酸素分子で、過剰になると細胞を損傷する

論文情報

タイトル

Impact of hydrogen-rich gas mixture inhalation through nasal cannula during post-exercise recovery period on subsequent oxidative stress, muscle damage, and exercise performances in men(男性における運動後回復期の経鼻カニューレによる水素ガス混合物吸入が、その後の酸化ストレス、筋損傷、運動パフォーマンスに及ぼす影響)

引用元

Shibayama, Y., Dobashi, S., Arisawa, T., Fukuoka, T., & Koyama, K. (2020). Impact of hydrogen-rich gas mixture inhalation through nasal cannula during post-exercise recovery period on subsequent oxidative stress, muscle damage, and exercise performances in men. Medical gas research10(4), 155–162. https://doi.org/10.4103/2045-9912.304222

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