健康全般
【医師監修】水素吸入で活性酸素をコントロール!最新科学が示す健康法?

【医師監修】水素吸入で活性酸素をコントロール!最新科学が示す健康法?

《この記事の執筆者》

「活性酸素」や「酸化ストレス」という言葉は、健康意識が高い方であれば1度は聞いたことのある言葉でしょう。なんとなく良くないというイメージをお持ちの方も多いと思います。

しかし、活性酸素には、私たちの体に欠かせない重要な役割もあるのはご存知でしたか?

本記事では、最新の研究結果を交えながら、活性酸素の正体とその影響、そして注目の水素吸入がもたらす抗酸化効果について詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、皆様の健康管理にお役立てください。

活性酸素とは?

活性酸素とは、文字通り活性化した(反応性が高い状態に変化した)酸素のことです。

我々は、大気中の酸素を利用して生命活動を維持しています。呼吸によって体内に取り込んだ酸素の数%が活性酸素として存在しています。1)

体内で活性酸素を産生する役割を担うのは、ミトコンドリアという小器官です。ミトコンドリアは細胞内小器官といわれ、全身の細胞の中で様々な働きをしています。2)

活性酸素には、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、ペルオキシナイトライトなど様々な種類があります。3)

活性酸素の役割

この活性酸素は、細胞間のシグナル伝達や遺伝子発現に関与するほか、免疫機能においては、異物を攻撃する武器として機能するなど重要な役割を果たします。

また、今年2024年の2月には、活性酸素が私たちの記憶の形成に不可欠であることも報告されました。4)

つまり、活性酸素は人体に欠かせない存在といえます。

過剰な活性酸素が人体に及ぼす影響

私たちが生きていく上で活性酸素は欠かせないものですが、良いことばかりではありません。

活性酸素のうち悪玉活性酸素と呼ばれるヒドロキシラジカルやペルオキシナイトライトは、細胞を傷害してしまいます(酸化ストレス)。また、善玉活性酸素といえども、過剰に産生された場合には、その一部が悪玉活性酸素に変化して細胞を傷害することがあり、悪影響を及ぼすことがあります。

活性酸素の細胞障害性は、慢性炎症、心血管疾患のほか、動脈硬化や糖尿病をはじめとした多くの生活習慣病をもたらす要因です1)

活性酸素が過剰に産生される状況として、激しい運動、紫外線や放射線などの外部からの刺激、過度のストレスなどが挙げられます。人体には、こうした活性酸素による悪影響に対抗する手段として、過剰な産生を抑える仕組みや、活性酸素による傷害を修復する仕組みが備わっています(抗酸化能力)。

水素吸入が持つ活性酸素に対する効果

2007年の『水素は、細胞に有害な活性酸素を選択的に減少させることで、治療的な抗酸化物質として作用する』と題した研究で、水素が悪玉活性酸素を除去する効果を持つことが報告されました。5)

具体的には、悪玉活性酸素であるヒドロキシラジカル、ペルオキシナイトライトを除去する一方で、生体シグナルとして重要なスーパーオキサイドアニオンラジカル、過酸化水素、一酸化窒素は除去しないことが報告されました。

これをきっかけに水素の抗酸化作用が注目され、今日に至るまで様々な研究が進められています。

動物実験での抗酸化作用

動物実験では、多数の研究により、水素吸入をすることで体内の活性酸素(及び酸化ストレス)が低下することが報告されました。

いくつか代表的なものを挙げると、以下のようなものがあります。

動物実験での水素の抗酸化力
  • 脳梗塞モデルラットを対象とした研究で、2%水素吸入により、虚血再灌流で生じるヒドロキシラジカルが水素ガスによって減少した。5)
  • 特発性肺線維症モデルラットを対象とした研究で、2%水素吸入により、活性酸素の上昇が抑制された。6)
  • 血管損傷モデルマウスを対象とした研究で、1.3%水素吸入により、活性酸素が減少した。7)

