水素ガスが肺腺がんの細胞死を促進

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結論

水素は、肺腺がん細胞のアポトーシスを促進し、腫瘍サイズを縮小させた。

研究ハイライト

本研究は、in vitro , in vivo 両方についての実験研究である。

In vitro（試験管内実験）

• In vitro では、対数増殖期のA549細胞を対照群, 20%, 40%, 60%水素で処理する群の合計４つに分けて、それぞれをフローサイトメトリーで分析した。
• 結果は、対象群と比べて水素で処理した各群のアポトーシス率は有意に高く、水素によるアポトーシス誘導が示唆された。
• 遺伝学的解析によって、XIAP、BIRC2、BIRC3、BAX、PIK3CD、およびATMの細胞アポトーシスへの関与が示され、本研究では、XIAP, BIRC3, BAXを対象とした。
• さらなる解析では、XIAPとBIRC3の発現が対照群に比べて水素群で有意に抑えられていたが、BAXについては対照群と水素群で差がなかった。

in vivo（生体実験）

• 一方、in vivo では、A549細胞懸濁液を15匹のヌードマウス15匹に投与し、対照群、水素吸入群（1日4時間60%水素吸入）、シスプラチン群（4mg/kg）にそれぞれ5匹ずつランダムに振り分け、３週間後に腫瘍組織を取り出して腫瘍の大きさを計測した。
• 水素吸入群とシスプラチン群では対照群と比較して有意に腫瘍体積が小さくなっていた。
• 免疫組織化学染色の結果では、対照群に比べてXIAPの発現のみ水素吸入群とシスプラチン群で抑制されていたが、その他は対照群と差がなかった。
• 光学濃度では、水素吸入群では対照群と比べて有意にXIAPとBAIRC3が低下がしめされたが、BAXについて有意差はなかった。

Figure1

A549細胞のアポトーシス（対照群、水素ガス20％群、40％群、60％群）

対照群と比較していずれも有意にA549細胞のアポトーシスが増加している。

また、水素濃度上昇に応じてアポトーシスが促進されている。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas promotes apoptosis of lung adenocarcinoma A549 cells through X-linked inhibitor of apoptosis and baculoviral inhibitor of apoptosis protein repeat-containing 3（水素ガスは、X連鎖不活性化アポトーシス蛋白質およびバキュロウイルス由来アポトーシス阻害蛋白質リピート含有3蛋白質を介して、肺腺がんA549細胞のアポトーシス(細胞死)を促進する）

引用元

Zhang, Y., Chen, G., Yan, Z., Wang, L., & Wang, D. (2022). Hydrogen gas promotes apoptosis of lung adenocarcinoma A549 cells through X-linked inhibitor of apoptosis and baculoviral inhibitor of apoptosis protein repeat-containing 3. Journal of cancer research and therapeutics, 18(5), 1380–1386. https://doi.org/10.4103/jcrt.jcrt_1137_21

専門家のコメント

三國ユウジ 先生

水素ガスがアポトーシス抑阻害因子のうちXIAPとBIRC３の発現を低下させることでアポトーシスを誘導している可能性が示されました。近年、アポトーシス阻害因子は、多くの腫瘍に関連しているとして注目されています。例えばBIRC3は胆嚢がんの予後に関与するとされる他、口腔扁平上皮がんでも発現が亢進しています。さらなる研究が必要ですが、水素吸入は、肺腺がんに限らず、がんの治療に広く有効な可能性があります。