研究論文
The impact of hydrogen inhalation therapy on blood reactive oxygen species levels: A randomized controlled study(水素吸入療法が血中活性酸素種レベルに与える影響:ランダム化比較試験)

水素吸入は活性酸素レベルを下げ、24時間効果が持続する

一言まとめ

活性酸素レベルが高い37名を対象としたランダム化比較試験で、1時間の水素吸入が血中の活性酸素を有意に減少させ、その効果は24時間後も持続、むしろ増強されることが示された。

3分で読める詳細解説

結論

1時間の水素吸入は、血中の活性酸素レベルを24時間後まで持続的に減少させる効果がある。

研究の背景と目的

私たちの体は、呼吸によって酸素を取り込みエネルギーを作る過程で、副産物として「活性酸素種(ROS)」を生成する。 活性酸素は、適量であれば体を守る働きもするが、過剰に発生すると細胞やDNAを傷つけ、「酸化ストレス」という状態を引き起こす。 この酸化ストレスは、生活習慣病や炎症、老化など、様々な病気の原因と考えられている。
近年、この酸化ストレスを軽減する治療法として「水素分子(H2)」が注目されている。 水素分子は宇宙で最も小さく軽い分子で、体の隅々の細胞まで浸透し、特に有害な活性酸素を選択的に除去するユニークな特性を持つ。 水素を体内に取り込む方法には、水素水を飲む、水素の点滴、そして水素を直接吸入する方法などがあるが、特に「水素吸入」は、急性の酸化ストレスに対して迅速かつ効果的な方法として期待されている。
しかし、これまで水素吸入が血中の活性酸素レベルそのものにどのような影響を与えるかを直接的に検証した研究は少なかった。 そこで本研究は、水素吸入療法が血中の活性酸素レベルを実際に減少させる効果があるのかを、科学的に信頼性の高い「ランダム化比較試験」という手法を用いて明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • 対象者: 血中の活性酸素レベルが高い(d-ROMsテストの値が350 U.CARR超)と判断された37名。 対象者は、ランダムに「水素吸入を行うグループ(18名)」と「水素吸入を行わない対照グループ(19名)」に分けられた。
  • 介入方法:
    • 水素吸入グループは、1時間の水素吸入を1回実施した。
    • 流量: 毎分1447 ccの水素分子と723 ccの酸素が生成される装置を使用した。
    • 頻度・期間: 1回のみ。
  • 対照群の設定: 水素吸入を一切行わないグループが設定された。ただし、偽の吸入装置(プラセボ)は使用されていない。
  • 評価方法: 「d-ROMsテスト」という血液検査を用いて、酸化ストレスの指標となる活性酸素代謝物の量を測定。 測定は、介入前(ベースライン)、介入直後、介入24時間後の3つの時点で行われた。

研究結果

  • 主要な結果:
    • 水素吸入グループでは、吸入前と比較して、血中の活性酸素レベルが吸入直後(p=0.001458)、および24時間後(p=0.000006)のいずれの時点でも、統計的に意味のあるレベルで有意に減少した。
    • 活性酸素レベルの平均減少率は、吸入1時間後で15.0%、24時間後で23.3%であり、時間が経過した24時間後の方がより大きな減少を示した。
    • 一方、水素吸入を行わなかった対照グループでは、活性酸素レベルに有意な変化は見られなかった。
  • 考察:
    • 水素吸入の効果が、吸入直後よりも24時間後にさらに顕著になったという結果は、水素が体内に長時間留まり、持続的に作用した可能性を示唆している。 水素は細胞の奥深くまで浸透し、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアなどで発生する有害な活性酸素を選択的に中和することで、酸化ストレスを軽減すると考えられている。
  • 研究の限界:
    • 本研究の著者らは、限界点として、参加者数が37名と比較的少なかったこと、対照グループで偽の吸入装置(プラセボ)が使用されなかったため、思い込みによる影響(プラセボ効果)を完全に排除できなかったこと、コストの制約から吸入が1回のみであったことを挙げている。

Appendix(用語解説)

  • 活性酸素種 (ROS): 私たちの体がエネルギーを作る過程などで自然に発生する、反応性の高い酸素を含む分子の総称。 適量であれば免疫機能や細胞間の情報伝達に必要だが、過剰になると細胞やDNAを傷つけ、老化や様々な病気の原因となる「酸化ストレス」を引き起こす。
  • 酸化ストレス: 体内で活性酸素が過剰に発生し、それを除去する抗酸化作用とのバランスが崩れ、活性酸素が優位になった状態。 多くの病気や老化の根本的な原因の一つと考えられている。
  • d-ROMsテスト: 血液中に含まれる活性酸素代謝物(ROMs)の量を測定することで、体内の酸化ストレスの度合いを客観的に評価する検査法。 このテストの数値が高いほど、酸化ストレスが強い状態であることを示す。
  • ランダム化比較試験 (RCT): ある治療法や薬の効果を科学的に検証するため、研究対象者をランダム(無作為)に複数のグループに分け、その効果を比較する研究手法。 客観性が高く、医学研究において最も信頼性の高い方法の一つとされる。

論文情報

タイトル

The impact of hydrogen inhalation therapy on blood reactive oxygen species levels: A randomized controlled study(水素吸入療法が血中活性酸素種レベルに与える影響:ランダム化比較試験)

引用元

Chair, M., AlAani, H., Lafci Fahrioglu, S., Ben Hamda, C., Fahrioglu, U., & Degheidy, T. (2024). The impact of hydrogen inhalation therapy on blood reactive oxygen species levels: A randomized controlled study. Free radical biology & medicine222, 601–606. https://doi.org/10.1016/j.freeradbiomed.2024.07.010

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