研究論文
脳内出血モデルラットにおける水素吸入の神経保護作用

脳内出血モデルラットにおける水素吸入の神経保護作用

一言まとめ

脳内出血モデルラットにおいて水素吸入を行ったところ、神経保護作用を示した。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、その抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用により、脳内出血モデルラットにおいて神経保護作用を示した。

研究の背景と目的

水素吸入療法は、これまでに脳損傷モデルにおける複数の研究で、その神経保護作用が報告されてきた。そこで本研究では、脳内出血モデルラットにおける水素吸入の効果を検証するとともに、その機序を調査した。

研究方法

45匹のラットを対象とし、15匹ずつ3グループ(シャム群、脳内出血群、脳内出血+水素吸入群)にランダムに振り分けた。水素は自発呼吸による投与とした。脳内出血後6時間、24時間、48時間での死亡率、神経学的欠損と各種バイオマーカーを比較した。

研究結果

  • 脳内出血モデルラットでは、脳浮腫と神経学的欠損が示された。
  • 脳内出血モデルラットでは、炎症反応とアポトーシスとを示すマーカー(TNF-α、IL-1β、カスパーゼ3)が上昇し、BDNFが減少した。
  • 水素吸入により、酸化ストレス、炎症反応、神経学的欠損、アポトーシス関連遺伝子の発現レベルが有意に改善した。
  • 脳内出血後24時間でそれぞれのマーカーの値を改善したが、48時間では有意差はみられなかった。
  • 脳内出血後の損傷した脳皮質の染色像では、出血、壊死、損傷したニューロンの数など、神経変性特性の程度は脳内出血+水素吸入群で脳内出血群に比べて有意に減少した。
  • 脳内出血後の早期脳損傷における神経保護作用を示した。

Appendix(用語解説)

  • 抗アポトーシス作用:プログラムされた細胞死を抑制する作用。
  • 神経保護作用:神経細胞の損傷や死を防ぐ作用。
  • 脳浮腫:脳組織に過剰な水分が貯留し、脳が腫れる状態。
  • 神経学的欠損:神経系の障害により生じる機能の低下や喪失。
  • TNF-α:炎症性サイトカインの一種で、炎症反応を促進する。
  • IL-1β:炎症性サイトカインの一種で、炎症反応を促進する。
  • カスパーゼ3:アポトーシスを実行する酵素の一種。
  • BDNF:脳由来神経栄養因子。神経細胞の生存や機能維持に重要な役割を果たす。
  • 酸化ストレス:活性酸素種と抗酸化システムのバランスが崩れた状態。
  • 神経変性:神経細胞の構造や機能が progressiveに障害される過程。
  • 早期脳損傷:脳損傷発生後、急性期に生じる病態。

論文情報

タイトル

Neuroprotective effects of hydrogen inhalation in an experimental rat intracerebral hemorrhage model(脳内出血モデルラットにおける水素吸入の神経保護作用)

引用元

Choi, K. S., Kim, H. J., Do, S. H., Hwang, S. J., & Yi, H. J. (2018). Neuroprotective effects of hydrogen inhalation in an experimental rat intracerebral hemorrhage model. Brain research bulletin142, 122–128. https://doi.org/10.1016/j.brainresbull.2018.07.006

専門家のコメント

三國ユウジ 先生のアバター

三國ユウジ 先生

本研究では、脳内出血モデルラットにおける水素吸入による早期の神経保護作用が示された。水素吸入の神経系の保護作用については、以前より注目されており、様々な報告がなされています。水素吸入が、先進医療として検討されたのも脳虚血に対する神経保護作用でした。本研究でも、水素分子の抗アポトーシス作用、抗炎症作用、抗酸化作用が神経に保護的に作用したことを報告しており、これまでの研究を裏付けるものです。

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