一言まとめ
LPS(リポ多糖)による気管支肺異形成(BPD)モデルラットに対し、42%の水素ガスを1日4時間吸入させたところ、胎盤の炎症が抑制され、新生児の肺発達障害や死亡率が改善した。その分子メカニズムとして、TLR4-NFκB-IL6/NLRP3シグナル経路の抑制が示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、LPSによるBPDモデルラットにおいて、胎盤のTLR4-NFκB-IL6/NLRP3シグナル経路を抑制することで炎症を軽減し、新生児の予後を改善する。
研究の背景と目的
BPDは未熟児の主要な合併症であり、有効な治療法が確立されていない。胎盤は炎症制御に重要な役割を果たすことから、本研究では、LPSによるBPDモデルラットに対する水素吸入の効果と、その分子メカニズムにおける胎盤の役割を検討した。
研究方法
妊娠16.5日目のSDラットに、LPS (1μg) を羊水内投与してBPDモデルを作製。LPS+H2群には、42%の水素ガスを1日4時間吸入させた。新生児の予後を評価し、コントロール群、LPS群、LPS+H2群の胎盤における炎症レベルを比較した。また、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析や、qRT-PCR、ウェスタンブロット、ELISAによる分子メカニズムの検証を行った。
研究結果
Appendix(用語解説)
- BPD(気管支肺異形成):早産児に多い慢性肺疾患。肺の発達が未熟な状態で生まれ、人工呼吸器などの使用により肺に炎症が起こり、正常な肺の発達が阻害される。
- LPS(リポ多糖):グラム陰性菌の細胞壁成分。炎症反応を引き起こす。
- TLR4(Toll様受容体4):自然免疫に関与する受容体の一つ。LPSを認識し、炎症性サイトカインの産生を促す。
- NF-κB(核内因子κB):炎症反応に関与する転写因子。
- インフラマソーム:炎症性サイトカインの産生を制御する細胞内タンパク質複合体。
論文情報
タイトル
Hydrogen gas inhalation ameliorates LPS-induced BPD by inhibiting inflammation via regulating the TLR4-NFκB-IL6/NLRP3 signaling pathway in the placenta(水素ガス吸入は、胎盤におけるTLR4-NFκB-IL6/NLRP3シグナル伝達経路を介した炎症抑制により、LPS誘発性のBPDを改善する)
引用元
Zhang, Y., Ren, X., Zhang, L., Sun, X., Li, W., Chen, Y., Tian, Y., Chu, Z., Wei, Y., Yao, G., & Wang, Y. (2024). Hydrogen gas inhalation ameliorates LPS-induced BPD by inhibiting inflammation via regulating the TLR4-NFκB-IL6/NLRP3 signaling pathway in the placenta. European journal of medical research, 29(1), 285. https://doi.org/10.1186/s40001-024-01874-9
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