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【医師監修】水素吸入で味覚障害を克服!放射線治療の副作用対策となりえるのか

【医師監修】水素吸入で味覚障害を克服!放射線治療の副作用対策となりえるのか

《この記事の執筆者》

放射線治療を受けると、多くの患者が味覚障害という辛い副作用に悩まされます。

食事が味わえなくなることで、闘病中の楽しみが失われ、食欲の低下にもつながりかねません。

そんな中、水素吸入が放射線治療による味覚障害の予防・改善に効果をもたらす可能性があることが研究で示唆されています。

本記事では、水素吸入がどのように酸化ストレスを緩和し、味覚障害の軽減に寄与するのかを詳しく解説します。また放射線治療と味覚障害の関係についても解説しますので、放射線治療の副作用の理解を深めるためにも、ぜひ最後までご覧ください。

放射線治療による味覚障害について

放射線治療による味覚障害について

放射線治療による味覚障害は、がん治療の選択肢として放射線治療を受けた患者さんに生じる副作用の1つです。

味覚障害が現れると、がんでの闘病中に楽しみの1つである食事をうまく味わえないことにつながります1)

結果として食欲が低下して、闘病生活のエネルギーを蓄えられなくなる可能性もあり、放置してはいけない症状です。

放射線治療による味覚障害の原因

放射線治療による味覚障害は、味覚を感じる部分、つまり舌に放射線が照射されて、傷つくことが原因だと考えられています。

主に口、のど、耳などの頭頸部がんで放射線治療を行った際に発症しやすいです1)

放射線治療を受けた人の66.5%が味覚障害を発症するといわれています2)

放射線治療による味覚障害の症状

放射線治療による味覚障害の症状として、次のような訴えが多いです1)

主な症状
  • 食べ物の味がわかりにくくなる
  • 苦味や金属のような味を感じる
  • 本来の味と違った味を感じる
  • 砂をかむような食感がする など

放射線治療が進むにつれて症状は強くなりますが、治療が終われば自然と良くなり、3〜4か月かけて少しずつ味覚が戻っていくことが多いです3)

人によって症状の現れ方はそれぞれですが、食事を楽しむうえで悪影響となることは間違いないでしょう。

放射線治療による味覚障害の治療

味覚障害の症状が強くがん治療に耐えられないほどであれば、一旦治療を中断して味覚障害の対応に集中することもあります。

味覚障害には体内の亜鉛・鉄の量が関係しているといわれており、不足している栄養素を補うために飲み薬を処方することがあります1)

本人ができる対処法としては、次の3つが挙げられます。

家でできる対処法
  • 口腔ケア…やわらかい歯ブラシで1日に2〜4回ブラッシングをする。うがいをこまめに。
  • 口の中の保湿…あめやガムを食べて唾液の分泌を促す。口腔保湿剤を用いる。
  • 食事の工夫…食べたいときに食べたいものを、無理せず少量ずつ食べる。

水素吸入は放射線治療による味覚障害の予防・改善に効果はある?

水素吸入は放射線治療による味覚障害の予防・改善に効果はある?

放射線治療による味覚障害は決して珍しくない副作用であり、日々多くの研究で治療法が開発されています。

その1つに水素吸入があり、抗酸化作用や抗炎症作用など、多くの疾患で有効性が認められつつあります。

今回、放射線治療による味覚障害に水素吸入が有効な可能性が報告されたので、詳しく見ていきましょう。

水素が放射線治療による酸化ストレスを緩和した

この研究は2群間ランダム化比較臨床試験で、男性33名、女性16名の計49名の被験者が参加しました4)

被験者は肝臓のがんを発症しており、水素水投与群(水素群)と通常水投与群(対照群)に分けて放射線照射を7〜8週間行いました。水分はそれぞれ毎日1.5〜2L飲用するように指示されています。

酸化ストレスについて得られた結果は、次のとおりでした。

ヒドロペルオキシド濃度※1BAP※2の値
対照群治療前後で約2倍に上昇治療前後で約半分と有意に減少
水素群治療前後で変化なし治療前後で濃度が変わらず維持

※1ヒドロペルオキシド濃度は酸化ストレスを反映しており、※2BAPは抗酸化作用を持つグルタチオンペルオキシダーゼ・スーパーオキシドジスムターゼを統合した指標です。

この結果からは、水素が放射線治療による酸化ストレスを和らげたことが示されました。

酸化ストレスは細胞やDNAへダメージを与え、味覚障害を含めた放射線治療の副作用を誘発する原因ともなります。上記の研究で水素が酸化ストレスを軽減したと示されたことから、水素が放射線治療による味覚障害の予防や改善に有効である可能性が示されたとも言えるでしょう。

水素が放射線治療による味覚障害の症状を緩和した

実際、同研究において水素が放射線治療による味覚障害の緩和に役立つ可能性が示されています。

被験者のQOLやがん治療の効果に水素がどう影響するかを調べた結果は次のとおりです。

放射線治療6週間後
  • 吐き気と下痢の程度は対照群と水素群で差は見られなかった。
  • 食欲不振と味覚障害の程度は、水素群が対照群の約半分と有意に低かった。

また、肝臓がんへの放射線治療で完全・部分的な治療効果が認められたのは、対照群では24例中12例、水素群で25例中12例と同様の効果であったと報告されています。

これらの結果から、水素が放射線治療の効果を損なうことはなく、また味覚障害の副作用を予防・改善する可能性が示唆されたといえます。

水素吸入は水素水よりも吸収効率が良いため、より味覚障害を予防・改善できる可能性はあるかもしれません。

【私はこう考える】水素吸入と放射線による味覚障害

放射線治療による味覚障害における水素吸入の予防・改善効果について解説しました。

水素がヒトの臨床試験で放射線治療による酸化ストレスを軽減し、その上で味覚障害を予防・改善できる可能性が生まれたのは、今後の治療開発への大きな一歩だといえます。

ただし水素と放射線治療による味覚障害の関係性を調べた論文は、今のところ世の中に1つしか存在せず、2011年を最後に停滞しています。

水素吸入については現在報告がない状況です。

しかし水素水よりも高吸収率で有効だと考えられている水素吸入であれば、エビデンスの蓄積はそこまで難しい話ではないかもしれません。また、臨床試験の結果が得られていることから、ヒトでの有効性は低いとは言い難いでしょう。

今後、水素吸入がヒトでの放射線治療による味覚障害の予防・改善に有効である報告がなされていくことを期待しています。

参考文献
  1. 味覚やにおいの変化 もっと詳しく|がん情報サービス
  2. Hovan, A. J., Williams, P. M., Stevenson-Moore, P., Wahlin, Y. B., Ohrn, K. E., Elting, L. S., Spijkervet, F. K., Brennan, M. T., & Dysgeusia Section, Oral Care Study Group, Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC)/International Society of Oral Oncology (ISOO) (2010). A systematic review of dysgeusia induced by cancer therapies. Supportive care in cancer : official journal of the Multinational Association of Supportive Care in Cancer18(8), 1081–1087. https://doi.org/10.1007/s00520-010-0902-1
  3. 放射線治療で、口内が荒れ、いまだに味覚障害などが残っている。|静岡県立静岡がんセンター
  4. Kang, K. M., Kang, Y. N., Choi, I. B., Gu, Y., Kawamura, T., Toyoda, Y., & Nakao, A. (2011). Effects of drinking hydrogen-rich water on the quality of life of patients treated with radiotherapy for liver tumors. Medical gas research1(1), 11. https://doi.org/10.1186/2045-9912-1-11

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