研究論文
肝疾患における新たな選択肢としての水素治療

肝疾患における新たな選択肢としての水素治療

一言まとめ

本総説では、肝疾患に対する水素治療の投与方法、分子メカニズム、臨床応用について最新の知見を整理。水素は抗酸化・抗炎症作用などを介して肝機能を改善し、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、B型肝炎、肝腫瘍などの治療に有望であることが示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素は肝疾患の新たな治療選択肢として大きな可能性を秘めている。

研究の背景と目的

水素治療は副作用が少なく生体適合性が高いため、様々な疾患に有効性が報告されている。しかし、肝疾患における水素治療の現状については十分な整理がなされていない。そこで本総説では、肝疾患に対する水素治療の投与方法、分子メカニズム、臨床応用について最新エビデンスを概説することを目的とした。

研究方法

肝疾患における水素治療に関する基礎研究と臨床研究の文献を幅広く収集し、ナラティブレビューの形式で情報を整理した。特に、水素の投与方法、作用メカニズム、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、B型肝炎、肝腫瘍などの疾患への臨床応用に焦点を当てた。

研究結果

  • 水素治療の主な投与方法は、水素水の飲用、水素ガス吸入、水素注射の3つ。肝疾患では主に前2者が用いられる。
  • 水素の作用メカニズムとして、活性酸素種の選択的抑制、アポトーシスとオートファジーの調節、炎症の抑制、ミトコンドリアやタンパク質輸送体への作用などが示唆されている。
  • NAFLDモデル動物において、水素水の飲用により肝機能が改善し、肝発がんリスクが低下した。
  • B型肝炎患者において、通常治療に水素水飲用を加えることで酸化ストレスが改善し、肝機能やウイルス量の改善傾向が見られた。
  • 肝腫瘍の放射線治療中の患者において、水素水の飲用により血中の活性酸素が減少し、QOLスコアが上昇した。
  • 肝移植時の虚血再灌流障害に対し、水素添加乳酸リンゲル液の門脈内投与が肝障害を軽減した。

Appendix(用語解説)

  • NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患):アルコール以外の原因で肝臓に脂肪が蓄積する病態の総称。
  • 虚血再灌流障害:臓器への血流が途絶えた後に再開したときに生じる組織障害。活性酸素の急激な増加が原因の一つ。

論文情報

タイトル

Hydrogen treatment: a novel option in liver diseases(水素治療:肝疾患における新たな選択肢)

引用元

Shi, J., Duncan, B., & Kuang, X. (2021). Hydrogen treatment: a novel option in liver diseases. Clinical medicine (London, England)21(2), e223–e227. https://doi.org/10.7861/clinmed.2020-0370

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