研究論文
水素吸入は非アルコール性脂肪肝を改善する

水素吸入は非アルコール性脂肪肝を改善する

一言まとめ

高脂肪・高糖質食で誘発したメタボリックシンドロームラットに対し、4%または67%の水素ガス吸入を10週間行ったところ、体重増加や脂肪蓄積、脂質代謝異常、肝機能障害などが用量依存的に改善した。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、メタボリックシンドロームに伴う非アルコール性脂肪性肝疾患の予防・治療に有効である可能性がある。

研究の背景と目的

メタボリックシンドロームは、糖尿病や心血管疾患のリスクを高める一連の代謝異常である。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)はメタボリックシンドロームの肝臓における表現型であり、近年患者数が増加している。水素分子は様々な疾患に対する治療効果が報告されているが、NAFLDに対する効果は不明である。そこで本研究では、メタボリックシンドロームモデルラットを用いて、水素吸入のNAFLDに対する効果を検証した。

研究方法

  • 6週齢の雄性SDラットを、通常食群、高脂肪高糖質食(HFFD)群、HFFD+4%水素吸入群、HFFD+67%水素吸入群の4群に分けた(n=10-12)。
  • 水素吸入は1日2時間行った。
  • 10週間の実験期間終了後、体重や臓器重量、血液生化学検査、肝臓の脂質含量、肝組織の病理学的評価などを行った。

研究結果

  • 水素吸入により、HFFDによる体重増加、内臓脂肪蓄積、肝肥大、BMI上昇が抑制された。
  • 水素吸入群では、HFFDによる肝臓のトリグリセリドとコレステロールの蓄積が抑制された。
  • 水素吸入群では、HFFDによるALT、ASTの上昇が抑制され、肝機能障害が改善した。
  • 水素吸入群の肝組織では、HFFDによる脂肪滴の蓄積や炎症性変化が軽減していた。
  • これらの効果の多くは、水素濃度に依存して現れた。

Appendix(用語解説)

  • メタボリックシンドローム:内臓脂肪型肥満、高血圧、脂質異常症、高血糖が重複する病態。
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD):アルコール摂取によらない肝臓への脂肪蓄積を特徴とする疾患。単純性脂肪肝から肝硬変まで幅広い病態を含む。
  • ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ):肝障害で上昇する血液中の酵素。

論文情報

タイトル

Hydrogen inhalation alleviates nonalcoholic fatty liver disease in metabolic syndrome rats(水素吸入はメタボリックシンドロームラットの非アルコール性脂肪性肝疾患を改善)

引用元

Liu, B., Xue, J., Zhang, M., Wang, M., Ma, T., Zhao, M., Gu, Q., & Qin, S. (2020). Hydrogen inhalation alleviates nonalcoholic fatty liver disease in metabolic syndrome rats. Molecular medicine reports22(4), 2860–2868. https://doi.org/10.3892/mmr.2020.11364

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