精神・神経系
【医師監修】水素吸入療法は認知症の予防と改善に役立つ?

【医師監修】水素吸入療法は認知症の予防と改善に役立つ?

《この記事の執筆者》

日本では65歳以上の高齢者の6〜7人に1人(15%程度)が認知症とされています。1)

進行すると食事や家事などの日常生活ができなくなり生活に支障をきたすだけでなく、家族や友人など身近で大切な人の名前や存在もわからなくなってしまう悲しい病気でもあります。

そんな認知症に対して水素の抗酸化作用が効果があるのではないかと近年注目を集めています。

本記事では、水素吸入療法が認知症の予防や改善にどういった貢献をするのかについて最新研究をもとに解説していきます。

水素吸入療法が役立つかどうか理解できるようになっていますので、ご自身または身近な人を認知症から守りたい方はぜひ最後までご覧ください。

認知症について

認知症とは、脳の神経細胞の働きが悪くなり、記憶、判断力、注意力などが低下していく病気です。

年齢を重ねるごとに発症しやすくなり、日本では65歳以上の高齢者の15%程度が認知症であるとされています。1)

認知症にはさまざまなタイプがありますが、約70%はアルツハイマー型認知症であり、次いで血管性認知症が多くなっています。

まずは認知症の特徴について詳しく見てみましょう。

認知症の主な原因や症状

認知症の中で最も多くを占めるのはアルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβやリン酸化タウという特殊なたんぱく質が溜まることで発症すると考えられています。

記憶力の低下から始まり、次第に食事や家事などの日常生活ができなくなっていくのが特徴です。

次に多い認知症は脳卒中が原因となる血管性認知症です。脳卒中によって脳の神経細胞にダメージが生じることで認知機能の低下が引き起こされ、麻痺や言語障害などを伴うこともあります。

その他にも、認知症にはαシヌクレインというたんぱく質が脳に蓄積するレビー小体型認知症、脳腫瘍など脳の病気が原因となる前頭側頭型認知症など多くの種類があります。

認知症の標準的な治療

現在のところ、認知症を根本的に治す方法は見つかっていません。脳の機能低下を抑えて進行を緩やかにするための薬物療法が行われますが、効果には個人差があります。

2023年12月には軽度なアルツハイマー型認知症に対して、脳に蓄積したアミロイドβを減少させるレカネマブという新薬が日本でも販売開始されました。2) しかし、実際に使用できる認知症患者は限られており、進行を抑える効果にとどまるのが現状です。

水素吸入は認知症の予防・改善に効果はある?

認知症には根本的な治療や予防の方法はなく、発症した場合は進行を抑えるための薬物療法を行いながら症状と上手く付き合って生活していくことになります。レカネマブのような新しい治療法の開発も進められていますが、近年の研究では水素が認知症の予防や改善効果があるとの報告がされました。

水素吸入と認知症の関係を示した研究結果をご紹介します。

酸化ストレスを抑制し認知機能低下を防ぐ

マウスを使用して行われた研究によれば、体を拘束されたマウスは酸化ストレスによって記憶力や学習能力が低下することが分かっています。しかし、水素水(水素ガスを溶かした水)を与えたマウスでは体を拘束しても認知機能の低下を防げたことが発表されました。3)

酸化ストレスは脳の海馬という記憶を司る部位の神経細胞の増殖を抑えるとされています。体内に取り込まれた水素は酸化ストレスを抑える働きがあるため、海馬へのダメージを軽減して認知機能の維持に役立ったと考えられています。

この結果から、水素水は認知症の予防に有用である可能性が示唆されました。水素吸入も水素分子を体内に取り込むことができるため、認知症予防に役立つ可能性があります。

特にアルツハイマー型認知症は脳の酸化ストレスが発症や進行の要因ともされており、水素吸入は症状の進行を抑える働きも期待できるのです。

血管を健康に保ち血管性認知症の予防・改善

水素水を飲んだマウスは血管の壁の老化が抑えられたとする研究結果も発表され、水素は動脈硬化の予防に役立つと考えられています。4)

認知症の中でも2番目に多い血管性認知症の原因となる脳卒中の多くは動脈硬化によって引き起こされるため、水素は血管性認知症の予防に役立つと言えます。

また、急性脳梗塞を発症した患者に水素吸入を行った群と行っていない群を比較した研究では、水素吸入を行った群の方が明らかに脳へのダメージや神経障害の重症度が軽減したと認められています。5)

このことからも、水素吸入は血管性認知症の発症予防や改善に一定の効果がある可能性が示唆されました。

補助治療としての可能性

水素吸入がアルツハイマー型認知症の補助治療として有効である可能性が示唆されています。

2023年にアルツハイマー病患者273名を対象とした後ろ向き研究では、治療薬であるドネペジルを投与した群と治療薬+水素吸入の群に分けて水素吸入の効果が調べられました6)。

その結果、水素吸入を行なった郡では水素吸入をしなかった群に比べて、認知評価スコアと日常生活活動の有意な改善が見られたと報告しています。

この研究ではサンプル数や評価指標などの点から、有効性を確立するにはさらなる研究が必要です。しかし、水素吸入が認知症の補助治療として可能性を秘めていることが示されたのは、期待が持てると言えるでしょう。

【私はこう考える】水素吸入療法と認知症

水素吸入は2007年に人体に有害な活性酸素を取り除く効果があると発表されて以来、さまざまな病気の治療に応用されつつあります。認知症にも一定の予防や改善効果があると示唆される研究結果が明らかになってきました。

現在のところ認知症を根本的に予防したり改善したりする治療法はありません。進行を抑えるための薬物療法も効果には個人差があり、目立った効果がないケースも多々あります。マウスを使用した研究や少数の患者を対象とした研究のみでは、水素吸入が確実に認知症の予防と改善に役立つと断言はできません。しかし、効果が期待できる可能性はあるでしょう。

もちろん、認知機能の低下による症状が強い場合は医師の診察や治療を受ける必要があります。しかし、水素吸入は活性酸素を取り除くことでその他の病気の予防や美容の維持にも効果が期待できます。認知症は多くの人がなる可能性のある病気。予防や改善対策の一つとして水素吸入を試してみるのもよいでしょう。

参考文献

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