他にも多数報告されており、動物実験においては水素吸入による体内の活性酸素除去の効果は、確立に近いところまで来ていると言えそうです。

ヒトを対象とした研究報告

人を対象とした実験でも、同様に体内に取り込まれた水素が抗酸化作用を発揮し、体内の活性酸素が低下することを示した研究結果が報告されています。

ヒト実験での水素の抗酸化力
  • 心肺停止後症候群の患者5名を対象とした研究では、2%水素吸入によって、酸化ストレスマーカー(d-ROMs, BAP, 8-OHdG)が低下した。8)
  • 51人を対象として2%水素吸入を4週間実施した研究では、酸化ストレスマーカー(ROS, NO)の低下が示された。9)

ヒトを対象とした研究は、動物実験に比べてまだ研究数が少ない部分がありますが、続々と水素吸入の抗酸化作用についての研究報告が発表されてきています。

ヒトを対象とした研究の方がエビデンスとしては信頼性は高いので、今後更なる研究で人での有効性が確立されることを期待しています。

水素が高い抗酸化力と安全性を持つ理由

先述したように、水素吸入は体内の活性酸素が除去する高い抗酸化力がある上に、副作用もほとんど報告されておらず、安心して利用できる点が大きな特徴として挙げられます。

水素が安全性が高く、抗酸化力が高い理由としては、以下の2つが挙げられます。

理由①:
水素が持つ選択性

選択性とは、上述のように活性酸素のうち反応性の強い悪玉活性酸素を選択的に減少させる特性のことです。

これは、ビタミンCなどの他の抗酸化物質にはない特徴で、水素は免疫調整など体に必要な活性酸素は除去せずにいてくれます。

理由
水素が持つ透過性

また、水素には透過性という特徴があります。

透過性とは、水素分子が非常に小さく、細胞膜を容易に通過するため、細胞内のミトコンドリアで産生される活性酸素に速やかにアプローチすることができる特性のことです。

脳には、血液脳関門と呼ばれる脳に有害物質や病原体が侵入することを防ぐバリア構造がありますが、水素はこの関門もすり抜けて脳に到達し作用すると考えられています。10, 11)

これらの特徴のために、水素は特に優れた抗酸化作用を有すると考えられています。

今日までの研究から、体内の悪玉活性酸素を低下させる効果を水素が持つことは確立されつつあります。現在は、さらに一歩踏み込み、その抗酸化作用が実際に病気の予防や健康につながるか、最適な量はどの程度かを研究している段階です。

水素吸入で活性酸素が減ると起こること

水素吸入により、酸化ストレスを効果的に抑制することで、症状や検査データの改善がみられた研究結果は多く報告されています。そのうちのいくつかをご紹介します。

脊髄損傷

脊髄損傷の病態では、中枢神経系に対する一時的な機械的損傷のほか、過剰な活性酸素産生による二次的損傷が問題と考えられています。42日間の水素吸入によって、神経細胞が大幅に保たれたことが報告されています。12)

関節リウマチ

好中球などの免疫細胞により炎症が生じ、酸化ストレスがかかることで増悪すると自己免疫疾患です。関節リウマチでは、細胞障害性の強い悪玉活性酸素の関与が指摘されています。水素投与により、関節リウマチのマーカー数値が改善したと報告されています。13)

この他にも活性酸素は多くの疾患に関与し、それぞれで酸化マーカーの改善、症状の改善などが報告されています。今後もこうした研究が盛んになされ、水素吸入が適する疾患、最適な吸入濃度などが明らかになっていくことでしょう。

まとめ

活性酸素は、私たちの体内で重要な役割を果たし、健康を維持するために欠かせない存在です。しかし、過剰な活性酸素は酸化ストレスを引き起こし、慢性炎症や心血管疾患、生活習慣病など様々な健康問題を引き起こす原因となります。

水素吸入は、悪玉活性酸素を選択的に除去することで、酸化ストレスを効果的に抑制する可能性があります。動物実験やヒトを対象とした研究でも、水素の抗酸化作用が確認されつつあり、健康維持や病気予防において有望な手段となるでしょう。

