呼吸器系
【医師監修】難治性疾患「肺静脈閉塞症」に挑む!水素吸入の可能性とは

【医師監修】難治性疾患「肺静脈閉塞症」に挑む!水素吸入の可能性とは

《この記事の執筆者》

肺静脈閉塞症は、肺の血管が狭くなり血液の流れが阻害されることで、酸素供給が不足し、深刻な呼吸困難や右心不全を引き起こす難病です。

この疾患は診断が難しく、根本的な治療法は肺移植に限られています。最近注目されている水素吸入療法は、酸化ストレスや炎症を抑える効果があり、肺静脈閉塞症の予防や症状改善に役立つ可能性が示唆されています。

本記事では、肺静脈閉塞症の原因や症状などの基礎知識から、水素吸入がどのように予防や改善に役立つ可能性が示唆されているのか、最新の研究をもとに詳しく解説します。

肺静脈閉塞症の概要

肺静脈閉塞症の概要

肺静脈閉塞症は、肺の血管が狭くなり、肺に血液を送り込む圧力が高くなることで、体全体への酸素の供給が低下する病気です。この状態を「肺高血圧」といい、肺や心臓に負担をかけることになります。

肺静脈閉塞症は診断が難しく、治療法も限られているため、指定難病に分類されています。

肺静脈閉塞症の主な原因

肺静脈閉塞症の正確な原因は、まだ明らかになっていません。

しかし、現状ではいくつかの要因が関連していると考えられています。

遺伝的要因

まず、遺伝的要因が強く疑われています。

家族内で発症するケースがあり、遺伝的な素因が関与している可能性があります。【1,2】

環境要因

タバコの喫煙有無も要因の1つとして挙げられます。

肺静脈閉塞症は、タバコを吸う人に多く発症する傾向があると言われています。【1】

年齢・性別要因

肺静脈閉塞症は幅広い年代の方に発症します。

大人の場合には、男性にやや多く見られる一方で、15歳未満の場合には男女差はないと報告されています。【1】

薬剤による要因

また、がんに対する化学療法薬の一部、特にミトマイシンCなどが、肺静脈閉塞症を引き起こす場合があると報告されています。【3】

まだ正確な原因は解明されていないものの、上記のようにいくつかの要因が関連していること、また、肺の組織に対する酸化ストレスや炎症も重要な要因と考えられています。【3】

肺静脈閉塞症の主な症状

息切れ、疲労感、胸痛、さらにはむくみが代表的な症状です。

これらは運動や活動中に悪化し、病気が進行すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

さらに、肺への血液の流れが悪くなると、心臓の右側が過剰な負担を受け、右心不全(うしんふぜん)が発生することがあります。右心不全とは、心臓の右側が全身から血液を肺に送り込む機能が低下する状態です。これによりむくみや呼吸困難がさらに悪化します。【1】

肺静脈閉塞症の標準的な治療

現状では根本的な治療法として肺移植が最も効果的とされています。

肺移植が適応される前段階では、在宅酸素療法や利尿薬による対症療法によって症状の軽減を目指します。

また、病気の進行を抑えるためには、安静や禁煙、専門医による定期的な医療管理が重要です。

水素吸入は肺静脈閉塞症の予防・改善に効果はある?

水素吸入は肺静脈閉塞症の予防・改善に効果はある?

水素吸入療法は、近年注目されている療法の一つで、抗酸化作用と抗炎症作があるとされています。

これらの作用により、肺静脈閉塞症の予防や症状の改善に役立つ可能性が示唆されています。具体的にどのような研究報告がされているのかについて、ここで解説していきます。

肺静脈閉塞症の予防の可能性

肺静脈閉塞症は、酸化ストレスや炎症が重要な要因と考えられており、水素吸入療法はこれらを抑制することで予防に役立つ可能性があります。

酸化ストレスが肺血管内皮を傷つけることで、静脈の狭窄や閉塞が進行しますが、水素吸入によって活性酸素種(ROS)を減少させることで、これらのダメージを軽減できます。

具体的には、Zhangらの研究で、水素吸入がミトマイシンC誘発の肺静脈閉塞症モデルにおいて、肺血管の狭窄を防ぎ、炎症を抑える効果が確認されています【3】。この結果、水素ガスは酸化ストレスを軽減し、血管内皮の健康を保つことで、肺静脈閉塞症の発症リスクを低減する可能性が示唆されています【4】。

肺静脈閉塞症の症状改善の可能性

すでに肺静脈閉塞症を発症している場合でも、水素吸入療法が症状の改善に役立つ可能性があります。

Zhangらの研究によれば、水素吸入によって肺血管の狭窄を軽減し、血流を改善することで、呼吸機能の改善が期待されています。これにより、息切れや疲労感といった症状が緩和され、患者の生活の質が向上する可能性が示されています【3】。

さらに、水素吸入による抗酸化作用と抗炎症作用が、肺の血管を保護し、炎症を抑えることで、血流の改善が促進されます。その結果、肺高血圧の軽減や呼吸機能の向上が期待できるかもしれません。加えて、現行の標準治療である酸素療法と併用することでさらに効果が高まる可能性もあると考えられます【4】。

【私はこう考える】水素吸入と肺静脈閉塞症

肺静脈閉塞症は、正確な原因が特定されておらず、現行の効果的な治療としては肺移植と治療のハードルが高い疾患です。

この肺静脈閉塞症に対して、水素吸入療法は新たな治療法として期待されています。

これまでの動物実験の結果から、抗酸化作用と抗炎症作用により、肺血管の狭窄や閉塞を防ぎ、酸素供給の改善に寄与する可能性が示されています。特に、ミトマイシンCなどの薬剤による肺静脈閉塞症に対して水素吸入療法が有効であるという報告は、水素吸入療法の人間への応用に期待が持てます。

現在、肺静脈閉塞症に対する標準的な治療法は限られています。そのような中、水素吸入療法は副作用が少なく、他の治療法と併用することでさらなる効果が期待されています。

ただし、現時点では動物実験に基づいたデータが主であり、臨床試験の結果を待つ必要があります。今後の研究で、人間における水素吸入療法の効果が確立されれば、肺静脈閉塞症の予防や治療の新たな選択肢として大きな進展となるでしょう。また、肺静脈閉塞症の原因の解明についても課題として残っています。

水素吸入療法の安全性と有効性が確認されれば、現在の肺移植に頼らざるを得ない患者にとって、大きな希望となることでしょう。今後の臨床試験に注目しながら、患者に対する補助的な治療法として慎重に導入していくことが求められます。

参考文献
  1. 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(指定難病87)
  2. 肺毛細血管腫症(PCH) 肺静脈閉塞症(PVOD)診療ガイドライン2022 日本肺高血圧・肺循環学会
  3. Zhang, C., Xing, Y., Wu, X. et al. Inhalation of hydrogen gas protects against mitomycin-induced pulmonary veno-occlusive disease. Respir Res 25, 281 (2024). https://doi.org/10.1186/s12931-024-02906-y
  4. Fu Z, Zhang J. Molecular hydrogen is a promising therapeutic agent for pulmonary disease. J Zhejiang Univ Sci B. 2022 Feb 15;23(2):102-122. English. doi: 10.1631/jzus.B2100420. PMID: 35187885; PMCID: PMC8861563. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8861563/

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