一言まとめ
新生児仮死モデルブタへの低酸素性虚血性傷害後24時間の水素吸入(2.1-2.7%)は、腎臓の糸球体細胞数の増加や近位尿細管の内腔狭窄といった組織学的損傷を軽減した。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、低酸素性虚血性傷害後の新生仔ブタの腎障害を軽減する可能性がある。
研究の背景と目的
新生児仮死の30-70%で急性腎障害(AKI)が発生すると報告されている。水素分子はその強力な抗酸化特性から新生児医療における主要な研究対象となっているが、水素分子がAKIを改善する能力については不明であった。本研究は、低酸素性虚血(HI)傷害後5日目のブタ腎皮質の組織病理学的損傷を調査し、水素吸入がこれらの腎損傷を軽減できるかどうかを明らかにすることを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 新生児仮死:出生時に呼吸が確立されず、低酸素状態となる状態。世界的に新生児死亡の主要原因の一つ。
- 急性腎障害(AKI): 急激に腎臓の機能が低下する状態。老廃物の排泄や体液バランスの維持が困難になる。
- 低酸素性虚血(HI)傷害: 体の組織への酸素供給が不足(低酸素)し、かつ血流も不十分(虚血)になることによって引き起こされる組織の損傷。特に脳や腎臓など血流を多く必要とする臓器で問題となる。
- 糸球体:腎臓の濾過装置として機能する毛細血管の塊。血液を濾過して原尿を生成する。
- ボウマン腔:糸球体を包む空間で、糸球体からの濾液(原尿)を受け取る場所。
- 近位尿細管:ボウマン嚢に続く尿細管の最初の部分。多くの物質の再吸収が行われる。
- 低酸素虚血:組織への酸素供給が減少(低酸素)し、血流も減少(虚血)した状態。細胞障害を引き起こす。
- αSMA(α平滑筋アクチン):メサンギウム細胞(糸球体内の支持細胞)のマーカー。
- CD31:内皮細胞(血管の内側を覆う細胞)のマーカー。
- Di/Do:近位尿細管の内径/外径比。値が低いほど尿細管上皮細胞の腫脹が強いことを示す。
論文情報
タイトル
Hydrogen gas inhalation ameliorates glomerular enlargement after hypoxic-ischemic insult in asphyxiated piglet model(水素吸入は、新生児仮死モデルブタにおける低酸素性虚血性傷害後の糸球体肥大を軽減する)
引用元
Iwaki, T., Nakamura, S., Wakabayashi, T., Nakao, Y., Htun, Y., Tsuchiya, T., Mitsuie, T., Koyano, K., Morimoto, A., Fuke, N., Yokota, T., Kondo, S., Konishi, Y., Miki, T., Ueno, M., Iwase, T., & Kusaka, T. (2025). Hydrogen gas inhalation ameliorates glomerular enlargement after hypoxic-ischemic insult in asphyxiated piglet model. Scientific reports, 15(1), 1677. https://doi.org/10.1038/s41598-025-85231-8
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