研究論文
Hydrogen decreases susceptibility to AngII-induced atrial fibrillation and atrial fibrosis via the NOX4/ROS/NLRP3 and TGF-β1/Smad2/3 signaling pathways(水素はNOX4/ROS/NLRP3およびTGF-β1/Smad2/3シグナル経路を介してアンジオテンシンII誘発性心房細動と心房線維化の感受性を減少させる)

水素は心房細動と心房線維化を抑制する

一言まとめ

ラットにアンジオテンシンII(AngII)を28日間連続投与し、一部には2%水素を1日6時間吸入させたところ、水素投与群では心房細動(AF)の感受性と心房線維化が減少し、酸化ストレスの軽減やNLRP3インフラマソーム活性化の抑制が観察された。

3分で読める詳細解説

結論

水素はAngII誘発性の心房細動と心房線維化を抑制し、心房リモデリングを改善する。

研究の背景と目的

心房細動(AF)は不整脈の一種で、脳卒中や心不全の原因となる疾患である。従来の薬物治療や外科的治療には副作用や限界があり、新たな治療法が求められている。本研究では、水素分子が持つ抗酸化・抗炎症作用に注目し、アンジオテンシンII(AngII)によって引き起こされる心房細動および心房線維化に対する抑制効果を検証した。

研究方法

  • 対象:Sprague Dawley(SD)雄性ラット(体重180-200g)
  • 群分け:対照群、H2群、AngII群、AngII+H2群(各群10匹)
  • 介入方法:
    • AngIIおよびAngII+H2群:浸透圧ミニポンプを用いてAngII(1,080 μg/kg/24時間)を28日間投与
    • H2およびAngII+H2群:2%水素を含む箱内で1日6時間、28日間連続で吸入
    • 対照群とAngII群:通常の空気で飼育
  • 評価方法:
    • 心エコー検査と血圧測定
    • 電気生理学的検査(AF感受性とAF持続時間)
    • 組織学的分析(Sirius Red染色、Masson’s Trichrome染色、免疫組織化学)
    • 酸化ストレスマーカー(MDA、SOD活性)測定
    • ウェスタンブロッティング
    • qRT-PCR
    • 細胞培養実験(HL-1心房心筋細胞とラット線維芽細胞)

研究結果

  • AF感受性と持続時間の減少
    • AngII+H2群ではAngII群と比較してAF感受性(約75%減少、p < 0.001)とAF持続時間(約65%減少、p < 0.01)が有意に減少
    • 左心房径(LAD)も有意に減少(p < 0.05)
  • 酸化ストレスの抑制
    • AngII+H2群ではAngII群と比較してMDA濃度の減少とSOD活性の増加
    • NOX4発現とp22phox発現の減少
    • 心房心筋細胞におけるROS産生の減少
  • NLRP3インフラマソーム活性化の抑制
    • AngII+H2群ではNLRP3、ASC、Caspase1-p20、成熟IL-1βレベルの減少
    • Ca2+処理異常の改善(CaMKIIリン酸化とRyR2リン酸化の減少)
    • イオンチャネル(Kv1.5、Kir3.1、Kir3.4)発現異常の改善
  • 心房線維化の減少
    • AngII+H2群では左心房線維化面積の減少
    • コラーゲンI、コラーゲンIII、α-SMA発現の減少
    • TGF-β1/Smad2/3経路関連タンパク質(潜在型TGF-β1、活性型TGF-β1、p-Smad2、p-Smad3、p-TGFβR I、p-TGFβR II)の発現減少
  • 線維芽細胞の増殖と遊走の抑制
    • AngII+H2群では線維芽細胞の増殖率と遊走率の減少
    • TGF-β1分泌と活性化の抑制
  • 研究の限界
    • AngIIはNOX2とNOX4を介してROSを産生するが、本研究ではNOX4とそのサブユニットのみを調査
    • Kv1.5、Kir3.1、Kir3.4の発現上昇を転写と翻訳の両面で確認したが、実験条件からIKurとIKAch電流変化の直接観察ができなかった
    • 水素の応用に関する現在の知識は動物と細胞実験に限られており、臨床試験に適用できない

Appendix(用語解説)

  • 心房細動(AF):不規則な心房の電気的活動による心臓不整脈の一種
  • アンジオテンシンII(AngII):血圧上昇や心臓リモデリングを促進するホルモン
  • NADPH酸化酵素(NOX4):活性酸素種(ROS)を産生する酵素
  • 活性酸素種(ROS):細胞のストレスや損傷を引き起こす不安定な酸素分子
  • NLRP3インフラマソーム:炎症反応を制御する細胞内のタンパク質複合体
  • TGF-β1/Smad2/3経路:細胞の増殖、分化、線維化などに関与するシグナル伝達経路
  • 心房リモデリング:心房の構造的・電気的な変化で、心房細動の原因となる
  • CaMKII:カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIの略で、心筋細胞のカルシウム処理に関与
  • RyR2:心筋の筋小胞体からのカルシウム放出を制御するリアノジン受容体

論文情報

タイトル

Hydrogen decreases susceptibility to AngII-induced atrial fibrillation and atrial fibrosis via the NOX4/ROS/NLRP3 and TGF-β1/Smad2/3 signaling pathways(水素はNOX4/ROS/NLRP3およびTGF-β1/Smad2/3シグナル経路を介してアンジオテンシンII誘発性心房細動と心房線維化の感受性を減少させる)

引用元

Zhang, B., Hou, J., Liu, J., He, J., Gao, Y., Li, G., Ma, T., Lv, X., Dong, L., & Yang, W. (2025). Hydrogen decreases susceptibility to AngII-induced atrial fibrillation and atrial fibrosis via the NOX4/ROS/NLRP3 and TGF-β1/Smad2/3 signaling pathways. PloS one20(1), e0310852. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0310852

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