研究論文
Molecular hydrogen inhalation modulates resting metabolism in healthy females: findings from a randomized, double-blind, placebo-controlled crossover study(分子状水素吸入が健康な女性の安静時代謝を調節する:無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究)

水素吸入が健康な女性の脂肪燃焼を増加させる

一言まとめ

健康な女性20名に1時間の水素吸入を実施したところ、プラセボと比較して呼吸交換比が低下し脂肪燃焼が増加した。特に体脂肪率が高い被験者ほどその効果が顕著だった。

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3分で読める詳細解説

結論

60分間の水素吸入は安静時の脂肪酸化を増加させ、特に体脂肪率が高い女性でその効果が顕著である。

研究の背景と目的

水素は長らく生理学的に不活性な気体と考えられてきたが、近年の実験的・臨床的研究により、抗炎症作用、抗アポトーシス作用、選択的抗酸化作用などの生理活性が明らかになってきた。水素は水素水の摂取、水素風呂、水素吸入などの方法で体内に取り込むことができる。水素の投与は安全性が高く、有害事象が報告されていない。また、水素投与は代謝を変化させ、特に2型糖尿病や耐糖能障害患者の脂質代謝と糖代謝を改善することが示されている。しかし、健康な女性における水素の代謝柔軟性への影響はこれまで調査されていなかった。そこで本研究では、60分間の安静時水素吸入が代謝反応に及ぼす影響を調査した。

研究方法

  • 対象者:
    • 22.1 ± 1.6 歳の身体活動習慣を持つ女性20 名(スポーツ科学系学生)。
    • 除外基準:代謝に影響する薬剤・サプリ使用、測定時の月経、心肺・代謝疾患既往。
  • 介入方法:
    • 水素分子またはプラセボとして通常の空気を鼻カニューレ経由で60分間吸入。
    • 水素濃度:99.8%
    • 流量:300 mL/分
    • 頻度・期間:1回(クロスオーバー試験のため、各参加者が水素吸入とプラセボ吸入の両方を経験)。
    • 実施時間:安静時。
  • 対照群の設定: プラセボとして通常の空気を同様に60分間吸入。
  • 評価方法:
    • 間接熱量測定法を用いて代謝応答(エネルギー消費量、脂肪や糖質の燃焼割合など)を測定。
    • 呼吸ごとのデータを15分間隔で4つの期間に分けて平均化し分析。
    • ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバーデザインを採用(参加者も研究者も誰が水素を吸入しているかわからない状態で試験を行い、各参加者が時期を変えて両方の条件を経験する)。

研究結果

  • 水素吸入はプラセボと比較して、全ての時間間隔で呼吸交換比(RER)を有意に減少させた(プラセボ:約0.856、水素:約0.830、p≤0.012)。
  • 水素吸入はプラセボと比較して、全ての時間間隔で換気量を有意に減少させた(約13%減少、p<0.001)。
  • 水素吸入はプラセボと比較して、全ての時間間隔で脂肪酸化率(FATox)を有意に増加させた(プラセボ:約47%、水素:約56%、p≤0.013)。
  • 水素吸入の呼吸交換比への影響は、吸入開始30分以降で体脂肪率と負の相関を示した(30〜45分:r=-0.52、p=0.018、45〜60分:r=-0.51、p=0.022)。つまり、体脂肪率が高い被験者ほど水素吸入によるRER低下効果(脂肪燃焼促進効果)が大きかった。
  • 水素吸入の脂肪酸化率への影響は、吸入開始30分以降で体脂肪率と正の相関を示した(30〜45分:r=0.53、p=0.017、45〜60分:r=0.52、p=0.020)。つまり、体脂肪率が高い被験者ほど水素吸入による脂肪酸化促進効果が大きかった。
  • 重篤な副作用は報告されなかった。
  • 研究者らは、水素分子が細胞膜を通過しやすい特性や、ミトコンドリアの呼吸効率を改善し、ATP生産を増加させる能力などにより、これらの効果がもたらされた可能性を考察している。さらに、水素分子はQ-サイクルの電子およびプロトンドナーとして機能し、ミトコンドリア機能を亢進させる可能性も示唆している。
  • 研究の限界としては、被験者の月経周期のフェーズを統制していないこと、水分摂取、睡眠、身体活動の状態が定量化されていないこと、また最大BMIが26.7 kg/m²であり肥満女性への効果は明らかでないことなどが挙げられている。

Appendix(用語解説)

  • 呼吸交換比(RER): 体内で消費される二酸化炭素量と酸素量の比率。この値が低いほど脂肪が主要なエネルギー源として使用されていることを示す。
  • 脂質酸化率(FATox):全エネルギー消費に占める脂質由来エネルギーの割合。呼吸商から推定。
  • 間接カロリメトリー: 酸素消費量と二酸化炭素産生量を測定することで、エネルギー消費と基質(脂肪や糖質)の利用を間接的に評価する方法。
  • 代謝柔軟性: 異なるエネルギー基質(脂肪と糖質など)間を効率的に切り替える身体の能力。
  • クロスオーバー研究: 各被験者が複数の治療(この場合は水素とプラセボ)を順番に受ける研究デザイン。
  • ミトコンドリア: 細胞内のエネルギー産生を担う小器官。
  • ATP: アデノシン三リン酸。細胞のエネルギー通貨として機能する分子。

論文情報

タイトル

Molecular hydrogen inhalation modulates resting metabolism in healthy females: findings from a randomized, double-blind, placebo-controlled crossover study(分子状水素吸入が健康な女性の安静時代謝を調節する:無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究)

引用元

Grepl, P., Botek, M., Krejčí, J., & McKune, A. (2025). Molecular hydrogen inhalation modulates resting metabolism in healthy females: findings from a randomized, double-blind, placebo-controlled crossover study. Medical gas research15(3), 367–373. https://doi.org/10.4103/mgr.MEDGASRES-D-24-00085

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