腸内細菌叢と敗血症性脳症に対する水素治療の効果

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結論

水素分子治療は、敗血症性脳症マウスの認知機能を改善し、腸内細菌叢と代謝を調節する効果がある。

研究の背景と目的

敗血症性脳症（SAE）は、敗血症患者の予後不良の重要な原因であり、神経症状を伴う敗血症患者の死亡率は約20%高いことが報告されている。SAEの発症メカニズムは未解明であり、新たな治療法が求められている。腸内細菌叢のバランスの乱れがSAEに関与している可能性があり、本研究では、水素分子治療がSAEに与える影響を腸内細菌叢と代謝の観点から調査することを目的とした。

研究方法

• 動物モデル: 6-8週齢の雄性C57BL/6Jマウスを使用し、シャム手術群、SAEモデル群、SAE + 2%水素ガス吸入群（H2群）、SAE + 水素水群（HW群）にランダムに分けた。
• 治療方法:
  • 水素吸入: モデル確立後1時間および6時間後に1時間、2%濃度の水素ガスを吸入。
  • 水素水投与: マウスに0.01 ml/gの水素水を経口投与。
• 評価: フェアコンディショニングテスト、16S rDNA解析、LC-MS/MSメタボロミクス解析、ELISAキットによる炎症性サイトカイン測定を行った。

研究結果

• 認知機能と生存率の改善:
  • 水素吸入および水素水投与により、フェアコンディショニングテストで認知機能の改善が見られた（図1A,B）。
  • 水素分子治療を受けたマウスの生存率が有意に向上した（図1C）。
• 炎症反応の軽減:
  • 水素分子治療により、脳および血中の炎症性サイトカイン（TNF-α、IL-6、HMGB1）のレベルが有意に低下した（図1D-F）。
• 腸内細菌叢の回復:
  • 水素吸入および水素水投与により、腸内細菌叢の構成が大幅に変化し、腸内の有益菌の増加と有害菌の減少が観察された（図2C,D）。
• メタボロミクス解析結果:
  • 水素分子治療後、血中および脳内の代謝物プロファイルが有意に変化し、特に有益な代謝物の増加が確認された（図6A,B）。
  • KEGG経路解析により、水素分子治療がSAEに影響を与える複数の代謝経路が明らかになった（図7A,B）。

Appendix（用語解説）

• 腸内細菌叢: 腸内に存在する細菌の集まり。健康維持に重要な役割を果たす。
• 16S rDNA解析: 細菌の16SリボソームRNA遺伝子を対象とした遺伝子解析手法。細菌の同定と分類に使用される。
• LC-MS/MS: 液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた手法。複雑な混合物中の成分を分離し、質量を測定する。
• ELISA: 酵素免疫測定法。特定の抗原や抗体を検出するための実験技術。

論文情報

タイトル

Effect of molecular hydrogen treatment on Sepsis-Associated encephalopathy in mice based on gut microbiota（腸内細菌叢に基づく敗血症性脳症に対する水素分子治療の効果）

引用元

Han, Q., Bai, Y., Zhou, C., Dong, B., Li, Y., Luo, N., Chen, H., & Yu, Y. (2023). Effect of molecular hydrogen treatment on Sepsis-Associated encephalopathy in mice based on gut microbiota. CNS neuroscience & therapeutics, 29(2), 633–645. https://doi.org/10.1111/cns.14043

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