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【医師監修】抗がん剤による末梢神経障害を水素吸入が予防・改善?新アプローチの可能性を考察

【医師監修】抗がん剤による末梢神経障害を水素吸入が予防・改善?新アプローチの可能性を考察

《この記事の執筆者》

抗がん剤治療によって起こる末梢神経障害は、しびれや痛み、運動機能の低下など、日常生活に大きな影響を与える深刻な副作用です。

現在、効果的な予防法や治療法が確立されておらず、がん治療の継続が困難になることもあります。

近年、水素吸入がこの神経障害の予防や改善に効果がある可能性があるという研究結果が報告されています。

本記事では、抗がん剤治療と末梢神経障害の関係について解説し、水素吸入がどのように末梢神経障害に作用するのか、そのメカニズムと可能性についても考察していきます。抗がん剤治療を始められる方にとって役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。

抗がん剤治療による末梢神経障害について

抗がん剤治療による末梢神経障害について

抗がん剤はがんの増殖を抑えて死滅に導く薬剤です。現在、抗がん剤はがん治療の三本柱の一つとされ、多くの方に使用されています。

高い治療効果が期待できる一方で、抗がん剤は副作用が現れやすいのも特徴です。末梢神経障害もその一つであり、症状が強い場合には生活に支障を来すケースも少なくありません。

まずは、抗がん剤と末梢神経障害との関係について詳しく見てみましょう。

抗がん剤治療によって末梢神経障害が起きる理由

末梢神経とは、脳や脊髄などの中枢神経から体中に枝分かれする神経の総称です。

抗がん剤はがんの細胞に働きかけてダメージを与える働きを持ちますが、なかには正常な細胞にまで影響が及ぶことがあります。そのため、神経の細胞にダメージが加わるとさまざまな症状を引き起こすことがあるのです。

特に、様々ながんに対して用いられるシスプラチン、パクリタキセル、ビンクリスチンなどの抗がん剤は末梢神経障害を起こしやすいとされています。

抗がん剤による末梢神経障害の症状

末梢神経には、感覚を司る神経、運動を司る神経、自律神経バランスを司る神経があります。

現れる症状はどの神経にダメージが生じたかによって異なりますが、具体的には次のような症状が挙げられます。

末梢神経障害の症状
  • しびれ
  • 運動機能の低下
  • 手足の冷感や熱感
  • 感覚の低下
  • バランスの低下
  • 痛み

抗がん剤による末梢神経障害の治療・対策

現在のところ、抗がん剤による末梢神経障害を予防、改善する方法は確立していません

痛みなどの症状がある場合には鎮痛剤などを用いた薬物療法を行う場合もありますが、十分な効果が得られないケースも多いとされています。

現状でできる対策としては、次のようなことが挙げられます。

末梢神経障害の治療・対策
  • 適度な運動による血流改善
  • 転倒予防などの環境整備
  • 手足の保温
  • 手先や足先の清潔維持

水素吸入は抗がん剤治療による末梢神経障害の予防、改善に役立つ?

水素吸入は抗がん剤治療による末梢神経障害の予防、改善に役立つ?

抗がん剤の副作用である末梢神経障害は確立した予防はなく、症状が強く現れる場合には抗がん剤投与を中止したり投与量を減らしたりする場合もあります。その結果、がん治療に支障を与えるケースもあり、現在でも末梢神経障害を予防、改善する方法を見出す研究が行われています。

近年では、水素ガスが抗がん剤による末梢神経の予防や改善に役立つ可能性を示唆する研究結果も報告されています。具体的に、どのような内容なのか詳しく見てみましょう。

活性酸素を除去すると末梢神経障害を予防できる?

2019年、アメリカの研究チームは活性酸素の除去が抗がん剤(シスプラチン、パクリタキセル)による末梢神経障害を予防する可能性を示唆する研究結果を報告しました1)

この研究はマウスを用いた動物実験です。抗がん剤と投与して末梢神経障害を引き起こしたマウスに活性酸素除去剤を投与したところ、末梢神経障害の発生を有意に抑えられたことが明らかになっています。

水素吸入が末梢神経障害を予防する可能性

この研究は、活性酸素の除去が抗がん剤による末梢神経障害の発生を予防できる可能性を示唆しました。研究ではPBNという活性酸素除去剤が使用されていますが、同じく活性酸素を効率的に除去できる水素吸入も同様の効果を発揮する可能性があるでしょう。

動物実験の段階であるため確実な効果があると断言はできませんが、ヒトを対象として大規模な研究が進み更なる検討が重ねられることを期待します。

水素水は抗がん剤による末梢神経障害を改善する?

2021年に、中国の研究チームは水素水(水素ガスが溶けた水)が抗がん剤(オキサリプラチン)による末梢神経障害による痛み症状を改善する可能性を示唆する研究結果を報告しました2)

この研究はマウスを使用した動物実験です。抗がん剤を投与したマウスに水素水を摂取させると、生理食塩水を摂取させたマウスよりも有意に末梢神経障害による痛みの発生を緩和できたことが明らかとなりました。

水素吸入が末梢神経障害を改善する可能性

動物実験の段階ですが、今回の研究結果から水素水は抗がん剤による末梢神経障害を改善する可能性があると考えられます。そのメカニズムとして、研究者たちは抗がん剤の酸化ストレスが末梢神経障害に関与し、水素水によって軽減されたことを示しています。

水素吸入は水素水よりも効率よく酸素取り込むことができるため同様の効果が期待できる可能性は高いでしょう。

さらなる研究が進み、水素吸入が末梢神経障害の治療に役立つ日が来ることを望みます。

【私はこう考える】水素吸入と抗がん剤治療による末梢神経障害

 今回ご紹介した2つの研究結果から、水素吸入は抗がん剤による末梢神経障害の予防や改善にも役立つ可能性が示唆されたと言えるでしょう。

2つの研究では水素吸入の効果の直接的な言及はありませんが、活性酸素の除去や水素水摂取といったこれまでにない方法によって末梢神経障害の予防や改善に繋がる可能性が示されています。

非常に興味深い内容の研究結果であり、同じく活性酸素を除去できる水素吸入にも同様の効果が期待できると考えます。

一方で、どちらの研究も動物実験の段階であるため、今後ヒトを対象とした大規模な臨床研究が必要となります。また、長期的な投与によるがん治療への影響なども検証していく必要があります。

水素吸入が抗がん剤による末梢神経障害の予防・改善に広く使用される道のりはまだ長いかも知れません。しかし、これまでにない新たな方法での予防・改善を検討した2つの研究結果の功績は高く、新たな予防や改善方法が確立する日を期待したいと思います。

参考文献
  1. Shim, H. S., Bae, C., Wang, J., Lee, K. H., Hankerd, K. M., Kim, H. K., Chung, J. M., & La, J. H. (2019). Peripheral and central oxidative stress in chemotherapy-induced neuropathic pain. Molecular pain15, 1744806919840098. https://doi.org/10.1177/1744806919840098
  2. Lian, N., Shen, M., Zhang, K., Pan, J., Jiang, Y., Yu, Y., & Yu, Y. (2021). Drinking Hydrogen-Rich Water Alleviates Chemotherapy-Induced Neuropathic Pain Through the Regulation of Gut Microbiota. Journal of pain research14, 681–691. https://doi.org/10.2147/JPR.S288289

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