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研究報告

水素吸入は肺がん患者の腫瘍進行を抑制し副作用も軽減する

更新日:2026/02/11
Hydrogen therapy can be used to control tumor progression and alleviate the adverse events of medications in patients with advanced non-small cell lung cancer(水素療法は進行非小細胞肺がん患者の腫瘍進行を抑制し、薬剤の副作用を軽減することができる)
進行非小細胞肺がん患者58名に1日4〜6時間の水素吸入を単独または標準治療と併用した結果、対照群と比較して無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、薬剤に関連する有害事象も軽減された。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、進行非小細胞肺がんの進行を抑え、薬剤の副作用を軽減する可能性がある。

研究の背景と目的

非小細胞肺がん(NSCLC)は肺がんの約85%を占め、発見時には進行していることが多い 。進行NSCLCの標準治療である化学療法、標的療法、免疫療法は、重篤な有害事象(副作用)を引き起こすことがあり、治療の中断や変更を余儀なくされる場合がある 。しかし、これらの有害事象を軽減する有効な方法は確立されていない 。 本研究は、進行NSCLC患者を対象に、水素吸入が腫瘍の進行を制御し、同時に標準治療による有害事象を軽減できるかどうかを調査することを目的とした。

研究方法

  • 対象者: 58名の進行(ステージIIIまたはIV)非小細胞肺がん(NSCLC)患者。
    • 選定基準: KPSスコア(全身状態の指標)が70以上、予測生存期間が6ヶ月以上など。
    • 除外基準: 脳転移、心臓ペースメーカー使用者、重度の心肺機能不全など。
  • 介入方法:
    • 水素濃度: 66.7%の水素と33.3%の酸素の混合ガス。
    • 流量: 最大 3 L/min。
    • 実施時間・頻度・期間: 1日4〜6時間、毎日。5ヶ月間、またはがんが増悪(再発)するまで継続。
  • 対照群の設定: 対象者58名を以下の5つのグループに分けた。
    1. 対照群 (n=10): 水素0%、酸素33.3%のガス(シャム処置)を吸入。
    2. 水素単独群 (n=10): 水素吸入のみ。
    3. 免疫療法 + 水素群 (n=10): 免疫療法と水素吸入を併用。
    4. 標的療法 + 水素群 (n=18): 標的療法と水素吸入を併用。
    5. 化学療法 + 水素群 (n=10): 化学療法と水素吸入を併用。
  • 評価方法:
    • 無増悪生存期間 (PFS): 毎月のCTまたはMRI検査で、腫瘍が増悪するまでの期間を評価。
    • 腫瘍関連症状: 咳、呼吸困難、胸痛などの症状の変化を評価。
    • 薬剤関連有害事象: CTCAE 5.0(有害事象の共通評価基準)に基づき、治療薬による有害事象を評価。

研究結果

  • 無増悪生存期間 (PFS) の延長:
    • 16ヶ月の追跡期間後、対照群のPFSは平均4.4pm±1.2ヶ月だった。
    • 水素単独群のPFSは平均7.9±2.2ヶ月で、対照群より長かった。
    • 免疫療法併用群 (10.1±2.6ヶ月)、標的療法併用群 (9.4±3.1ヶ月)、化学療法併用群 (8.5±3.0ヶ月) は、いずれも対照群と比較してPFSが有意に延長した。
  • 腫瘍関連症状の改善:
    • 対照群では、5ヶ月間で咳、呼吸困難、胸痛などの症状の有病率が有意に増加した (P=0.0023など)。
    • 一方、水素単独群では、これらの症状の有病率が有意に減少した (P=0.0014など)。
  • 薬剤関連有害事象の軽減:
    • 免疫療法 + 水素群: 咳や胸痛 (P=0.0013)、発疹 (P=0.0021)、肝胆道系疾患 (P=0.0064)、めまい、頭痛 (P=0.0111) などの有病率が有意に減少した。
    • 標的療法 + 水素群: 発熱性好中球減少症 (P=0.0026)、悪心・嘔吐 (P=0.0051)、発疹 (P<0.0001)、不眠症 (P=0.0144)、口腔粘膜炎 (P=0.0007) などの有病率が有意に減少した。
    • 化学療法 + 水素群: 発熱性好中球減少症 (P=0.0086)、貧血・血小板減少症 (P=0.0009)、便秘・下痢 (P=0.0053)、食欲不振 (P=0.0129) などの有病率が有意に減少した。
  • 考察と限界:
    • 本研究は、水素吸入が進行NSCLC患者のPFSを延長し、標準治療による多くの有害事象を軽減することを示した初めての臨床報告である。
    • 水素単独群でもPFSが延長したことから、水素自体が独立して肺がん細胞の増殖を抑制する可能性が示唆された。これは、水素ががん細胞の増殖や転移を抑制することを示した基礎研究(細胞実験や動物実験)の結果とも一致する。
    • 研究の限界として、登録された患者数が比較的少ない点(全体で58名)が挙げられる。より正確な効果を検証するには、さらに大規模な研究が必要である。

Appendix(用語解説)

  • 非小細胞肺がん (NSCLC): 肺がんの種類の一つで、肺がん全体の約85%を占める。
  • 無増悪生存期間 (PFS): 治療を開始してから、がんが再び悪化(増大や転移)するまでの期間のこと。がん治療の効果を測る重要な指標の一つ。
  • 標的療法: がん細胞の増殖に関わる特定の分子(遺伝子変異など)だけを狙い撃ちする薬剤治療。
  • 免疫療法: 患者自身の免疫細胞が、がん細胞を攻撃する力を高める治療法。
  • 有害事象: 薬剤の使用や治療によって生じる、身体にとって好ましくないあらゆる症状や検査値の異常のこと。副作用もこれに含まれる。
  • KPS (Karnofsky Performance Status): 患者の日常生活における活動能力やセルフケアの度合いを示すスコア。100(正常)から0(死亡)まであり、数値が高いほど身体の状態が良いことを示す。
  • P値 (P-value): 統計的な信頼性を示す数値。研究結果の差が「偶然」か「意味のある差」かを判断するために用いる。一般的に、この値が0.05(P<0.05)より小さい場合、その差は偶然ではなく統計的に「有意差あり」と判断される。
  • シャム処置 (Sham procedure): 偽の治療(プラセボ)のこと。この研究では、水素を含まないガス(酸素33.3%)を吸入させることで、水素吸入の真の効果を科学的に比較するために行われた。

論文情報

タイトル

Hydrogen therapy can be used to control tumor progression and alleviate the adverse events of medications in patients with advanced non-small cell lung cancer(水素療法は進行非小細胞肺がん患者の腫瘍進行を抑制し、薬剤の副作用を軽減することができる)

引用元

Chen, J. B., Kong, X. F., Mu, F., Lu, T. Y., Lu, Y. Y., & Xu, K. C. (2020). Hydrogen therapy can be used to control tumor progression and alleviate the adverse events of medications in patients with advanced non-small cell lung cancer. Medical gas research, 10(2), 75–80. https://doi.org/10.4103/2045-9912.285560

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公開日:2024/08/10
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2024/08/10
最終更新日:2026/02/11
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