今後もさらなる研究が進むことで、水素吸入の最適な方法や効果が明らかになり、より多くの人々がその恩恵を受けることが期待されます。健康管理において、活性酸素とその制御についての知識を深め、水素吸入などの新しい方法を積極的に取り入れていくことが重要です。

参考文献
  1. 活性酸素と酸化ストレス|厚生労働省e-ヘルスネット
  2. ミトコンドリア|厚生労働省e-ヘルスネット
  3. 活性酸素|厚生労働省e-ヘルスネット
  4. 悪玉因子、活性酸素が記憶形成に必要であることを解明 ―抗酸化物質の過剰摂取に警鐘―|京都大学
  5. Ohsawa, I., Ishikawa, M., Takahashi, K., Watanabe, M., Nishimaki, K., Yamagata, K., Katsura, K., Katayama, Y., Asoh, S., & Ohta, S. (2007). Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature medicine13(6), 688–694. https://doi.org/10.1038/nm1577
  6. Gao, L., Jiang, D., Geng, J., Dong, R., & Dai, H. (2019). Hydrogen inhalation attenuated bleomycin-induced pulmonary fibrosis by inhibiting transforming growth factor-β1 and relevant oxidative stress and epithelial-to-mesenchymal transition. Experimental physiology104(12), 1942–1951. https://doi.org/10.1113/EP088028
  7. Kiyoi, T., Liu, S., Takemasa, E., Nakaoka, H., Hato, N., & Mogi, M. (2020). Constitutive hydrogen inhalation prevents vascular remodeling via reduction of oxidative stress. PloS one, 15(4), e0227582. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0227582
  8. Tamura, T., Suzuki, M., Hayashida, K., Kobayashi, Y., Yoshizawa, J., Shibusawa, T., Sano, M., Hori, S., & Sasaki, J. (2020). Hydrogen gas inhalation alleviates oxidative stress in patients with post-cardiac arrest syndrome. Journal of clinical biochemistry and nutrition67(2), 214–221. https://doi.org/10.3164/jcbn.19-101
  9. Rahman, M. H., Bajgai, J., Sharma, S., Jeong, E. S., Goh, S. H., Jang, Y. G., Kim, C. S., & Lee, K. J. (2023). Effects of Hydrogen Gas Inhalation on Community-Dwelling Adults of Various Ages: A Single-Arm, Open-Label, Prospective Clinical Trial. Antioxidants (Basel, Switzerland)12(6), 1241. https://doi.org/10.3390/antiox12061241
  10. 鈴木, 昌. (2022). 水素の臨床応用をめざして. Medical Gases, 24(1), 7-12. https://doi.org/10.32263/medicalgases.24.1_7
  11. 太田, 成男. (2015). 水素医学の創始,展開,今後の可能性:広範な疾患に対する分子状水素の予防ならびに治療の臨床応用へ向かって. Journal of Japanese Biochemical Society, 87(1), 82-90. https://doi.org/10.14952/SEIKAGAKU.2015.870082
  12. Chen, X., Cui, J., Zhai, X., Zhang, J., Gu, Z., Zhi, X., Weng, W., Pan, P., Cao, L., Ji, F., Wang, Z., & Su, J. (2018). Inhalation of Hydrogen of Different Concentrations Ameliorates Spinal Cord Injury in Mice by Protecting Spinal Cord Neurons from Apoptosis, Oxidative Injury and Mitochondrial Structure Damages. Cellular physiology and biochemistry : international journal of experimental cellular physiology, biochemistry, and pharmacology47(1), 176–190. https://doi.org/10.1159/000489764
  13. Ishibashi, T., Sato, B., Rikitake, M., Seo, T., Kurokawa, R., Hara, Y., Naritomi, Y., Hara, H., & Nagao, T. (2012). Consumption of water containing a high concentration of molecular hydrogen reduces oxidative stress and disease activity in patients with rheumatoid arthritis: an open-label pilot study. Medical gas research2(1), 27. https://doi.org/10.1186/2045-9912-2-27

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