研究論文
乳がん組織における界面水の水素結合

乳がん組織における界面水の水素結合

一言まとめ

本研究では、ヒト乳がん組織、DNA、脂質における界面水の振動特性をラマン分光法と赤外分光法を用いて分析した。その結果、水道水とは異なる特徴的な水素結合状態が観測され、水分子の振る舞いが界面の種類によって大きく変化することが明らかになった。

3分で読める詳細解説

結論

乳がん組織、DNA、脂質の界面に存在する水は、水道水とは異なる特徴的な振動特性を示す。

研究の背景と目的

生体組織や生体高分子の界面に存在する水(界面水)は、その構造や機能に大きな影響を及ぼすが、詳細はよく分かっていない。本研究では、界面水の振動特性を分析し、界面の種類による水分子の振る舞いの違いを明らかにすることを目的とした。

研究方法

ヒト乳がん組織(非がん部位とがん部位)、1本鎖および2本鎖DNA、脂質(DPPC)を試料とした。ラマン分光法と赤外分光法を用いて、OH伸縮振動の領域のスペクトルを測定し、スペクトルの形状や位置を詳細に解析した。

研究結果

  • 水道水では3258cm-1と3410cm-1に2つのOH伸縮振動バンドが見られたが、界面水では低波数側にシフトした。
  • DNAでは1本鎖、2本鎖の順に大きくシフトし、DPPCではDNAより小さいシフトだった。
  • 一方、乳がん組織の薄層切片では3311cm-1に1本のバンドのみが観測された。
  • OH伸縮振動バンドの分裂の消失は、界面との相互作用による水分子の振動の非結合や選択則の変化が原因と推察された。
  • 乳がん組織では正常組織に比べ、脂肪組織が少なく界面水の量が多いことがラマンイメージングからも示された。

Appendix(用語解説)

  • OH伸縮振動: 水分子のO-H結合の伸び縮み振動。水素結合の状態を反映する。
  • ラマン分光法: 分子の振動や回転に起因する非弾性散乱光を測定する分光法。
  • 赤外分光法: 分子の振動に起因する赤外光の吸収を測定する分光法。
  • DNA: デオキシリボ核酸。遺伝情報を担う生体高分子。
  • DPPC: ジパルミトイルホスファチジルコリン。細胞膜の主要な脂質成分の一つ。

論文情報

タイトル

Hydrogen bonds of interfacial water in human breast cancer tissue compared to lipid and DNA interfaces(乳がん組織における界面水の水素結合 – 脂質およびDNA界面との比較)

引用元

Abramczyk, H. , Brozek-Pluska, B. , Surmacki, J. , Jablonska-Gajewicz, J. and Kordek, R. (2011) Hydrogen bonds of interfacial water in human breast cancer tissue compared to lipid and DNA interfaces. Journal of Biophysical Chemistry, 2, 159-170. https://doi.org/10.4236/jbpc.2011.22020.

専門家のコメント

まだコメントはありません。

この記事は役に立ちましたか?

役に立ったら、下のボタンで教えてください。

関連記事

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン 会員登録
会員登録
最新情報をいち早くお届け!
LINE友だち追加
最新情報をいち早くお届け!
LINE友だち追加