研究論文
水素吸入の心理生理学的効果の発現と連続使用の皮膚特性への影響

水素吸入の心理生理学的効果の発現と連続使用の皮膚特性への影響

一言まとめ

健康な女性を対象に水素吸入の効果を検証した研究。単回の吸入でストレス軽減や集中力向上が見られ、2週間の継続使用でストレスが軽減するとともに、肌のハリやシミが改善することが示された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は心身のストレスを和らげ、継続することで肌のハリやシミを改善する効果が期待できる。

研究の背景と目的

水素は、細胞ダメージの原因となる活性酸素を減らす働きがあるとして近年注目されている。しかし、人が水素を吸入した場合に心身や肌にどのような影響があるのか、詳しいメカニズムはまだよく分かっていない。また、多くの女性はストレスが肌トラブルにつながると感じている。

そこで本研究では、まず水素の単回吸入が人の心理状態や自律神経、脳活動に与える影響を調査した。次に、ストレスによる肌トラブルを自覚する女性を対象に、2週間の継続的な水素吸入が心理面および肌の状態を改善する効果があるのかを検証することを目的とした。

研究方法

本研究は、目的の異なる2つの試験で構成されている。

  • 対象者:
    • 単回吸入試験: 25歳から39歳の健康な女性22名 。
    • 継続吸入試験: 25歳から39歳の健康な女性22名。ストレスによる肌のハリ低下やくすみなどを自覚している人が選ばれた 。
  • 介入方法:
    • 流量: 水素と酸素の混合ガスとして1分あたり12mL。
    • 吸入時間・頻度:
      • 単回吸入試験: 5分間を1回。
      • 継続吸入試験: 1回5分間の吸入を1日5回、2週間継続。
  • 対照群の設定:
    • 単回吸入試験: クロスオーバー試験形式で、水素を発生させない同じ装置から空気を吸う場合を対照(コントロール)とした 。
    • 継続吸入試験: クロスオーバー試験形式で、2週間の水素吸入期間と、2週間の非吸入期間(通常のスキンケアのみ)を比較した 。
  • 評価方法:
    • 心理評価: 質問票(VAS、MMS、SCL30)を用いて、ストレス、気分、感情の変化を評価した 。
    • 生理学的評価: 瞳孔の反応や皮膚温度から自律神経の働きを、フリッカー値やNIRS(近赤外分光法)を用いて脳の疲労度や活動状態を測定した 。
    • 肌の評価: 専用の機器を用いて、角層水分量、皮膚の弾力性、肌の色などを測定した。また、肌診断装置VISIAを用いて、シミ、シワ、赤みなどの変化を画像解析した 。

研究結果

  • 単回吸入の効果:
    • 心理面: 水素吸入後、「全身倦怠感」や「自覚的ストレス」が有意に減少し (p<0.01)、「頭のすっきり感」や「集中力」が有意に向上した (p<0.01またはp<0.05) 。
    • 生理面: 指先の皮膚温度が平均で3.6度と有意に上昇し (p<0.001)、交感神経の活動が抑制されてリラックス状態になることが示唆された 。また、前頭前野の脳血流が広範囲で有意に増加し、脳活動が活発になることが確認された (p<0.05) 。
  • 2週間継続吸入の効果:
    • 心理面: 水素吸入期間中は、非吸入期間に比べてストレスチェックリストの点数が有意に減少し (p<0.05)、ストレスが軽減した 。また、「抑うつ/不安」や「敵意」といったネガティブな感情も有意に減少した (p<0.05) 。
    • 肌への効果:
      • 肌の弾力性(ハリ)を示す指標が有意に改善した (p<0.05) 。
      • 肌診断装置VISIAによる解析で、「シミ」 、「茶色いシミ」 、「赤み」 が有意に改善した (p<0.05)。
  • 考察:
    • 単回の水素吸入は、自律神経のバランスを整えてリラックス効果をもたらすと同時に、脳の活動を活性化させるという二つの作用を持つ可能性が示唆された。
    • 継続的な水素吸入によるストレス軽減が、肌状態の改善につながっていると考えられる。水素吸入によって末梢の血流が改善し、皮膚の代謝が向上することで、肌のハリや色むらが改善した可能性がある。
  • 研究の限界: 継続吸入試験において、信頼性の高いプラセボ(偽薬)を用意できなかった点が挙げられている 。そのため、観察された効果が水素吸入そのものによるものか、あるいは思い込み(プラセボ効果)によるものかを厳密に区別することは難しい。

Appendix(用語解説)

  • 自律神経: 呼吸、心拍、体温、消化など、生命維持に不可欠な機能を無意識のうちに調整する神経。活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」からなる。
  • p値 (p-value): 統計学で使われる指標で、「偶然その結果が得られる確率」を示す。一般的にこの値が0.05(5%)より小さい場合、「統計的に有意な差がある」と判断され、偶然ではない意味のある結果だと考えられる。
  • クロスオーバー試験: 同じ参加者が、時期をずらして「介入(この研究では水素吸入)」と「対照(空気吸入や非吸入)」の両方を経験する研究デザイン。個人差の影響を受けにくく、少ない参加者で精度の高い比較ができる。
  • VISIA (ビジア): 専用のカメラで顔を撮影し、シミ、シワ、毛穴、肌の赤みなどを数値や画像で解析する肌診断装置。
  • プラセボ: 見た目や味は本物の薬や治療法とそっくりだが、有効成分を含まない偽物のこと。思い込みによる効果(プラセボ効果)と、本当の効果を区別するために用いられる。

論文情報

タイトル

Appearance of psychophysiological effect of hydrogen inhalation and effect of continuous use on the skin properties(水素吸入がもたらす心身への効果と、継続使用による肌質改善効果の検証)

引用元

Takehara, T., Hayashi, Y., Fujishiro, M., Kitamura, E., & Yada, Y. (2022). Appearance of psychophysiological effect of hydrogen inhalation and effect of continuous use on the skin properties. Nihon Koshohin Gakkaishi [Journal of Japanese Cosmetic Science Society], 46(1), 8–19.

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